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[報告] SATEX2018で衛星測位や位置情報利用の講演

2018年10月18日

2018年9月26~28日の3日間、江東区有明の東京ビッグサイトで開催された「SATEX(衛星測位・位置情報展)2018」では、衛星測位技術や位置情報利用に関連する数多くの講演が行われました。その中から最終日の9月28日に行われた国土地理院 企画部 国際課の鵜生川(うぶかわ)太郎課長と、SATEX実行委員会の委員長でもある東京大学 空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授のお二人の講演を紹介します。

電子基準点の海外展開の取り組み

── 国土地理院・鵜生川太郎課長

顔写真

鵜生川氏

鵜生川氏は「国土地理院における電子基準点の海外展開の取り組み/電子基準点網及び準天頂衛星システムを活用した高精度測位サービスの海外展開に向けて」と題して講演しました。
全国約1,300カ所に設置された電子基準点のネットワークは、測量・地図作成を支援し、地殻変動観測を通じて防災にも役立てられています。鵜生川氏は、みちびきがカバーするASEAN諸国で電子基準点網整備への要望が高まっているとして、タイ、ベトナム、ミャンマー、バングラデシュにおける電子基準点の整備状況や技術協力などの取り組みを説明しました。
まず、20年以上の運用を経て蓄積された技術力とノウハウ、そしてみちびきを活用して更なる高精度化が見込めるという日本の電子基準点網の強みを確認した上で、ASEAN諸国の電子基準点網の構築状況を紹介しました。JICAと共同で行う専門家の派遣や技術研修受け入れなどを紹介して、「政府の一員として海外展開推進に取り組んでいる」「整備された高精度測量の基盤が、本邦企業の海外展開の一助となることを期待する」と語りました。

講演風景

鵜生川課長の講演

宇宙インフラを利用した産業の海外展開

── 東京大学・柴崎亮介教授

顔写真

柴崎氏

柴崎氏は「宇宙インフラを利用した産業の海外展開」と題して、農業分野における高精度測位の利用やシンガポールでのERP(エレクトリック・ロード・プライシング)の取り組みなど、G空間情報を活用したビビッドな事例を紹介しました。
さらにGNSSによる時刻同期が次世代携帯電話通信ネットワークやデータセンターを運用していく上で不可欠となりつつある現状を踏まえ、GNSS受信電波を妨害する「ジャミング」や模擬信号によってわざと誤った位置を与える「スプーフィング」などが安価な機器でも実現可能となっていると警鐘を鳴らし、GNSS信号認証の仕組みを整備する必要性を強調しました。

講演風景

柴崎教授の講演

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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