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[報告] 第10回ILSでスタートアップピッチやブース展示を実施

2022年12月05日

2022年11月29日から12月2日の4日間、東京・港区の虎ノ門ヒルズ森タワーにて第10回イノベーションリーダーズサミット(主催:イノベーションリーダーズサミット実行委員会)が開催されました。ILSはアジア最大規模のオープンイノベーションイベントで、スタートアップ企業がピッチ登壇やブース展示などを通じて大手企業との商談を進めます。
内閣府はアドバイザリーボードとして参加し、初日となる11月29日にみちびきの利活用企業による「スタートアップピッチ」を実施しました。このピッチでは、一般財団法人日本情報経済社会推進協会の松下尚史氏がモデレータを務めました。また、「展示ブース」ではスタートアップピッチで登壇した5つの企業が、それぞれのビジネスアイディアや提供サービスを紹介すると共に、実機の展示も行いました。

<みちびきスタートアップピッチ>

スタートアップピッチの会場

スタートアップピッチの会場

内閣府の上野室長

内閣府の上野室長

内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の上野麻子室長は開会にあたり、みちびきが2018年にサービスを開始し、この4年間で対応製品やサービスが着実に増えている中で、今回のピッチに参加した5社は新しいユースケースを作ろうとしている企業であると紹介。本日来場した方々にとって新しい製品やサービスを作る上での気付きになり、このコラボレーションを通じて新しい製品やサービスにつながっていくことに期待すると挨拶しました。

内閣府の出口企画官

内閣府の出口企画官

内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の出口智恵企画官は、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)やSLAS(サブメータ級測位補強サービス)、MADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)などみちびきの提供サービスの概要を解説しました。また、災危通報(災害・危機管理通報サービス)が、Jアラート(全国瞬時警報システム)やLアラート(災害情報共有システム)に対応予定で、豪州や東南アジアでも利用可能にする予定であり、海外向け高精度測位補強サービスや信号認証サービスが開始予定であることも説明しました。さらに、自動車や物流、海洋、ドローン、腕時計型ウェアラブル端末、ETC車載器など幅広い分野でのみちびきの活用事例も紹介しました。

Ashiraseの千野氏

Ashiraseの千野氏

株式会社Ashiraseの千野歩・代表取締役CEOは、シューズに装着して振動により視覚障がい者の安全な歩行を支援するナビゲーションデバイス「あしらせ」を紹介しました。あしらせは、2023年初頭にベータ版の発売を予定しています。初期リリースではスマートフォン内蔵のGNSSを利用して、ある程度の誤差があっても誘導を行えるアルゴリズムを採用しますが、今後は測位精度の向上にも挑戦していきたいと考えており、SLASやCLASへの対応やPDR(歩行者自律航法)などの技術を用いた誤差補正技術を構築することでナビゲーションの品質向上を図っていきます。視覚障がい者向け製品はこれまで高額でしたが、あしらせはイニシャルコストの低い月額課金モデルを想定しており、日本国内に基盤を築いた上で欧米やアジア、オセアニアなどにも販路を拡大していく方針です。

amulapoの田中氏

amulapoの田中氏

株式会社amulapoの田中克明・代表取締役は、AR観光案内アプリや小学生向け「バーチャル宇宙飛行士選抜試験」などの体験コンテンツを紹介しました。同社は、地域の観光事業者が自然環境や既存アセット等の観光資源を利用しながら稼ぐことができる豊かな社会を目指しています。地域で課題を持つ自治体や観光事業者と、地域外のクリエイターを結び付けるマッチングプラットフォームを用意して、新たな観光資源の開発に取り組んでいます。みちびきの3次元高精度位置情報を利用したARコンテンツを提供して、質の高い観光案内や体験を楽しめることを目指しています。

