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[報告] ロボテスEXPOでみちびき対応ドローンやUGVデモ、講演会を実施

2022年10月31日

2022年9月15・16日の2日間、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドにおいて「ロボテスEXPO 2022 ドローン・ロボット実演展示会」(主催:公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構、共催:南相馬市)が開催されました。準天頂衛星システムサービス株式会社は本イベントを後援し、展示ブースを出展すると共に、みちびきに対応したドローンやUGV(無人地上車両)のデモンストレーションを行いました。また、2日目となる16日には「みちびき(準天頂衛星システム)講演会 ~ドローン・UGV最前線~」も開催しました。好天に恵まれた秋の連休の開催ということもあり、イベントには2日間で483人が参加しました(主催者調べ)。

展示会場

展示会場

会場となった福島ロボットテストフィールドは、ドローンやロボットの開発実証拠点で、インフラや災害現場など実際の使用環境を再現した施設があり、無人航空機や災害対応ロボット、水中探査ロボットなどの性能評価や操縦訓練などを行えます。

みちびきに対応した最新ドローンや受信機を展示

準天頂衛星システムサービスのブース

準天頂衛星システムサービスのブース

準天頂衛星システムサービスが出展したみちびきの展示ブースでは、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)対応のACSLの国産ドローン「SOTEN(蒼天)」や、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応した東光鉄工の農業用ドローン「TSV-AQ2」などのほか、みちびきに対応した受信機を展示しました。
CLAS対応受信機は、今年9月にコアが発売したCLAS・MADOCA対応の防水・防塵受信機「Cohac∞ Ten+」、2月に発売したCLAS対応の小型受信機「Cohac∞ Ten」のほか、三菱電機のCLAS対応受信機「AQLOC-Light」を展示しました。SLAS対応受信機は、災危通報(災害・危機管理通報サービス)にも対応したコアの「Cohac∞ QZNEO」や、フォルテのGNSSトラッカー「FB2003」「FB2020」を展示しました。

ACSLのSOTEN

ACSLのSOTEN

東光鉄工のTSV-AQ2

東光鉄工のTSV-AQ2

コアのCohac∞ Ten+

コアのCohac∞ Ten+

コアのCohac∞ Ten

コアのCohac∞ Ten

三菱電機のAQLOC-Light

三菱電機のAQLOC-Light

コアのCohac∞ QZNEO

コアのCohac∞ QZNEO

フォルテのFB2003とFB2020

フォルテのFB2003とFB2020

みちびき対応の受信チップやモジュールでは、CLASに対応したマゼランシステムズジャパンの新製品「Regulas」やセプテントリオの「mosaic-CLAS」「AsteRx-m3 CLAS」、ユーブロックスジャパンの「NEO-D9C」、SLASに対応したユーブロックスジャパンの「NEO-M8U」やソニーセミコンダクタソリューションズの「CXD5610GF」などを展示しました。

MSJのRegulas

MSJのRegulas

mosaic-CLASとAsteRx-m3 CLAS

mosaic-CLASとAsteRx-m3 CLAS

NEO-D9CとNEO-M8U

NEO-D9CとNEO-M8U

CXD5610GF

CXD5610GF

今回、展示ブースを訪れた来場者は、同じ会場内でデモ飛行・走行を見たり、講演会に参加したりした方がほとんどで、ドローンや受信機の実物に触れる機会として興味を持って展示品を見ていただけました。また、みちびきをご存じなかった方からは、みちびきを知る機会を持てて良かった、という声も複数聞かれました。

実演バスツアーでドローンやUGVのデモを見学

福島ロボットテストフィールド内をバスで巡り各社の実演を見られる「実演見学バスツアー」では、コアと東光鉄工、福島工業高等専門学校、福島大学による製品紹介やデモンストレーションを行いました。

東光鉄工は、無人航空機エリアの緩衝ネット付き飛行場で、農業用ドローン「TSV-AQ2」による農薬散布の自動航行を実演しました。2日目は強風のため自動ではなくマニュアルによる飛行となったものの、農薬に見立てた水を散布しながら飛行するドローンは多くの見学客から関心を集めていました。

