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[報告] 自動車技術会関東支部と共催で「みちびき講演会」を開催

2023年10月11日

2023年9月13日、準天頂衛星システムサービス株式会社は公益社団法人自動車技術会関東支部との共催により、横浜市にある株式会社小野測器(本社・ソフトウエア開発センター)の会議室、及びオンライン配信にて講演会「準天頂衛星システム(みちびき)」を開催しました。

会場風景

会場となった小野測器の会議室

本講演会を主催した自動車技術会は、自動車に関わる研究者や技術者、学生などで構成される学術団体で、講演会の開催や将来技術の調査研究、次世代技術者の育成、出版物の刊行、自動車関連規格の制定などを行っています。今回は関東支部における2023年度の第2回の講演となり、内閣府宇宙開発戦略推進事務局も協力として参加しました。当日はみちびきの最新技術動向や産業界における利活用事例を紹介すると共に、参加者との質疑応答や意見交換も行いました。

講演会「準天頂衛星システム(みちびき)」

講演に先立ち、自動車技術会関東支部で講演・講習会担当理事を務める尾高成也氏(曙ブレーキ工業株式会社)が挨拶し、「講演と質疑応答を通してみちびきの知識を深めると同時に、皆さまと将来の展望を議論してまいりたい」として、来場者に積極的に参加・協力するよう呼びかけました。

尾高氏

自動車技術会関東支部の尾高氏

── 内閣府 和田企画官

和田企画官

講演会冒頭には内閣府 宇宙開発戦略推進事務局の和田弘人企画官が登壇して、準天頂衛星みちびきの特徴と、その利活用支援の現状、そして将来のサービスの発展を解説する基調講演を行いました。和田企画官は衛星測位システムの仕組みや市場の推移予測を説明した上で、みちびきの提供サービスであるCLAS、及びSLASの特徴を紹介しました。さらに、みちびきの自立性や持続性、測位精度の向上を図るため、2024年度にかけて衛星7機による運用体制を構築すると共に、将来の11機体制に向けた検討・開発にも着手していると語りました。今後の予定では、スプーフィング(なりすまし)対策として信号認証サービスを2024年度から開始することや、同じく2024年からMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)のアジア・オセアニア地域でのサービスを開始すること、そして災危通報(災害・危機管理通報サービス)の機能拡張についても紹介しました。

── NECソリューションイノベータ神藤主席プロフェッショナル

神藤主席プロフェッショナル

続いてNECソリューションイノベータ株式会社の神藤英俊主席プロフェッショナルが、みちびきの事業概要と利用拡大の最新状況を説明しました。神藤主席プロフェッショナルからは、みちびきの地上システム(主管制局や追跡管制局など)や準天頂軌道の特徴、他の衛星測位システムに対する優位性などの解説、実証実験に使う受信機の貸出案内、測位衛星の配置状況が分かるアプリ「GNSS View」も紹介しました。過去に行った実証実験のテーマとしては、CLAS対応の農業用トラクターやバス位置情報のリアルタイム配信、ダム工事現場におけるケーブルクレーンの自動運転制御、みちびき対応ドローンなどの事例を振り返ると共に、みちびきの高精度測位に対応した自動車や、みちびきの災危通報に対応したETC2.0車載器などの対応製品も紹介しました。

── パナソニック宿澤氏

宿澤氏

以降の4つの講演はみちびき利活用事例の紹介となり、まずパナソニック オートモーティブシステムズ株式会社の宿澤紀之氏(車載システムズ事業部 安全・安心システムズBU 主任技師)が登壇し、同社のETC/ETC2.0車載器への取り組みや、みちびきの災危通報に対応したETC2.0車載器について解説しました。宿澤氏はETC/ETC2.0車載器が開発初期から徐々に進化してきた経緯を振り返りつつ、2021年に業界で初めて災危通報対応のGPS車載器の発売にこぎつけた歴史を紹介しました。この車載器はJEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)で標準規格化された災危通報のための仕様に沿っており、高速道路以外でも災危通報を受信可能です。受信すると「みちびき信号を受信しました」と音声で知らせて起動し、緊急地震速報や津波警報、気象情報などのさまざまな通報を音声案内できます。宿澤氏は、「スマートフォンは便利な半面、バッテリー切れや故障、災害時における通信網の寸断などの課題があります。常に衛星から災害情報を受信できるみちびき対応のETC2.0車載器は、今後重要な役割を担うと思います」とその利点をアピールしました。

