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[報告] ロボテスフェスタでみちびき対応機器のデモや講演会を実施

2023年09月29日

2023年9月1・2日、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールドにおいて「ロボテスフェスタ2023」が開催されました。このイベントは公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と南相馬市の共催によるもので、イベントに協力している内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、みちびきを紹介する展示ブースを出展しました。また、イベントを後援している準天頂衛星システムサービス株式会社が初日の9月1日に会場内で「みちびき(準天頂衛星システム)講演会 ~ドローン・UGV最前線2023~」を開催したほか、2日間にわたり株式会社コア、仙台高等専門学校/株式会社石井製作所、岩城農場がそれぞれみちびきに対応したドローンやUGV(無人地上車両)のデモンストレーションを行いました。

今回、会場となった福島ロボットテストフィールドは、ドローンやロボットの開発実証拠点で、インフラや災害現場など実際の使用環境を再現した施設があり、無人航空機や災害対応ロボット、水中探査ロボットなどの性能評価や操縦訓練を行えます。今年は天候にも恵まれ、出展者も含めると2日間で1,200人以上の来場者がありました。

展示会場の様子

みちびきの展示ブース

みちびきの展示ブースでは、ACSLの国産ドローンにコアのCLAS対応受信機を搭載した機体「ChronoSky PF2」のほか、みちびきに対応した受信機を多数展示しました。

ドローン

コアのChronoSky PF2

展示ブース

受信機の説明を聞く来場者

CLAS対応受信機は、コアの小型受信機「Cohac∞ Ten」やMADOCAにも対応した防水・防塵受信機「Cohac∞ Ten+」、三菱電機のCLAS対応受信機「AQLOC-Light」、ビズステーションのアンテナ一体型受信機「RWS.DC」「RWX.DC」「RWS.DCM」「RWM.DC」を展示しました。SLAS対応受信機は、災危通報(災害・危機管理通報サービス)にも対応したコアの「Cohac∞ QZNEO」や、フォルテのGNSSトラッカー「FB2003」「FB2020」を展示しました。
また、みちびき対応の受信チップやモジュールは、CLASに対応したマゼランシステムズジャパンの新製品「Regulas」及び評価キット「MJ-3021-GM4-QZS-IMU」やセプテントリオの「Mosaic Go CLAS」、ユーブロックスジャパンの「NEO-D9C」「ZED-F9P」を展示しました。

展示品

上段左からコアのCohac∞ Ten+とCohac∞ QZNEO、Cohac∞ Ten、ビズステーションのRWS.DC、RWX.DC、RWS.DCM、RWM.DC、三菱電機のAQLOC-Light。下段左からセプテントリオのMosaic Go CLAS、マゼランシステムズジャパンのRegulasとMJ-3021-GM4-QZS-IMU、ユーブロックスジャパンのNEO-D9CとZED-F9P、フォルテのFB2003とFB2020

開会初日は、ビジネス向け展示会として企業・研究機関などの技術交流や商談などのプログラムが組まれており、展示ブースを訪れた来場者はすでにみちびきのことを知っている方が多く、対応製品について最新の情報を得られる機会として、受信機などの展示品は好評を博しました。

実演デモ

福島ロボットテストフィールド内をバスで巡り、企業や研究機関などの実演デモを見られる「実演見学バスツアー」では、コアと岩城農場、仙台高等専門学校がみちびきに関連した製品紹介やデモンストレーションを行いました。みちびき関連のバスツアーには2日間でのべ269人が参加しました。現地の模様をご紹介します。

▽コアによるChronoSky PF2の紹介

コアによるChronoSky PF2の紹介

コアは、無人航空機エリアの緩衝ネット付き飛行場にてChronoSky PF2の自動航行の実演を予定していましたが、強風のため飛行は取りやめとなり、静止状態のChronoSky PF2を見せながら機体の特徴について説明を行いました。

ドローンを使ったデモの様子

▽岩城農業によるデモンストレーション

岩城農業によるデモンストレーション

インフラ点検・災害対応エリア内にある、街中の交差点付近を再現した市街地フィールドでは、岩城農場の岩城善広氏がニンジン運搬ロボット「ニンジンロボット君1号」のデモンストレーションを行いました。このロボットは、CLAS対応受信機、及び衛星測位により方位を検出する「GPSコンパス」、ニンジン搬送用のカゴを搭載したクローラ型UGVで、ロボットを呼び出す端末「ココキテボタン」を押した場所まで自動運転で移動します。ロボットが呼び出した人の近くに正確にたどり着くと、ツアー参加者からは一斉に拍手が起きました。

