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[報告] CEATEC 2023でみちびきに関する講演

2023年11月13日

Society 5.0の実現を目指す展示会「CEATEC(シーテック)2023」(主催:一般社団法人電子情報技術産業協会)が2023年10月17~20日の4日間、千葉・幕張メッセで開催されました。会期中は連日2万~2万5千人(会期4日間の登録来場者数は89,047人)が会場を訪れ、「TOWARD SOCIETY 5.0」を掲げてさまざまな産業・業種の人と技術・情報が集い、「共創」による未来を描くことを目指して幅広い分野の講演が行われました。ここでは、最終日の10月20日に行われた講演「準天頂衛星システム『みちびき』のサービス概要と利活用事例」の内容を紹介します。

講演の様子

講演会場

内閣府の三上参事官が現在の宇宙開発状況を解説

三上参事官

みちびきのサービス概要、及び利活用事例に関する講演に先立ち、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室 室長)がみちびきを含めた現在の宇宙開発の状況を解説しました。三上参事官は、みちびきの衛星数が現在の4機から、間もなく7機体制になることを紹介し、「もし万が一アメリカのGPSが止まったとしても、みちびきだけで普段と同じサービスが提供できることを目指しています」と語りました。また、今年(2023年)6月に新たな宇宙基本計画が改訂され、バックアップ体制も含めて将来は11機体制を目指していることも紹介しました。
さらに、みちびきに対応した製品は現在、自動車や農機、ドローンなど約400以上あり、受信機が今後小さくなり、いずれはスマートフォンに内蔵される時代が訪れることを願っているとした上で、「みちびきを使う人の見込みが多くならないと技術開発も進まないので、政府としてもサポートしていきたい」と語りました。

講演会場

三上参事官の講演

みちびきで実現する安全な自律航行技術

── エイトノット 木村氏

エイトノット 木村氏

株式会社エイトノット代表取締役の木村裕人氏が登壇し、自社が取り組む船舶自律航行化の事業内容と最新の事例について語りました。同社が開発した小型船舶向け自律航行プラットフォーム「エイトノット AI CAPTAIN」は、タブレットを使って地図上で目的地を指定するだけでルートを自動設定し、目的地までの自律航行を可能にするシステムであり、障害物や他船の自動回避や遠隔モニタリングなどの機能も搭載しています。
使用している技術は、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)による船の位置情報測位と、光学カメラやLiDAR(レーザースキャナー)など自動車の自動運転に使われているセンサーを使用しています。これらを組み合わせることで、船の航行だけでなく離着岸も自動で行うことができます。

初期ターゲットは20トン未満の小型船舶で、既存の船舶に後付けする「レトロフィット事業」に加えて、システムを汎用化して新たに建造される船などにも広げるため、汎用化技術を作る研究開発プロセス自体をマネタイズする「プラットフォーム事業」を展開しており、最終的には自律航行システムのプラットフォーマーとして国内だけでなく海外への展開も目指しています。
木村氏は、CLASを使うことで正確な位置情報や方位の把握が可能となり、人の手による操作でも難しいとされる離着岸や夜間航行を自律航行船で実現するためにも、みちびきは不可欠であると語りました。また、CLASはRTK(リアルタイムキネマティック)と違って基準局が不要で自由度が高く、通信環境にも左右されないため、自律航行の技術を下支えしてくれている存在であるとしました。

このプラットフォームを搭載した自律航行小型EV船「Eight Knot I」が2023年1月、広島市において水上タクシーとして営業運航されました。また、船舶とドローンの協調制御にも取り組んでおり、航行中の自律航行船の上にみちびきの位置情報を取得したドローンが離発着する実証実験も行いました。木村氏は最後に、「船でも自動車と同じように自動運転に取り組んでいる会社があり、それをみちびきが支えていることを多くの方に知っていただきたい」と語りました。

広域災害発生時におけるみちびきを利用した洋上風力発電所の点検事業

── エアロダインジャパン 鹿谷氏

エアロダインジャパン 鹿谷氏

エアロダインジャパン株式会社で代表取締役CEOを務める鹿谷幸史氏は、みちびきのCLASに対応したドローンを活用した洋上風力発電設備の取り組みを紹介しました。洋上風力発電の点検では、船で近づいてからドローンを飛ばすケースが多くコストがかかることに加え、災害後の点検に時間がかかることも課題となっており、同社はその解決のため、陸上からドローンを飛ばして点検可能にする技術を目指しています。
そのためには数km沖合にある風車まで飛行し、損傷状況の確認に必要な画像を取得する必要があります。しかし、従来のGPSでは測位誤差が大きく、洋上ではRTKの補正情報を得るためのモバイル通信が行えない可能性もあるため、みちびきを使ってドローンの測位誤差を解消することにしました。