ビスペルの馬渡氏

ビスペルの馬渡氏

合同会社ビスペルの馬渡純・代表社員は、産業廃棄物処理施設における人材難の課題を解決するために、建機(建設機械)を遠隔操作する装置と専門オペレーターをセットで提供する事業を提案しました。この取り組みは、労働環境の良い室内から建機を操縦可能にして、新しい労働力を呼び込むことを目指します。建機の遠隔化は高価で、操縦にはタイムラグがあり、現場の傾きや振動、音、視覚などを感じにくいという課題がありますが、CLASを活用した自動建機など、自社開発のシステムを使って自社のオペレーターが遠隔作業を請け負うことで導入コストの削減を実現し、映像が立体で見える立体視ストリーミングデバイスや音・傾き・振動をフィードバックするデバイスの開発にも取り組んでいます。

M・S・Kの水野氏

M・S・Kの水野氏

M・S・K株式会社水野尚淑・代表取締役は、SLAS対応受信機を搭載したライフジャケット(救命胴衣)を活用した海難救助支援ソリューションへの取り組みを紹介しました。ライフジャケットを装着した人が海に落ちた時、海難信号を発報して位置情報などを送信でき、海難事故から人命を守ることができます。将来は東南アジアやオーストラリアなどへの海外展開も視野に入れており、山岳遭難や高齢者見守り、災害対応などでも同様のソリューションを検討しています。

マゼランシステムズジャパンの岸本氏

マゼランシステムズジャパンの岸本氏

マゼランシステムズジャパン株式会社の岸本信弘・代表取締役は、開発中のCLAS対応マルチGNSS受信機を紹介しました。今年(2022年)3月に完成して出荷準備中の新型受信機は、3cm×4cm以下の小型サイズで、1W以下の低消費電力を実現し、低価格化も実現します。CLASに加えて、5G電波を測位に利用して屋内外シームレスな高精度測位を実現するESA(欧州宇宙機関)のプロジェクト「HYPER-5G Project」へも対応する方針で、技術開発を進めています。みちびき対応受信機を電柱や郵便ポスト、スマートポールなどの既設インフラに設置し、防災モニタリングポストとして活用することも提案しました。

JIPDECの松下氏

JIPDECの松下氏

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)電子情報利活用研究部の松下尚史・グループリーダは、みちびきを活用した新たな事業創出を目指す取り組み「みちびきコミュニティ」を紹介しました。さまざまな分野の企業で構成される複数のチームを作り、チームごとに参加企業が持ち寄ったアイディアを事業化へとつなげる検討を行う試みです。ビジネス化に向けて、みちびきエバンジェリストと名付けられた有識者と一緒に議論を行います。活動の中から実際に実用化できそうなアイディアには、実証事業などの支援を行っています。この「みちびきコミュニティ」の取り組みはどなたでも参加可能なので、興味があればぜひ参画いただきたい、と呼びかけました。

<利活用企業の展示ブース>

展示ブースでは各企業が提供サービスを紹介

展示ブースではスタートアップピッチで登壇した5つの企業が、それぞれのビジネスアイディアや提供サービスを紹介すると共に、Ashiraseが発売予定の歩行ナビゲーションデバイス「あしらせ」や、マゼランシステムズジャパンが開発中のCLAS・MADOCA対応のマルチGNSS受信機などの実機も展示されました。これらの展示物に興味を惹かれて足を止める人や、スタートアップピッチの講演を見て詳細な話を聞きにきた人など、展示ブースには多数の人が訪れて盛況となりました。

展示ブース

展示ブース

展示ブース

みちびき利活用企業の展示ブース

展示ブース

GNSS受信機

マゼランシステムズジャパンのマルチGNSS受信機

「あしらせ」

歩行ナビゲーションデバイス「あしらせ」

内閣府では、みちびきを活用した新たなコラボレーションや先進的なビジネスが創出されること、そしてそこから「みちびき仲間」の輪が大きく広がっていくことを期待して、今後もこのようなイベントへの参加を企画していきます。

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