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[報告] イチBizアワードでみちびき活用した位置誘導植栽機が最優秀賞

2026年03月23日

内閣官房による地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」の表彰式が2026年1月30日、G空間EXPO2026開催中の東京ビッグサイト(江東区有明)で行われました。4年目を迎えた今回は、約300件の応募から絞り込まれた37件(ビジネス部門19件、アイデア部門13件、不動産情報活用部門5件)が一次審査を通過し、そこから最優秀賞と各部門賞、みちびきを活用したアイデアやサービスに贈られる「みちびき賞」などの協賛企業特別賞が選出されました。

会場全景

東京ビッグサイトで行われた表彰式

開会挨拶

表彰式に先立ち内閣官房 地理空間情報活用推進室の佐々木俊一室長が開会挨拶を行いました。佐々木室長は、「みちびきや電子基準点などのインフラ整備が進み、それらを活用したデータが広く利用可能になってきました。多くの情報を迅速に処理するためにAIの活用も進んでおり、まさに新たなビジネスを生み出す土壌が整いつつあります。今回も積極的に応募いただき、内容もこれまでにないほど密度の高いものになってきました」と話し、来場者に引き続きの支援と参加を呼びかけました。

来賓挨拶

次に来賓として内閣総理大臣補佐官の宇野善昌氏が登壇しました。宇野氏は、過去に受賞した参加者が現在は各方面で活躍しているとして、みちびきを活用した水田除草ロボット「ミズニゴール」(2024年度 最優秀賞)や、みちびき対応の農業支援システム「レポサク」(2023年度 最優秀賞)の例を挙げ、「受賞者がG空間情報社会の実現を牽引していることを本当にうれしく思うと共に、今年度の受賞者や応募者の皆さまが世界に羽ばたき、社会課題の解決を先導いただくことを大いに期待します」と述べました。

受賞者挨拶

最優秀賞には、有限会社大坂林業の中村隆史氏による「みちびき衛星・CLASを活用した位置誘導植栽機の林業現場での実装、及び植栽位置データの蓄積とその後の活用」が選ばれました。中村氏の受賞により、2023年度のみちびき対応農業支援システム「レポサク」、2024年度のみちびきを活用した水田除草ロボット「ミズニゴール」に続き、みちびきを活用した事例が3年連続で最優秀賞に選ばれました。受賞した中村氏は、登壇して次のようにプレゼンテーションを行いました。

最優秀賞プレゼン

中村氏によるプレゼンテーション

日本の林業には様々な課題がありますが、中でも問題となっているのが「伐採後の放置」と「採算性の低さ」であり、伐採後に再び木を植えて育てる再造林の割合は30~40%の低い水準にとどまっています。収入となる立木の販売価格を、支出となる造林経費がはるかに上回っているのがその原因です。
この収支を転換するには造林を機械化して省力化を図る必要があり、そのために開発したのが、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を活用した植栽位置誘導装置です。CLAS対応受信機とアンテナ、バッテリーを搭載した背負子(しょいこ)を背負い、位置情報をタブレットに送信することで、タブレットに表示された苗木の位置と現在地を確認しながら植栽を行えます。山林にある造林現場は通信環境が整っていないことが多く、通信不要で高精度測位を利用できるCLASが最適であると考え、みちびきのCLASを採用しました。

講演スライド(植栽位置誘導装置)

これまでは植栽位置を確認するために間縄(けんなわ。一間=約1.8mごとに目盛りを付けた測量用の縄)などを使っていましたが、この装置を使えば、縄を張ったり回収したりする手間が省けて少人数で作業できます。苗木を植えた位置も記録でき、下刈りや伐採作業を機械化する際の重要な情報として利用できます。今後は植栽位置や伐採データ、空撮データなどを蓄積してプラットフォーム化する予定であり、苗木を植えてから伐採するまでの作業を効率的に行うことができます。2022年度から3年間の実証実験を行い、現在、販売に向けて開発を進めています。

