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[報告] GNSS・QZSSロボットカーコンテスト2024を開催

2024年12月09日

衛星測位機能を搭載したロボットカーによる自律走行を競い合う「GNSS・QZSSロボットカーコンテスト2024」の審査会が2024年10月20日、東京海洋大学・越中島キャンパス(東京・江東区)で行われました。
このコンテストは一般社団法人測位航法学会が主催し、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構、公益社団法人日本航海学会GPS/GNSS研究会、準天頂衛星システムサービス株式会社の3者が共催として加わっています。みちびき等のGNSSを利用する研究者・技術者の相互交流や、大学・高専・専門学校・高校等の学生に対する衛星測位の基礎技術修得の機会提供などを目的に毎年開催行われており、今年で18回目の開催となります。

会場写真

会場となった東京海洋大学の越中島キャンパス

今年、この審査会にエントリーしたのは大学生や高専生など計8チームで、そのうち7チームが会場で出走しました(1チームは棄権)。昨年まではパイロンを8の字型に周回するダブルパイロンレース方式で行われていましたが、今年は会場として予定していたグラウンドが使えなくなったために急きょ変更され、約100~150mのアスファルト路面を周回するサーキットレース方式となりました。

開会式

開会式の様子

また、昨年までロボットカーの大きさは、競技中の車高が40cm以下で縦横それぞれのサイズが50cm以下か、又は走行に必要な機器一式が国内線旅客機の機内に持ち込めるサイズと決められていましたが、今年のコンテストは、1)従来の大きさのロボットカーでの参加、2)従来のサイズ規定を満たさない自由な大きさのロボットカーでの参加、3)オンラインによる動画での参加、の3つのカテゴリーで行われました。

競技コースの座標図

競技に使用したコース(緑色の線)とその座標

競技コース図

コース上に設置されたウェイポイント

コース上には18のウェイポイント(ゲート)が設置され、競技前に各ウェイポイントの緯度・経度・高さ(楕円体高)が出場者に公開されます。各チームはその座標をロボットカーに設定して左回りに周回走行させ、ロボットカーが各ゲートを通過するごとにポイントが加算される仕組みです。その総合点がもっとも高いチームが優勝となります。コースには大小様々な大きさのカーブがあり、坂道を上がるポイントも1カ所あります。さらに、スタートしてコースを周回し、ゴールとなるその地点に再び戻ってサークル内に停止するとボーナスポイントも加算されます。

競技中の様子-1

競技中の様子

3分間の競技時間内にできるだけ多く周回して多数のポイントを得るには、スピードと正確さのバランスが重要な要素となります。ロボットカーがコースアウトしそうな時には、救済措置として人手を使ってコースに戻すことが5回まで認められています。衛星測位の精度劣化が予想される箇所はリエゾン区間に設定され、人手によるサポートが認められています。逆にリエゾン区間をサポートなしで通過できた場合は、ポイントが加算されます。競技は1台ずつ順番に行われ、1回目の競技が終了した後は、希望者による2回目の競技も行われました。

競技中の様子-2

競技中の様子

ロボットカーは、主な航法センサーとしてGNSS受信機を搭載し、マイコンの制御プログラムに従って自律的に走行します。単独測位だけでなく、RTK(リアルタイムキネマティック)やみちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)による測位を採用することもできます。今年は、出走した7チームのうち3チームがCLASを、残る4チームがRTK測位を採用し、単独測位を使用したチームはありませんでした。
また、GNSS受信機以外にジャイロセンサーや地磁気センサーの搭載も認められています。競技中の手動による遠隔操作は不可で、ハードウェアとソフトウェア共にすべての自律制御部がロボットカーに搭載されている必要があります。ロボットカーの機体にはラジコンカー模型をベースにする人が多く、昨年までは凹凸の多いグラウンドでしたが今年は舗装路となったため、速度が速い機体もあり、中には速すぎてカーブを曲がりきれず転倒してしまうケースもありました。

競技中の様子-3

競技中の様子

この日、最優秀賞を受賞したのは、ユーブロックスのRTK対応受信機「ZED-F9P」を搭載した小山工業高等専門学校の「SatNavCar ver.2」で、今回エントリーした機体の中では群を抜くスピードで、時間内にコースを5周することができました。小山工業高専の加賀谷龍史さんは、「速度を出そうと思ったので、反時計回りで遠心力が働く方向に補助輪を付けました」と開発の工夫点を説明しました。

SatNavCar ver.2

小山工業高等専門学校「SatNavCar ver.2」

メンバー写真-1

最優秀賞を受賞した小山工業高等専門学校のメンバー

優秀賞(2位)は、鳥羽商船高等専門学校の女性チーム“鳥羽商船Girls”の「シン☆鳥羽丸GO」で、RTK測位を採用した機体を使用し、安定した走りを見せました。また、ゴール後に校歌のメロディが流れるようになっている点もユニークです。同チームの坂本紗羅さんは、「曲がるところは速度を落として確実に通り、ストレートの箇所はスピードを出すことで、確実さを取りつつスピードも保つようにしました」と工夫した点を語りました。

シン☆鳥羽丸GO

鳥羽商船Girls「シン☆鳥羽丸GO」

メンバー写真-2

優秀賞(2位)を獲得した鳥羽商船Girlsのメンバー

優秀賞(3位)はセプテントリオのCLAS対応受信機「Mosaic-CLAS」を搭載した明治大学理工学部網嶋研究室の「網嶋号2024」が受賞しました。同研究室の菅野翼さんは、「CLASのほうがRTKよりも簡単に使えるというメリットがあったのでCLASを採用しました。1週間前までは全然動いていなくて、急ピッチでトライ&エラーを繰り返した努力が実ったと思います」と受賞についてコメントしました。

網嶋号2024

明治大学の「網嶋号2024」

網嶋号2024の内部

網嶋号2024の内部

メンバー写真-3

優秀賞(3位)となった明治大学理工学部網嶋研究室のメンバー

「阿蘇不知火号2024_RTK改」と「サレジオ1」

熊本高専熊本キャンパスの「阿蘇不知火号2024_RTK改」(左)、CLAS測位を採用したサレジオ高専の「サレジオ1」(右)

「ランクルないさー」と「メグパン」

CLASを採用した愛知県立愛知総合工科高等学校専攻科「ランクルないさー」(左)、名城大学「メグパン」(右)

このコンテストには、スポンサーとしてアイサンテクノロジー株式会社、小峰無線電機株式会社、古野電気株式会社、CQ出版株式会社、セプテントリオ、岩城農場の6社が加わっています。各社からの賞品として、小峰無線電機のGNSSアンテナ、セプテントリオのGNSS受信機、CQ出版のGNSS受信機のセット「トラ技RTKスターターキット基地局」や書籍「高精度cm級GPS測位キット実験集」、古野電気のボールペンのほか、GNSSを活用したスマート農業に取り組む岩城農場(栃木・大田原市)からは新米10kgが贈呈されました。

松岡理事

測位航法学会の松岡理事

主催者を代表して表彰式に参加した測位航法学会の松岡繁理事は、「従来はオープンスカイの環境でしたが、今年は建物の周りでの実施となり、時間がない中でコーナリングや坂などの様々な障害へのチャレンジに、皆さん苦労されたと思います。その分、非常に良い内容になりましたので、次回はさらにブラッシュアップして参加してください」と参加者の健闘を称えて、コンテストを締め括りました。

閉会式

閉会式の様子

集合写真

参加者全員で集合写真

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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