東光鉄工TSV-AQ2のデモ飛行

東光鉄工TSV-AQ2のデモ飛行

なお、同じく無人航空機エリアで行われる予定だった、ACSLのドローンにコアのCLAS対応受信機Cohac∞ Tenを搭載した「ChronoSky PF2」の飛行デモは、当日の機材トラブルにより中止となり、ビデオによる製品紹介を行いました。

コアによる製品紹介

コアによる製品紹介

インフラ点検・災害対応エリアにある周回路では、福島工業高等専門学校の芥川一則教授による、CLAS対応受信機を搭載した電気自動車「PIUS」のデモンストレーションを行いました。
これは、事前にドローンにて収集した10cm間隔の高密度点群データをもとに作成したMarhy 3D Map(機械可読高精度三次元地図)からルートを作成した上で、CLASの高精度測位により自動運転を行うもので、周回路の中心線に沿ってPIUSを走らせました。ただし、事前のテストでは良好な自動運転が確認できたものの、本番では機材の不調で手動での運転に切り替えての走行となりましたが、芥川教授による詳細な説明が来場者へ行われました。
CLAS対応のGNSSアンテナを搭載したPIUSは、外装が外されて内部が見える状態になっており、参加者はそれを興味深そうに見ていました。芥川教授は「この車にはみちびき対応の受信機が搭載されているだけで、センサーが1つも付いておらず、非常にコストが安いのが特徴です」とPIUSの利点を説明しました。

福島高専PIUSの走行デモ

福島高専PIUSの走行デモ

一方、インフラ点検・災害対応エリア内にある、街中の交差点付近を再現した市街地フィールドでは、福島大学の窪田陽介准教授が、イームズロボティクス株式会社の協力を受けて、CLAS対応受信機を搭載した自律型運搬UGV(無人地上車両)のデモンストレーションを行いました。このUGVは、収穫したキュウリを搬送するためのカゴを2つ搭載した機体で、CLASの高精度測位により道路に沿って進み、交差点で方向を変えたり、旋回して来た道を戻ったりと、正確な自動運転が行われました。
また、衛星測位ではなくLiDAR(レーザースキャナー)を搭載し、先行する車両を追従する機能を持った別のUGVと組み合わせて、複数のUGVによる協調作業のデモンストレーションも行われました。2台のUGVが隊列を組んでキュウリを運ぶ姿に、見学客は興味深そうに見入っていました。

福島大学による自律型運搬UGVのデモ

福島大学による自律型運搬UGVのデモ

みちびき(準天頂衛星システム)講演会 ~ドローン・UGV最前線~

イベント2日目の9月16日には「みちびき(準天頂衛星システム)講演会 ~ドローン・UGV最前線~」が行われました。各講演の概要をご紹介します。

講演会の会場

講演会の会場

開会挨拶

── 準天頂衛星システムサービス 石橋 海社長

QSS石橋社長

準天頂衛星システムサービス株式会社(QSS)の石橋海・代表取締役社長が開会の挨拶を行いました。ドローンやUGVは農業や防災、インフラ点検、物流、測量などさまざまな分野で活用されており、今後も大きく成長する分野であるとして、この成長がこれからも加速するように日々努めていきたいと抱負を述べました。

準天頂衛星システム「みちびき」の概要と最新利活用事例

── 内閣府 出口智恵企画官

内閣府 出口企画官

内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の出口智恵企画官がみちびきの概要と最新の利活用事例を紹介しました。今年、小型で安価なみちびきCLAS対応受信機が発売されたことや、みちびきの高精度測位が自動運転技術や腕時計型ウェアラブル端末で採用されていること、そして海外ではMADOCAを活用したドロ-ン観測サービスの実証実験が行われたことも報告しました。2024年より海外向け高精度測位補強サービスや信号認証サービスも開始予定で、引き続きみちびきの利用拡大を図る方針だと語りました。

