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[報告] 三重県尾鷲市でRPD Challenge 2023 Winners Invitation Programを開催

2024年09月12日

内閣府は2018年から、みちびきを活用した災害関連アプリケーションの企画を競うハッカソン「RPD Challenge」をGISTDA(タイ地理情報・宇宙技術開発機関)、MGA(Multi-GNSS Asia)との共催により開催しています。この「RPD Challenge 2023」で優秀賞を受賞した4チームのメンバーを含む22名を日本に招聘し、研修、アイデアソン、視察などを行う“RPD Challenge 2023 Winners Invitation Program”が、2024年8月3日から7日まで5日間の日程で行われました。

会場全景

8月4日の会場となった熊野古道センター(三重県尾鷲市)

本イベントではアイデアソンイベントや京都大学木津農場及び同大学防災研究所視察など、GNSS利用・研究の先端に触れる様々なプログラムが実施されましたが、その中から、ホストシティとなった三重県尾鷲市が8月4日に三重県立熊野古道センターで開催した、学識者や災害対策担当者による講義、準天頂衛星システム「みちびき」の災害・危機管理通報サービスを体験するデモンストレーション、GNSS測位に関するワークショップ、アイデアソンなどのプログラムの模様をご紹介します。

冒頭挨拶

尾鷲市長のウェルカムメッセージ

尾鷲市長、内閣府審議官、GISTDA副長官

左から尾鷲市の加藤市長、内閣府の渡邉審議官、GISTDAのニアムニド副長官

尾鷲市の加藤千速市長による「市政70周年と熊野古道世界遺産指定20周年の節目の年にゲストをお迎えできたのはとても喜ばしい」というウェルカムメッセージと、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局の渡邉淳審議官による開式の辞、GISTDAのダムロンギッド・ニアムニド副長官の謝辞に続き、尾鷲市防災危機管理課の大和秀成課長が「尾鷲市の防災対策の現状」をテーマに講演を行いました。
大和氏は、過去に尾鷲市周辺を襲った昭和東南海地震(1944年12月)、伊勢湾台風(1959年9月)、三重県南部集中豪雨(1971年9月)などの大きな災害に触れた後、南海トラフ巨大地震の過去の発生周期や想定震源域、防災・減災対策の現状を解説しました。

尾鷲市防災危機管理課による講演

尾鷲市防災危機管理課の大和課長による講演

続いて三重大学大学院工学研究科の羽多野裕之准教授が、“Expectation for GNSS Technology in the ICT Development in Kinan Area, Mie”のタイトルで、紀南エリアをフィールドとして進める、GNSSを始めとしたICT技術の社会実装に関わる研究活動を紹介しました。羽多野准教授は熊野古道のLTEネットワークやGNSS受信状況の現況調査、ICTを利用した獣害(ニホンザルによる果樹の食害)対策の現況などを詳しく報告しました。

羽多野准教授の講演

三重大学の羽多野准教授による講演

午前のプログラムの最後には、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局(準天頂衛星システム戦略室長)の三上建治参事官が”QZSS MICHIBIKI overview -- for JAPAN and East South Asia”と題して講演を行いました。三上参事官は、みちびきの概要と強み、現状4機から7機、そして11機体制へと続くみちびきのロードマップ、日本国内での活用事例などを説明し、アジア・オセアニア地域での協力・協業の現状も紹介しました。

三上参事官の講演

内閣府の三上参事官による講演

講義会場

熱気あふれる講義会場

GISDTA副長官と加藤市長

並んで写真に収まるGISDTAのニアムニド副長官(左)と加藤尾鷲市長(右)

屋外テント

みちびきデモ用の屋外テント

災危通報デモの様子

災危通報のデモを見学

この日は、みちびきが配信する災害・危機管理通報サービス(災危通報)の試験データを対応端末で受信するデモンストレーションも行われました。災危通報は、一般的な測位信号と同じ周波数帯を使うL1S信号で送信されており、地上の通信インフラが途絶した際でも、簡易な端末で情報が受信できます。それを実際に体験してもらおうというデモです。

災危通報の仕組みを説明

災危通報の仕組みを説明する内閣府の三上参事官(左)と齊田優一技術参与(右)

みちびき経由で配信された試験データが、屋外に設置されたデジタルサイネージ用のコンテンツ配信端末「Signadia(シグナディア)」(株式会社ジェイアール東日本企画)と、各種の情報表示が可能なゴルフウォッチ「THE GOLF WATCH GS501」(グリーンオン株式会社)にリアルタイムで表示される様子を、加藤尾鷲市長を始めとする自治体関係者、プログラム参加者、熊野古道センターを訪れた一般来場者らが見守り、システムのメリットについて理解を深めてもらいました。
また、デモの実施中に三重県、滋賀県、高知県などを対象とする竜巻注意報が発出されたため、試験データの表示中に現実の注意報も表示されるという緊張感あふれるデモとなりました。

ゴルフウォッチに表示された試験データ

ゴルフウォッチに表示された災危通報の試験データを確認

テント内の展示

テント内に展示されたゴルフウォッチ

午後のセッションでは、衛星測位技術に関わるJAXA(宇宙航空研究開発機構)職員がインストラクターとなり、手順に沿ってGNSS受信データの解析を行う体験型セミナーを実施しました。
1)歩行しながら受信した測位信号を記録し、データ形式を変換
2)マルチパス等の影響を最小化できるようオープンソースGNSS解析ソフト「RTKLIB」で各種パラメータ等を調整
3)パラメータ等の調整値と合わせ歩行軌跡を表示する

屋外で移動しながら測位信号を取得し(左)、解析パラメータを調整(右)

セミナーには地元である三重大学の学生も加わり、メンバーをシャッフルして5チームを編成しました。解析に当たり測位に利用する衛星システムの選択、仰角マスクの設定などを適切に行うことで、歩行軌跡がより正しく表示されるようになる(測位精度が向上する)ことを実感してもらいました。

各チームのスナップ写真-1

各チームのスナップ写真-2

各チームのスナップ写真-3

各チームのスナップ写真-4

各チームのスナップ写真-5

全5チームのスナップ写真

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

参照サイト

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