運搬ロボットを使ったデモの様子

▽仙台高専によるデモンストレーション

仙台高専によるデモンストレーション

一方、インフラ点検・災害対応エリア内にある傾斜地フィールドでは、仙台高等専門学校が「CLAS海ごみ自動回収運搬ロボット」のデモンストレーションを行いました、この運搬ロボットは、悪路でも走破性の高いクローラと、大量のゴミを運ぶための大きなカゴを搭載しています。デモンストレーションでは、傾斜地フィールドに設けられた傾斜角15度の斜面を上ってから水平に移動し、再び斜面を下って元の場所に戻る様子を見ることができました。大量のごみを載せながらも斜面を正確に移動する運搬ロボットの姿に、見学者は興味深そうに見入っていました。

運搬ロボットを使ったデモ
講演会場の様子

イベント初日に開催した「みちびき(準天頂衛星システム)講演会 ~ドローン・UGV最前線2023~」には50人が参加しました。各講演の概要を紹介します。

▽開会挨拶

── 準天頂衛星システムサービス 石橋 海社長

石橋社長

冒頭、準天頂衛星システムサービス株式会社の石橋海・代表取締役社長が開会の挨拶を行いました。石橋社長は、ドローンやUGVはインフラの整備・点検や物流、測量など様々な分野で活用が広がっており、これらの成長分野にみちびきの利活用が進むことは非常に喜ばしく、さらに利用が加速するように推進に努力していきたいと抱負を述べました。

▽準天頂衛星システム「みちびき」の利活用と今後のサービス展開について

── 内閣府 和田弘人企画官

和田企画官

続いて内閣府宇宙開発戦略推進事務局の和田弘人企画官が登壇し、みちびきの概要や民間による事業創出に向けた各種の取り組みを紹介しました。また、今後のスケジュールとして、2023~24年度にかけてみちびき5~7号機を打ち上げる予定であり、バックアップ機能の強化や利用可能領域の拡大のため11機体制に向けての検討・開発にも着手したと報告しました。さらに、スプーフィング(測位信号のなりすまし)対策として2024年度から信号認証サービスを開始する予定や、同じく2024年度からMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)のアジア・オセアニア地域でのサービスを開始することも説明しました。

▽ChronoSky Eyes目視外点検見える化ソリューション

── 株式会社コア 黒川涼部長

黒川氏

株式会社コアGNSSソリューションビジネスセンター営業統括部の黒川涼部長は、同社が開発した目視外点検ソリューション「ChronoSky Eyes」を紹介しました。黒川部長はまず、みちびきのCLAS対応受信機を搭載したドローンで予備飛行させることにより点検現場の高精度な3次元地図を作成すると、同ソリューションの仕組みを説明しました。3次元地図上で点検の飛行ルートを作成して事前のシミュレーションを行い、それに沿ってドローンを対象物に近接飛行させるため、高度な操縦スキルは不要で、目視外エリアも含めて正確で安全なドローン点検を行えると特徴をアピールしました。また、点検したデータも、CLASの高精度位置情報とひも付けることで効率的なデータ検証と管理を行えるとしました。

▽みちびきの農業利用「ニンジンロボット君1号」

── 岩城農場 岩城善広氏

岩城氏

栃木県大田原市にて農業を営む岩城善広氏は、みちびきのCLASとGPSコンパスを活用して自律走行する自作のニンジン運搬ロボットを紹介しました。岩城氏は、GPSコンパスは2つのアンテナの相対的な位置関係から方位を求めるセンサーで、CLASの補強情報を使用すると正確に車体の向きを検出することができると説明しました。さらに、ニンジンロボット君1号を呼び出すための端末「ココキテボタン」にもCLAS対応受信機とアンテナを搭載することで、ボタンが押された際の正確な位置情報をニンジンロボット君1号に無線で通知して呼び出すことができると、運搬の仕組みを解説しました。

▽ドローンAI協調型CLAS海ごみ自動回収運搬ロボット

── 仙台高等専門学校 園田潤教授

園田教授

最後に仙台高等専門学校の園田潤教授が登壇し、海岸に漂着した海ごみを回収する「海ごみ自動運搬ロボット」について解説しました。これは、ドローンの空撮画像をもとにAI(人工知能)を用いて海岸漂着物を検出し、海ごみが多い箇所を特定して効率的に海ごみを回収すると共に、回収した海ごみを砂礫海岸や斜面などの指定運搬ルートをみちびきのCLASに対応したクローラ型ロボットを使って自動運搬するという仕組みです。園田教授は、走行性能評価では草地の凹凸のある斜面でも100kgのごみを搭載して傾斜角30度の斜面を上り下りできたと、その具体的な性能を示しました。また、実証実験では、自動運搬ロボット1台で30~40人程度の人員削減効果があることが確認できたと成果を説明しました。

講演会には展示会場やバスツアーに参加した人の多くが参加し、好評のうちに終了しました。

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