準天頂衛星システムの社会実装 ~位置情報、時刻情報は社会をどのように変えるのか~

── JIPDEC 坂下哲也常務理事

JIPDEC 坂下常務理事

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の坂下哲也常務理事が登壇し、高精度な位置情報や時刻情報が社会に与える影響について展望を語りました。坂下氏はみちびきについて、「ナノ秒、センチメータという情報を提供する機能を集約し、サービス提供時・利用時のコストを低減させるもので、アジア域内において位置情報と時間情報を得るというルーチンワークの省力化に貢献する」と語りました。活用事例としてアクリーグの連作障害防止アプリケーションやニュージャパンマリンによる船舶の自動操舵などを紹介した上で、データスペースエコノミーが創る未来の交通の例など、今後社会に起きることが予想される変化について語りました。

量産型CLASドローン「ChronoSky PF2」が実現する高精度測位ソリューション

── コア 山本享弘氏

コア 山本氏

株式会社コア GNSSソリューションビジネスセンターの山本享弘氏が登壇し、同社のみちびき対応受信機を紹介すると共に、CLAS対応ドローン「ChronoSky PF2」を使った高精度測位ソリューションについて紹介しました。ChronoSky PF2はコアとACSLが共同開発した量産型CLAS対応ドローンで、携帯電波の圏外でも利用可能です。また、ドローンを使って建設工事の進行状況などを測量する際に、標定点の設置が不要となります。鉱山で掘削される鉱石の量をドローンで計測するなど、新たな活用法も検討されています。

農薬散布ドローン みちびき(CLAS)の活用

── 東光鉄工 高橋成典氏

東光鉄工 高橋氏

東光鉄工株式会社 UAV事業部の高橋成典氏が登壇し、同社の農業用ドローン「TSV-AQ2」を紹介しました。TSV-AQ2は、実際にドローンを利用する農家の方々の要望を採り入れて安心・安全に農薬散布を行えるドローンとして開発した機体であり、薬剤のタンクをワンタッチで着脱でき、機体を丸ごと水洗いできます。農薬散布の際は自動航行が可能で、飛行時に仮想のA点とB点を設定して散布を自動で行う「AB点モード」を備えています。また、タンクが途中で空になった場合は自動停止し、いったん戻して補充後に再開ボタンを押すことで停止したポイントまで自動で戻って散布を再開できます。

みちびきとMarhy 3D Map(機械可読高精度三次元地図)のコラボレーションによる自動運転の基礎的実証事業

── 福島工業高等専門学校 芥川一則教授

福島工業高専 芥川教授

福島工業高等専門学校 ビジネスコミュニケーション学科の芥川一則教授が登壇し、機械判読が可能な高精度三次元地図(Marhy 3D Map)によってセンチメータ級の精度を持つルートデータを作成し、そのルートを使ってCLAS対応受信機を搭載した電気自動車「PIUS」による自動運転を行った実証実験を紹介しました。高性能なレーザーセンサーを搭載したドローンで作成したMarhy 3D Mapをもとに「PIUS」を走行させてCLASの精度を確認したところ、測位誤差はかなり小さく、センチメータ級の精度で自動運転に活用できることが確認できました。

農業分野における次世代ロボットの可能性について

── 福島大学 窪田陽介准教授

福島大学 窪田准教授

福島大学 食農学類の窪田陽介准教授が登壇し、スマート農業におけるロボット技術の活用について解説しました。窪田准教授は、既存のロボット農機が高出力・大型ロボットであるのに対し、次世代のロボット農機は小型でスマートなロボットが群となって高精度衛星測位により自律的に同時・協調作業が行える3S(Small-Smart-Swarm)ロボット農機になると語りました。さらに、南相馬市に開設が予定されているキュウリ栽培の大規模施設で使うことを想定したCLAS対応の自律型運搬UGVについても紹介しました。

以上、当日は会場をほぼ満席とする85人が参加しました。同じイベントで行われたデモ飛行・走行の当事者らが語る講演の内容は具体的で臨場感があり、講演後の参加者アンケートでも満足度が高かったとの回答が多く、好評のうちに終了しました。
なお、下記の講演会サイトにて、当日の講演資料、及び講演概要をPDFファイルでご覧いただけます。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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