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[報告] 大田区で宇宙関連スタートアップと製造業の交流会を開催

2026年03月30日

東京・大田区の羽田イノベーションシティにある交流空間PiO PARKにて2026年2月20日、20社の宇宙関連スタートアップ企業と大田区の製造業が集う「宇宙を目指すスタートアップと製造業の交流会」(共催:大田区、公益財団法人大田区産業振興協会、準天頂衛星システムサービス株式会社、一般社団法人クロスユー)が行われました。大田区内外の宇宙関連スタートアップ企業に対して、ものづくりに関わる課題解決の機会を提供する目的で企画されたもので、初開催となる今回は宇宙関連スタートアップ企業10社と大田区の製造業10社が参加しました。

会場の様子
大田区の高野氏

冒頭、大田区産業経済部の高野耕治氏(工業振興担当課長)は、「大田区としての初の試みとなる本交流会で皆さまが活発に交流され、新たな化学反応が起きることに期待しています」と述べた上で、「立地の有利性があり、高度な産業集積地であり、公的支援が厚いという3つの特長を持つ大田区は、ものづくり企業だけでなく多くのスタートアップにとって大変魅力があります。本日を契機に大田区の企業とのビジネス交流や大田区への立地等をぜひ前向きに検討いただき、継続的にサポートさせていただきたい」と挨拶しました。

内閣府の和田企画官

続く基調講演では、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の和田弘人企画官(準天頂衛星システム戦略室)が、政府が行う宇宙産業への支援の取り組みとみちびきの概要について解説しました。近年、日本国内で設立された宇宙関連のスタートアップ企業は約100社に上り、従業員の増加率も全産業の中で1位となっています。和田企画官は、宇宙基本計画において「宇宙安全保障の確保」「国土強靱化・地球規模の課題への対応」「新たな知と産業の創造」「宇宙活動を支える基盤強化」の4つの目標と将来像を設定し、宇宙産業への支援に取り組んでいる現状を説明しました。宇宙産業の様々な分野の中でも、測位においては実用的な衛星としてみちびきがすでに打ち上げられており、それを使って何ができるかを模索する段階にあると話しました。

講演スライド

宇宙基本計画を解説する講演スライド

CLAS(センチメータ級測位補強サービス)やMADOCA -PPP(高精度測位補強サービス)、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)など、みちびきが提供する測位補強サービスについても紹介し、人々の暮らしにロボットやドローンなどの機械を導入する際、みちびきの機能をセンサーとして活用できるとの視点を示しました。みちびき対応受信機は近年、大幅に低価格化しており、雑誌にみちびきの特集記事が掲載されるなど、気軽に受信機を購入して試せるところまで利活用が広がっています。みちびきの強みは地上の通信システムを使わずに、陸域・海域の区別なく高精度測位が実現できる点であり、インフラメンテナンスやスマート農業、ドローン物流、自動運転などで使ってほしいと述べました。和田企画官は最後に、みちびきを活用する土台はすでに揃っており、活用アイデアをぜひ検討してほしいと参加者に呼びかけて講演を締めくくりました。

講演風景-1

和田企画官の講演の様子

実証事業について説明する神藤氏

同じく基調講演として、NECソリューションイノベータ株式会社の神藤英俊氏(主席プロフェッショナル)が、内閣府と準天頂衛星システムサービス株式会社が毎年実施している「みちびきを利用した実証事業」の公募について次のように説明しました。
公募実証は、みちびきの利用が期待される新たなサービスや技術の実用化に向けた実証事業を実施する企業、そしてみちびきの利活用拡大につながる研究開発や実証実験を行う大学などを対象として、2018年度から毎年実施されています。例年、年度当初に募集が行われ、そこで採択された事業者が年度末に向けて実証を行います。2025年度は6事業者が採択され、実証を行っています。テーマによっては、国内だけでなく海外で実証が行われることもあります。これまでにマイクロ電動カーやドローン、歩行支援、スマートウォッチ、ごみ収集など様々な分野の実証事業が行われてきました。

