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[報告] CEATEC 2025でみちびきに関する講演と展示

2025年11月26日

一般社団法人電子情報技術産業協会が主催するデジタルイノベーションの総合展示会「CEATEC(シーテック)2025」が2025年10月14~17日、千葉・幕張メッセで開催されました。今年のCEATECは、「Innovation for All(特定の業界や分野、国や地域に限らず、すべての人々に恩恵をもたらすイノベーションを)」をテーマに各業界から810の企業・団体が出展し、計222本のカンファレンスが行われました。会期4日間の登録来場者数は98,884人で、企業や官公庁、自治体、研究機関に加えて学生など幅広い世代が会場を訪れました。

会場全景

10月14日に行われた内閣府主催の講演セッション「準天頂衛星システム『みちびき』が拓く未来と利活用の最前線」では、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室長)、株式会社ニュージャパンナレッジ取締役の笠原宏文氏(営業部 部長)、株式会社ハタケホットケ代表取締役の日吉有為氏、NECソリューションイノベータ株式会社の神藤英俊氏(社会・通信ソリューション事業部門 エアロスペース・ナショナルセキュリティ統括部 シニアプロフェッショナル)の四氏が登壇しました。

講演者-1

QSSの石橋社長

冒頭挨拶に立った準天頂衛星システムサービス株式会社(QSS)の石橋海社長は、「みちびきは2018年に4機体制でサービスをスタートしました。その後、いろいろな形で測位信号を使っていただき、現在は7機体制に向けて事業が進んでいます。7機になれば、みちびきだけで皆さまに正確な位置情報をお届けできるようになりますので、ぜひご期待ください」と述べました。

講演風景-1
内閣府・三上参事官によるビデオメッセージ
講演者-2

続いて内閣府の三上参事官がビデオメッセージにて挨拶しました。三上参事官は、12月に打上げを予定しているみちびき5号機が三菱電機鎌倉製作所において最後の整備中であると紹介した上で、みちびきの概要と機能を解説しました。CEATECで描かれるような将来のスマート社会においては、みちびきの高精度測位や災害・危機管理通報サービス(災危通報)が重要な役割を担います。今後7機体制になればみちびきの測位サービスをより安定した形で利用でき、これまで4機体制でみちびき対応製品を利用していた人も7機のメリットを強く体感できるようになると話し、会場に対して「みちびきの7機体制がこれからの社会や経済にどのような影響を与えるのか、ぜひ傾聴していただきたい」と呼びかけました。

SLASを活用したごみ収集管理システム
ニュージャパンナレッジ 笠原氏
講演者-3

ニュージャパンナレッジの笠原氏は、みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)を活用したごみ収集車の管理システムを紹介しました。山口県を拠点としてシステム開発を手がけるニュージャパンナレッジは、GIS(地理情報システム)を活用したごみ収集管理システム「Clean Collect」を提供しています。ごみの収集状況をリアルタイムで確認するほか、違反ごみのデータ管理や集計業務などをサポートするシステムで、ごみ回収日報の出力にも対応しています。笠原氏は、開発当初は収集作業員のスマートフォンから情報を入力していたが、作業員の負担を軽減してデータ活用により業務効率化を図る目的で、ごみ収集車にSLAS対応受信機を搭載したと、現在に至る経緯を説明しました。これにより位置情報をクラウドサーバーにリアルタイムに送信し、管理者が作業状況を把握できるようになったといいます。

講演風景-2

このシステムでは、SLASの高精度な位置情報をリアルタイムに取得して、ごみ収集車の走行速度や停止位置を把握することにより、ごみステーションの位置を自動検出できます。また、ごみ収集の停止時間を測定することで収集時間も検出できます。さらにごみ収集車の移動履歴データを分析して急発進や急停止、走行速度などを把握すれば、安全管理も可能となります。笠原氏は、2024年9月~翌年1月に岩手県盛岡市紫波地区にて実証実験を行い、ごみステーションの位置検出においては実際のごみステーションの場所との適合率が95%となり、また、システム初期に設定したごみステーションの場所が約50カ所ずれていたと判明したことなども紹介しました。

講演風景-3

ニュージャパンナレッジでは、今後は全国の自治体に向けたシステムのPR活動を推進していくと共に、ごみの収集管理に適した簡易情報の入力・出力が可能な端末の開発も進めていく方針です。笠原氏は、みちびきのSLASとCLAS(センチメータ級測位補強サービス)の比較検証も行っており、ごみ収集に関連したデータを解析することで、環境政策の効果を数値化するシステムの構築も行うと説明して、講演を終えました。

