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[報告] SATEXでみちびきの高精度測位に関するセミナーを実施

2020年11月19日

東京ビッグサイトで11月4~6日に開催された「SATEX(衛星測位・位置情報展)2020」では、展示会場に設置された講演スペースで衛星測位や位置情報に関連したさまざまなセミナーが行われました。その中から、11月6日に行われた「最新のGNSS受信機情報」(マゼランシステムズジャパン株式会社 代表取締役 岸本信弘氏)及び「中小規模農家向け農業用ローバーの取り組み」(ドローン・ジャパン株式会社 取締役会長 春原久徳氏)を紹介します。

高精度測位に対応した受信機の国内外の利活用事例を紹介

岸本氏

マゼランシステムズジャパンの岸本氏

「最新のGNSS受信機情報」では、マゼランシステムズジャパン株式会社の代表取締役を務める岸本信弘氏が登壇しました。岸本氏は、同社が提供するみちびきの高精度測位に対応したマルチGNSS受信機の活用事例として、北海道上富良野町や茨城県つくば市、タイなどで行ったトラクターの無人運転の実証実験を紹介しました。

さらに、その他の事例として、自動カートのリアルタイム測位やドローンの自動離陸・ピンポイント着陸、「つくばチャレンジ」への研究用ロボットの参加、インドネシアにおける地中埋設物調査、マレーシアで行ったドローンによる植物の生育状況の観測なども紹介しました。

このほか、みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)や高精度測位補正技術(MADOCA)など高精度単独測位機能に対応した自律型基準局を空が開けた理想的な場所に設置し、使用衛星数の多いマルチGNSS-RTK方式で測位することで安定したセンチメータ級の高精度測位を実現する自律型基準局(SIBS)についても解説しました。

SIBSは自律型基準局であるため、設置に必要な測量作業が不要で、移動局の近傍に設置することが可能となり、基線長が短くなるため移動局の測位精度が向上します。このSIBSを街中の電柱などに設置することでITS(高度道路交通システム)に活用する取り組みも検討されています。また、MADOCA方式のサービスエリア内であれば、電子基準点網の整っていない海外でも手軽に設置できます。

続いて岸本氏は、同社のCLAS対応マルチGNSS受信機の開発ロードマップについて説明しました。2017年に90×100mmの評価ボードを開発した同社は、2019年7月に、43×59mmと小型化して消費電力も10Wから5Wへと削減したモジュールを発表し、現在はこれを評価キットとして提供しています。さらに2021年10月に向けて、4×4mm以下で消費電力が1W以下、単価が1万円以下を目標として新たなチップを開発中です。

同社の受信機モジュールは、CLAS対応の農業散布ドローンや測量支援システム、自動運転草刈り機、深浅測量用の無人小型ボートなどの機器に採用されており、今後も測量や農林水産業、建設、船舶、物流、ドローンなどさまざまな分野での活用が期待されています。

岸本氏は、みちびきの高精度測位の利活用をさらに進める方策として、「受信機メーカーであるわれわれが、より小さく、よりコストの低い受信機を開発すべきという大きな責任を自覚しており、今後さらに努力したいと思います」と締めくくりました。

CLAS/SLASに対応した農業用ローバーの実証実験を報告

春原氏

ドローン・ジャパンの春原氏

「中小規模農家向け農業用ローバーの取り組み」では、ドローン・ジャパン株式会社の取締役会長、春原(すのはら)久徳氏が登壇しました。春原氏は、オープンソースのドローン用オートパイロットソフトウェア「ArduPilot」とみちびきによる農業用搬送機(ローバー)の実証実験を紹介しました。

農業分野において高齢者による重量作物の運搬の負担が大きな課題となっている中、収穫物搬送の自動化、及び搬送用農業機械の低価格化が求められています。この課題を解決するために、ドローン・ジャパンはみちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)、及びサブメータ級測位補強サービス(SLAS)に対応した自律車両による農地自動搬送の実証実験を行いました。

この実験には、両輪の回転差で走行を制御するCLAS対応の自作ローバー(自律搬送ローバー1)、収穫物をトラックや倉庫まで搬送するためのエンジン式クローラー型車両を自律化したSLAS対応の車両(自律搬送ローバー2)、4輪走行車でステアリングにより走行制御する市販ローバーを自律化したSLAS対応車両(自律見回りローバー)の3種類の実験車両を使用しました。いずれも低価格を実現するため、オープンソースのドローン用オートパイロットソフトウェア(フライトコントローラー)である「ArduPilot」を採用しています。

実証実験は、GCS(計画用ソフトウェア)で複数の車両の走路を事前に設定し、自律搬送ローバー1による農地内の搬送、自律搬送ローバー2によるあぜ道などの幹線搬送、自律見回りローバーによる農地内監視などを行い、空中ドローン用フライトコントローラーを陸上に適用する場合の課題の整理や、陸上における複数機体での精緻な航行検証、既存のGNSSとみちびきとの比較検証などを行いました。

実験の結果、陸上での運用は地面からの揺れが大きいため、空とは異なる細かいチューニングが必要であるものの、みちびきSLAS/CLASの技術とArduPilotを組み合わせて農地走行車に活用することにより、圃場や農地を自律走行する搬送型農業機械の開発は十分に可能であると確認できました。また、オープンソースソフトウェアを活用して、開発に要するコストを低価格に抑えられることも確認できました。

春原氏は、「空中のドローンなら数メートルの誤差が生じても許容できるが、陸上では数メートルの誤差が生じると、走路を離脱してしまったり、障害物に衝突したりする恐れがあり、誤差1メートル以内の精度が求められます」として、みちびきの高精度測位に対応して運用の安全性を高めることへの期待を語りました。

今後は2021年度にかけて、農業機械、又は農業資材メーカーと連携して、引き続き開発を続けていく予定で、国内だけでなく東南アジアなど海外への展開や、建設資材用自律搬送車など他分野への展開も図っていく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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