最優秀賞授与

最優秀賞を授与される中村氏

なお、中村氏は「イチBizアワード」協賛企業である準天頂衛星システムサービス株式会社が選定する「みちびき賞」にも選ばれました。

中村氏

G空間EXPO展示「みちびきブース」にて

優秀賞授与

優秀賞を授与される岸氏

ビジネス部門の優秀賞には、株式会社Rootの岸 圭介氏による「AR(拡張現実)作業補助アプリにCLAS・MADOCA-PPP連携機能を追加し、アプリの活用領域拡大を目指す事業」が選ばれました。スマートフォンやスマートグラス向けのAR作業補助アプリにみちびきのCLASとMADOCA-PPPを連携し、海上で取得した高精度位置情報を活用して海洋環境を見える化することにより、漁業や養殖業の作業効率化と安全確保を目指す取り組みです。

岸氏

ビジネス部門ではこのほか、自治体ごとにフォーマットが異なる学区データを統一し、全国の公立小中学校の学区を地図で統合・可視化する「学区検索サービス」(佐藤和希氏)と、運行管理システムで車両情報や運転手情報等のテレマティクスデータを蓄積する「ダンプトラックのテレマティクスデータ活用で実現する災害対応 平時は現場を支え、有事は命を救う」(株式会社MIEZ 福田聆氏)も選出されました。

また、イチBizアワードのスペシャルサポーターである新人宇宙飛行士VTuberの月女神(アルテミス)イチ氏による特別賞「月女神イチ賞」には、地理好きVTuberとして活動する赤穂しゅな氏の「推しと同じ場所に立つ感動を、『ミラージュ』で。」が選定されました。みちびきの高精度位置情報を活用して、人と場所をつなぐ未来の推し活・聖地体験を提案するというアイデアです。

スライド(月女神イチ賞)
月女神イチ氏

授賞式では、月女神イチ氏がスクリーンに登場した

アイデア部門の優秀賞には、以下の5組が選出されました。

・井下敬翔氏:
 「ラストワンマイルを短縮する“動くバス停”の社会実装モデル」
・佐々凱音氏:
 「Green Flow:信号待ちゼロを実現するAI駆動型シームレスナビゲーション」
・新潟医療福祉大学医療情報管理学科 市川ゼミ 樋口真城氏:
 「スマート除雪マップ:G空間データで除雪状況をリアルタイム可視化」
・太田市立太田高等学校 長谷川琴音氏:
 「圃場廃棄ゼロを目指して 新たな野菜販売 ~実習を通じて感じた、あったらいいな~」
・杉野真珠氏:
 「あなたの"生活ルート"でリハビリを ~日常導線を活かしたリハビリの新しいかたち~」

不動産情報活用部門の優秀賞には、次の2組が選出されました。

・東京カートグラフィック株式会社 石川泰正氏:
 「地図太郎Lite×不動産情報ライブラリによる"地域をデータで学ぶ"教育プロジェクト」
・つくるAI株式会社 新谷健氏:
 「地理空間データと独自開発AIをデジタルツイン上で統合・解析 ~まちづくりのデジタル産業インフラ~」

受賞作品の詳細は、以下のページでご確認ください。

閉会挨拶

閉会挨拶は、内閣官房 地理空間情報活用推進室の鳥海貴之室長代理が行いました。鳥海室長代理は、最優秀賞を受賞した大坂林業の位置誘導植栽機について「植栽データを様々に利活用するアイデアであり、現場の実装にとても期待させられている」と話したほか、「除雪やリハビリテーションなど新しい領域での活用や、AR等の新しい技術の組み合わせなど、これまであまり見られなかった分野での受賞があり、地理空間情報の活用技術の社会的な実装が進んでいると改めて実感しました」として、「応募いただいたアイデアを参考に、地理空間情報の更なる活用に向けて基盤整備を進めたい」との決意を示しました。

記念撮影

表彰式後の記念撮影

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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