同社は、海岸沿いの陸地に建つ風力発電所を洋上風力発電所に見立てて、CLAS対応ドローンにより洋上を自律飛行して風車まで近づき、実際に撮影を行ってドローンによる災害復旧点検を行えるかを点検しました。ドローンにはCLAS対応受信機に加えてRTK対応受信機も搭載し、測位誤差を比較すると共に、撮影した画像が実際に風車の点検に使用できるかどうかも検証しました。
検証においてCLASとRTKの測位誤差を比較したところ、実用上は差がないことを確認でき、災害復旧時に大きな損傷の有無を確認する用途にも問題なく使えることを確認できました。なお、日本は風力発電所への落雷の頻度が高く、同社では、落雷痕の判別できるように赤外線カメラを用いた点検手法も開発中です。

このほか、東南アジアにおいて、船や海上施設へのドローンの自動着陸や、泥炭火災の消火活動における火元位置の特定などにCLASの活用を検討しているとのことです。鹿谷氏は最後に「みちびきの活用は今後大きく広がっていくと思います」とみちびきへの期待を表明しました。

準天頂衛星システムの概要と利活用

── NECソリューションイノベータ 神藤主席プロフェッショナル

神藤主席プロフェッショナル

続いてNECソリューションイノベータ株式会社 社会インフラソリューション事業部の神藤英俊主席プロフェッショナルが登壇し、みちびきの概要と利活用について説明しました。まずみちびきの概要として、準天頂軌道や他の衛星測位システムとの違い、提供サービスの詳細などを解説すると共に、農業やドローン、土木・建設、海上、鉄道などさまざまな分野で取り組んでいる共同実証の事例を紹介し、このような実証事業が多様な製品化につながっていると語りました。
また、福島県ロボットテストフィールドで開催された「ロボテスEXPO 2022」におけるCLAS対応ドローンやUGVのデモンストレーションを通じた利活用の広報活動や、2022年11月に東京・港区で開催された「イノベーションリーダーズサミット(ILS)における利活用企業によるピッチ(短時間のプレゼンテーション)によるビジネスマッチング活動などを紹介しました。

このほか最新の運転支援技術を搭載した自動車やドローン、災危通報(災害・危機管理通報サービス)に対応したETC2.0車載器やサイネージ、水上タクシー、ゴルフウォッチなどの対応製品を紹介しました。また、CLAS対応受信機の近年の動向についても触れ、サービス開始直後は400~500グラムの大型なものが多かったものの、近年は50グラム前後の小型・軽量な製品が増えてきており、価格も大きく下がっていると語りました。
さらに、今後は7機体制に移行することで、従来の南北に加えて西はインド、東は南太平洋のフィジーまで、みちびきの信号の受信可能範囲が広がることから、現在試行運用中のMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)のカバレッジ(利用可能範囲)も向上すると語りました。また、スプーフィング(なりすまし)対策に有効な信号認証サービスや、災危通報の機能拡張などの今後の予定についても紹介しました。

展示ブースでは対応製品の最新事情を紹介

会場全景

展示会場の全景

展示会場に設けられた「アドバンスドテクノロジー」「キーデバイス」「パートナーズパーク」「グローバル」「スタートアップ&ユニバーシティ」の5つの展示エリアのうち、みちびきのブースはアドバンステクノロジーのエリアに出展しました。
ここでは、みちびきのCLAS対応VTOLカイトプレーン(先端ロボティクス財団)や、海洋モニタリングを行うための「みちびき海象ブイ」(ブルーオーシャン研究所)、みちびきの災危通報に対応したデジタルサイネージ用の映像表示器「Signadia」(ジェイアール東日本企画)、コアのCLAS対応インフラ点検ドローン「ChronoSky PF2」のほか、各社が販売するCLAS対応受信機やSLAS対応受信機などを展示しました。

みちびきブースの様子

みちびきの展示ブース

展示ブースを訪れた幅広い分野の関係者にみちびきの概要や対応製品について知っていただいたほか、みちびきをすでにご存じの方には最新の対応製品に関する情報をご案内しました。以前よりもみちびきの対応製品の価格が下がっていることに驚く方もおり、最新事情を知っていただく機会としてご活用いただきました。

参照サイト

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