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CLASを活用した水田雑草対策ロボット
ハタケホットケ 日吉氏
講演者-4

ハタケホットケの日吉氏は、CLASを活用した水田雑草対策ロボット「ミズニゴール」について解説しました。ミズニゴールは水田圃場を走行するロボットで、水を濁らせて光合成を阻害することで雑草の成長を抑制すると共に、ブラシで田面を引っかいて生えたての雑草を物理的に除草することができます。当初は手動で操作するラジコン型として製品化しましたが、その後、みちびきのCLASに対応したGNSS自動走行型を開発し、あらかじめ登録したルートに沿って水田圃場の中を自動的に走行できるようになりました。

講演風景-4

日吉氏は、稲作の有機化において最大のボトルネックとなるのは草取りであり、その決定的な解決策がない点が課題であるとして、ミズニゴールを使うことで水田の雑草対策を効率化できると語りました。ミズニゴールの実証実験は、2022年に長野県内10カ所、2023年には全国30カ所、2024年と2025年には全国100カ所で行われ、改善を進めた形で2026年から製品化する見込みです。ハタケホットケは、ミズニゴール以外にも公益財団法人自然農法センターと「土づくり勉強会」を共催したり、米の買い取りや直販に取り組んだりすることで日本における有機栽培の拡大を目指しています。

講演風景-5

日吉氏は今後について、ミズニゴールにジャンボタニシ対策機能を追加するアタッチメントを開発するほか、畦の雑草対策装置「シバカレール」や獣害・盗難対策レーザー装置「シカニゲール」、畑の雑草対策AI装置「クサトレール」、稲作自動化装置「タンボホットケール」など様々な機器の開発に取り組む予定だとして、国内循環型の環境再生型有機農業の実現に向けた意気込みを示しました。

関連ページ

みちびきの概要と利活用事例
NECソリューションイノベータ 神藤氏
講演者-5

NECソリューションイノベータの神藤氏は、みちびきの概要や利用拡大推進の取り組み、みちびきを活用した実証事例などを紹介しました。神藤氏は、今年度中にみちびき5号機及び7号機の打上げを行い、2026年度から7機体制がスタートする状況を説明した上で、その5年後(2031年度)にみちびき3号機後継機と8号機が打ち上げられると補足しました。

講演風景-6

神藤氏はまた、2018年から実施している「みちびきを利用した実証事業」では、農業や土木・建設、インフラ点検、海上、ドローン、スポーツなど様々な分野で実証が行われており、今年度は6つの事業が採択されたと述べました。この事業は、来年以降も継続していく予定とのことです。また、最近発売されたみちびき対応製品として、株式会社ACSLが10月から量産を開始したCLAS対応の長距離飛行ドローン「PF4」や、株式会社グリーンオンのSLAS対応ゴルフウォッチ、そして株式会社AshiraseのSLASに対応した視覚障がい者向け歩行支援デバイス「あしらせ」などを紹介し、近年はCLAS対応受信機の低価格化が進み、みちびき対応製品の普及が進みつつある状況にあると報告しました。

展示ブース-1
展示ブース-2
展示ブース-3

みちびきの展示ブースには、CLASに対応したドローン「PF4」(ACSL)や水田雑草対策ロボット「ミズニゴール」(ハタケホットケ)、「みちびき海象ブイ」(ブルーオーシャン研究所)、水道メーターナビゲーションシステム(KIS)、みちびきのCLAS対応端末を使用した農作業支援システム「レポサク」及び高精度車両管理システム「ミルトッカ」(エゾウィン)のほか、各社が販売するCLAS/SLAS対応受信機、CLAS対応アンテナなどを多数展示しました。

展示品-1

PF4(ACSL)

展示品-2

みちびき海象ブイ(ブルーオーシャン研究所)

展示品-3

ミズニゴール(ハタケホットケ)

展示品-4

水道メーターナビゲーションシステム(KIS)

会期中、ブースには「みちびき」を知らない方々も多数来訪しました。こうした方々にみちびきに関する基本的な事柄を説明し、講演を聴いてみちびきに興味を持った方や、みちびきをすでにご存じの方には、みちびきが提供するサービスやみちびきに対応した製品の最新情報をご案内しました。

展示品-5

上段左からCohac∞Ten、Cohac∞Ten++(コア)、RWS.DC/RWS.DCM/RWM.DC(ビズステーション)、中段左からRWX.DC(ビズステーション)、RJCLAS-L6(小峰無線電機)、CLAcanS(アカサカテック)、下段左からレポサク/ミルトッカ(エゾウィン)、CY-ET2620GD(パナソニック)、NORM GN301(グリーンオン)

参照サイト

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