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[LBJ講演] みちびきによる観光実証実験結果を報告(NEC村井氏)

2016年06月22日

高精度測位による新たな観光サービスの可能性

── 日本電気株式会社 準天頂衛星利用推進室兼パブリックビジネスユニット主幹 村井善幸氏

ロケーションビジネスジャパン2016最終日の6月10日、「位置情報の観光分野への適用とその効果 ~準天頂衛星システムの活用事例~」と題して、日本電気株式会社 準天頂衛星利用推進室兼パブリックビジネスユニット主幹の村井善幸氏が、2015年に北陸と京都で行った2つの実証実験について紹介しました。

北陸のARコンテンツで効果的な情報配信を模索

2015年10月に北陸で行った実証実験「準天頂衛星×花咲くいろは」は、みちびきの高度な位置情報と、海外でも高く評価されている日本のTVアニメのコンテンツを利用した観光分野におけるG空間情報利活用の可能性を検証したものです。北陸新幹線開通で注目される金沢で、現地を舞台としたアニメ作品「花咲くいろは」と、みちびきによる位置情報を連携させました。

参加者にはみちびきの受信機を貸し出し、この受信機とBluetoothでつながるスマートフォンアプリのAR(Augmented Reality、拡張現実)ポイント画面において、自分の位置とARポイントを照合しながら観光地を探索し、ARコンテンツを楽しみました。また、近隣の店舗の協力を得て、ビーコンを使用したクーポン配信実験も行いました。

実験の結果、測位精度についてはオープンスカイ環境の西岸駅(石川県七尾市)で上りホームと下りホーム(ホーム間隔8.5m)に設置された異なるARポイントの識別に成功しました。付近に建物が多い金沢市中心部の香林坊交差点では、みちびきを使用したマルチGNSSによる測位結果はGPS単体の測位結果に比べて安定し、マルチパスの影響を軽減できました。

利用者の位置情報からは、時間経過と共にどのように移動し、どこに滞在しているのかが把握できます。今回の実験では、ARポイントを結ぶ経路上を移動する利用者が多かったことから、あらかじめ案内したポイントを結ぶルート上にビーコンを配置することで効果的に情報配信できることが分かりました。また、ルートを外れたポイントを訪れる利用者も可視化され、新たな観光スポット発見の可能性にもつながることが示唆されました。

移動経路情報は個人情報に配慮して属性情報を取得・分析することで、さらに高度な分析が可能になります。位置情報を活用した行動把握と行動分析により多様な個人のニーズを満足させる観光案内の提供が期待できます。実験参加者に対するアンケートでは、自由時間が少ないという課題はあったものの約9割が満足しているという結果でした。

京都バスロケでは、運転士の方からも「便利」との評価

2015年11月に京都で行った「バスロケーションシステムを活用した外国人観光客向け観光ガイド」では、外国人観光客を乗せた観光バス5台にみちびきの受信機を設置してバスの位置をリアルタイムに把握し、車内に設置したWi-Fiルーター経由で実験参加者のスマートフォンアプリにバスの位置とルート上にある観光スポットの情報を英語で提供しました。バス利用者はバスに乗ったままでも観光気分を味わうことができ、興味を持ったスポットにはツアー後に個人で訪れる回遊効果が期待できます。

実験終了後のアンケートでは、参加者の83%がバスの中で見て興味を持った観光スポットに実際に行ってみたいと回答しており、「ツアー後に個人で行ってみたいスポットを探す」という狙いに合致した結果が得られました。また、9割以上の参加者が今回のアプリが外国人観光客にとって有用だと回答しました。

予想外だったのがツアーコンダクターや運転士の方々からの「全てのバスの位置が手許で見られるのは大変便利」という評価です。複数のバスで回るツアーでありがちな渋滞時のスケジュール変更や、集合時刻に戻らずバスに乗り遅れる人への対処が柔軟にできます。今回も見学地点でバスに乗り遅れた1号車の乗客に対して、まだ現地にいた2号車に乗るよう的確な案内ができました。

行動の可視化で、新たな観光サービス展開の可能性

これらの実証実験を通して、衛星測位によるピンポイントな誘導、位置情報を活用したコンテンツ、移動ログによる行動の可視化で、新たな観光サービス展開の可能性が明らかとなりました。今後の計画としては、バスロケーションシステムとコンテンツ提供を合わせ、さらに高度な利用実験を予定しています。

村井氏は「2020年の東京オリンピックに向け、海外の観光客に対しても各地で位置情報を活用したツアー企画を提案し、準天頂衛星を使った新しいビジネスができればいいと思う」とまとめました。

「ロケーションビジネスジャパン2016」関連ページ

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