── ビスペル馬渡氏

馬渡氏

2件目の事例は、合同会社ビスペルの代表社員である馬渡純氏が、みちびきを活用した残土搬出の協調自動化システムの実証実験を紹介しました。同社は重機のリモートシステムを開発するに当たり、まずラジコンの重機をインターネット経由で操縦するシステムを作って動作を確認し、そこで構築した制御プログラムを実際の重機に適用しました。油圧ショベルとダンプトラックの運転席のレバーにアクチュエーターを取り付けて無人自動化し、これらの重機にCLAS対応のアンテナと受信機を各2点ずつ計4点設置して、2つのアンテナの相対位置を取得することでそれぞれの機体やショベルの方向を検出できるようにしました。実証実験では、無人自動化した油圧ショベルを盛り土の手前に停車させ、ダンプトラックが横に並ぶとアームと油圧ショベルが自動的に動いて土砂を掘削し、トラックに土砂が積み込まれる点を検証しました。
馬渡氏は、3年前に実証実験を行った後、2020年11月にCLASの補強対象衛星数が増えたため、「最近また検証してみたところ、CLASの精度が向上していました」との点も報告しました。

── PALTEK若松氏

若松氏

事例の3件目は、株式会社PALTEKの若松範之氏(ソリューション事業本部 第一部 部長)が、みちびきのSLASに対応した「GPSトラッカーR」を紹介しました。これは物流用トレーラーシャーシ(輸送用の台車)への搭載を目的としたバッテリー駆動のデバイスで、SLASで取得する位置情報を商用LPWA(Low Power Wide Area)の一種であるSigfox(シグフォックス)を使ってクラウドに送信することで、ストックヤードなどにおいて一般のGPSよりも高精度にトレーラーシャーシの位置を探すことができます。同社は、このGPSトラッカーRを株式会社ドコマップジャパンの運送業向け車両動態管理システム「DoCoMAP」と組み合わせて、トレーラーシャーシの位置情報を管理できるシステム「docomap Trailer」として提供しています。位置情報の送信頻度は1日4回で、1年置きにバッテリーを交換すれば連続稼働が可能です。GPSトラッカーRは、2020年に株式会社エクスプローラと共同開発して実証実験を行った製品で、トライアルを経て2023年中に量産を開始する予定です。

── 先端ロボティクス財団 野波理事⾧

スライドと野波理事⾧の表示画面

オンラインで講演する野波理事⾧

事例の最後は、一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事⾧がオンラインで登場し、実証実験で行ったCLAS対応のVTOL(垂直離着陸)カイトプレーンを使った東京湾縦断飛行を解説しました。VTOLカイトプレーンは滑走路がなくても離発着できるため、CLASの高精度測位により設定したルート上に沿って少ない誤差で飛行でき、ドローンステーション(ドローンポート)など狭いスペースに着陸させることも可能です。野波理事長は、このVTOLカイトプレーンを使って横浜市と千葉市など大都市を結ぶ「空の物流ドローンハイウェイ」の実現に向けて取り組んでいます。また、これと並行して、CLASを活用してドローンをワイヤレス充電パッドの上にピンポイント着陸させて自動的に充電を行うシステムや、高精度測位を活用した複数のドローンによるスウォーム飛行などの開発も進めています。

会場風景

聴講者とのディスカッションの模様

個別の講演の後は、NECソリューションイノベータの神藤主席プロフェッショナルがモデレーターとなり、この日講演を行った登壇者全員をパネリストとして、聴講者からの質問に答えるディスカッションを行いました。衛星測位が行われる際の処理時間や、みちびきのメッセージ機能の詳細、自動車の対応状況、自動運転への活用、山岳エリアにおける衛星測位の精度などのさまざまな質問が、会場及びオンラインで聴講者から寄せられ、質疑を通して議論や意見交換を行いました。
閉会挨拶は、神藤主席プロフェッショナルが「本日ご参加いただいた皆さんに、ぜひみちびきのサービスを活用した課題解決の可能性を考えていただけると非常にうれしいです」と締めくくりました。

展示コーナー

会場に設けられた展示コーナー

講演会場には展示コーナーを設置して、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)に対応した受信機「mosaic-go CLAS」(セプテントリオ)、「RWS.DCM」「RWM.DC」(ビズステーション)、「Cohac∞Ten」(コア)と、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応したGNSSSトラッカー「GPSトラッカーR」(PALTEK)を展示しました。

mosaic-go CLAS

セプテントリオ「mosaic-go CLAS」

RWS.DCM, RWM.DC

ビズステーション「RWS.DCM」「RWM.DC」

Cohac∞Ten

コア「Cohac∞Ten」

GPSトラッカーR

PALTEK「GPSトラッカーR」

聴講者は講演会の合い間に展示コーナーを訪れて最新のみちびき対応製品を確認すると共に、講演終了後は展示コーナーを囲んで、登壇者と聴講者による名刺交換などを行いながら活発に交流しました。

参照サイト

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