講演風景-2

過去の公募実証事例を紹介

大田区の田中氏

各企業のプレゼンに先立って大田区の田中健也氏(産業経済部 産業振興課 産業振興担当係長)が大田区の立地優位性と区が行う取り組みについて、以下のとおり説明しました。
東京23区の最南端に位置する大田区は、23区の中で最も面積が大きく、人口も3番目に多い区です。ただ、その面積の約3分の1を羽田空港が占め、実際には区内のどこにでも自転車で行けるくらいの距離感となっています。大田区の強みは羽田空港を有することで、地方や海外へ出張に行きやすく、遠方の顧客が区内の企業を訪問しやすいという利点があります。製造業の事業所数は都内で最も多く(3,584件)、集積度が高いので部品の配達などのコストを抑えられるのもメリットの一つです。
企業の操業環境を維持発展させるため、大田区には産業施設が数多くあります。机一つの安価なオフィスから、床荷重のしっかりしたアパート型の施設、工場利用を想定して高圧電力が使える大規模な施設まで、ニーズに沿った施設が用意されています。
大田区内外で操業する企業への施策として、ものづくりに関して技術的課題があり、外注先を探している企業に対して、区内の企業を無料で紹介する取り組みも行っています。職員・相談員が専門的な知識を持って対応し、希望内容に合わせて企業を紹介すると共に、スタートアップ企業が試作・開発の依頼や発注を区内の中小企業に対して行う場合には助成金も交付されます。
区ではこうした取り組みをワンストップで行う「OTAS(大田区オープンイノベーション促進事業)」を推進しており、マッチングで生まれた案件をPRして更なる案件を大田区に呼び込み、ハードウェアスタートアップの聖地となることを目指しています。

講演風景-3

田中氏の講演

続いて交流会に参加した20社が、各社3分ずつ順番にプレゼンテーションを行いました。このうち宇宙関連のスタートアップ10社には、ロケットや人工衛星、宇宙服の開発など多種多様な技術を研究開発している企業が含まれます。また、大田区の製造業10社も、金属加工やへら絞り加工、切削加工、ばねの製造、金属3Dプリンタによる造形、組み込みボードの設計・開発など多彩な企業が参加し、宇宙産業に活かせる技術を提示しました。参加したスタートアップ企業のうち、みちびきに関連した製品やサービスを提供しているのは次の3社でした(発表順)。

アークエッジ・スペース 川勝氏

川勝貴之氏(CEO室 広報担当)

人工衛星を開発する東京大学発の企業で、衛星の企画・設計から開発、運用、サービスまで一気通貫で行っています。衛星データの利活用や低軌道測位衛星の研究開発などにも取り組んでおり、「アジア太平洋地域向けMADOCA-PPP海洋ブイによる潮位計測システム実証事業」にて、2025年度のみちびきを利用した実証事業に採択されました。

moegi 片寄氏

片寄里菜氏(代表取締役社長)

位置情報管理ソリューション「CALINT」を展開する企業で、地図付き動画を撮影しながら移動情報を記録できるアプリ「CALINT Mobile」や、位置情報を可視化できるウェブアプリ「CALINT Map」、吹き出し付きの地図を作る依頼型サービス「現場地図」、位置情報共有サービス「Realtime CALINT」などを提供しています。同ソリューションはみちびきの高精度測位が可能なデバイスにも対応しています。

レフィクシア高安氏

高安基大氏(代表取締役)

みちびきのCLASに対応した受信デバイスやハンディタイプの3Dスキャナーの開発・製造を行う東工大発の企業です。高精度な位置情報を簡単に取得して、写真撮影や3Dスキャンを行うことが可能であり、取得したデータをクラウド上で管理できる点などが同社製品の特長です。

ミニマッチング

プレゼン後に行われたミニマッチングの様子

プレゼンテーションの終了後は、宇宙関連スタートアップ企業と大田区の製造業によるミニマッチングが行われました。1組あたり3分の時間で次々にマッチングが行われ、各企業の現状や課題について情報共有が行われました。

ミニ展示-1

みちびき実証事業の貸与受信機とパンフレット

会場内の展示コーナーには、みちびき関連製品としてセプテントリオの受信機やグリーンオンのSLAS対応ゴルフウォッチなどが並べられ、講演やプレゼン、ミニマッチングの合い間に参加者が訪れました。

ミニ展示-2

株式会社moegi

ミニ展示-3

セプテントリオ株式会社

ミニ展示-4

グリーンオン株式会社

ミニ展示-5

株式会社アークエッジ・スペース

ミニマッチング終了後、公益財団法人大田区産業振興協会の飯島清市氏(羽田PiO推進部 部長)が、「皆さまの活発なピッチ(プレゼンテーション)とミニマッチングにより、非常に交流が深まり大変うれしく思います」と挨拶して、交流会は盛況のうちに終了しました。

飯島氏

飯島氏

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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