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[報告] GNSS・QZSSロボットカーコンテスト2022を開催

2022年11月07日

衛星測位機能を搭載したロボットカーによる自律走行を競い合う「GNSS・QZSSロボットカーコンテスト2022」(主催:一般社団法人測位航法学会、共催:一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構、公益社団法人日本航海学会 GPS/GNSS研究会、準天頂衛星システムサービス株式会社)の審査会が2022年10月22日、東京・江東区の東京海洋大学・越中島キャンパスのグラウンドにて行われました。

今年はリモートとリアルのハイブリッド開催

今年で16回目を迎えるこのコンテストは、衛星測位に関わる人材の育成及び技術交流を目的としています。新型コロナウイルスが感染拡大したために、一昨年と昨年の2年間はリモートで開催されましたが、今年は会場にて審査会が行われることになり、リモートとリアルのハイブリッド開催となりました。
エントリーしたのは大学生や高専生、社会人など計16チームで、そのうち9チームが会場で出走し、残りの7チームがリモートでの参加となりました。

出走チーム一同

出走チーム一同

ルールは、メインとなるパイロン(指標となる置物)2つ、サブのパイロン2つの計4つのパイロンを周回して得られるポイントを競う「ダブルパイロンREIWA」です。

ダブルパイロンREIWA

ダブルパイロンREIWAのコース(コンテスト公式サイトの掲載図版)

メインパイロンは約20mの間隔で設置され、サブパイロンは2つのメインパイロンを結ぶ直線上でメインパイロンから内側に1m離れた位置に配置されます。ロボットカーは自律走行によってメインパイロンを8の字型に周回し、メインパイロンを通過したり、パイロン間を結ぶ中心線を通過したりするたびに通過ポイントが加算されます。
さらに、メインパイロン周回ポイントを獲得した上で競技時間内にセンターサークル内に停止してアピールするとボーナスポイントが加算されます。競技には3分の制限時間が設けられ、ポイントを数多く得るにはスピードと正確さのバランスを探りながら調整しなければなりません。
なお、リモート参加者は、ダブルパイロンREIWAのルールに準じたコースを周回する動画を事前に撮影して投稿し、その動画をもとに審査して、現地審査の結果とは別に賞が贈られます。

競技中の手動による遠隔操作は不可

競技の様子

競技の様子

ロボットカーは主な航法センサーとしてGNSS受信機を搭載し、マイコンの制御プログラムに従って自律的に走行します。単独測位だけでなく、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)やRTK(リアルタイムキネマティック)による測位を採用することもできます。
GNSS受信機以外にはジャイロセンサーや地磁気センサーの搭載が認められています。競技中の手動による遠隔操作は不可で、ハードウェアとソフトウェア共にすべての自律制御部がロボットカーに搭載されている必要があります。
また、ロボットカーのサイズは高さ40cm以下、幅50cm以下、奥行50cm以下と定められています。参加者には、ラジコンカー模型を流用した機体を使う人が多いですが、中には機体を一から自作する人もいます。

Team Katyの「arend-F」が優勝

arend-F

arend-F

今回優勝したのはTeam Katyの「arend-F」で、昨年のコンテスト賞品で得たセプテントリオ社のMosaic-X5をGNSS受信機として使用し、RTK測位によるスピーディーな走りにより周回を重ねて高得点を上げました。Team Katyの小灘聰一郎氏は競技を振り返り、「高レートの測位が可能となったため、スピードを上げることができました」とコメントしています。

Team Katyの小灘氏小灘氏、事務局の熊本高専・入江教授

Team Katyの小灘聰一郎氏(左)と小灘拓矢氏(中央)、事務局の熊本高専・入江博樹教授(右)

準優勝はRTK測位を採用した小山工業高等専門学校の「CTO γ(ガンマ)-type」、3位は愛知総合工科高等学校専攻科/Ben2pandaの「ben2系こだま号」で、こちらは単独測位を採用しています。なお、優勝、準優勝、3位の各チームには賞品としてセプテントリオからGNSS受信機が贈られました。

CTO γ-type

CTO γ-type

ben2系こだま号

ben2系こだま号

CLAS測位の「無限廻車」に特別賞

奈良高専チームの「無限廻車」は、周回を終えた後にセンターサークルの中心にぴったりと停止できたことにより特別賞を獲得しました。「無限廻車」はGNSS受信機にu-bloxのZED-F9PとNEO-D9Cを使用し、CLASによる測位を採用しています。

無限廻車

無限廻車

奈良高専チームの神元詞結氏は、「ロボットカーの機体にできるだけ金属を使わないようにして、電波が反射しないように工夫しました」とコメントしています。同チームには賞品として小峰無線電機株式会社よりGNSSアンテナが贈られました。

奈良高専チームの神元氏、小峰無線電機の加藤社長

奈良高専チームの神元詞結氏(左)、小峰無線電機の加藤健太社長(右)

このほかにセプテントリオのmosaic-CLASを搭載した神戸高専チームの「Robot_K」も、CLASを採用したロボットカーとして出場しました。

Robot_K

Robot_K

なお、リモート参加のロボットカーを審査するオンライン部門では、名城大学メカトロニクス工学専攻チームの「MJ 2022」に殊勲賞が、鳥羽商船高等専門学校・藤井研究室【賭場羅慈懇會(とばらじこんかい)】の「T○BA-MARU」に審査員特別賞が贈られました。

MJ 2022

MJ 2022

T○BA-MARU

T○BA-MARU

審査委員長の岩城善広氏は講評として、3年ぶりに会場での開催となったことに触れ、「この2年間で技術が変わってきており、RTKやCLASを採用するチームも増えて、みなさんがチャレンジしている姿を見られてとても良かったと思います」と語りました。

岩城氏

岩城氏

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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