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[報告] みちびきウェビナーを開催しました

2023年01月25日

内閣府宇宙開発戦略推進事務局と準天頂衛星システムサービス株式会社は2022年12月8日、「みちびき(準天頂衛星システム)ウェビナー ~みちびき利活用最前線 in G空間EXPO 2022~」を実施しました。以下の各講演ごとに当日の動画をご覧いただけます。


内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長 上野麻子参事官

内閣府の上野参事官は、冒頭あいさつの後、みちびきのこれまでの開発の道のりや各サービスの概要などを紹介すると共に、MADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)や信号認証機能、災危通報(災害・危機管理通報サービス)の拡張といった今後のサービス展開について概要を説明しました。── 『2018年11月のサービス提供開始以降、みちびきは社会を支える基盤インフラとして着実な歩みを続けており、今後も7機体制での運用や提供サービスの拡充を通じ、引き続きみちびきの安定したサービスを提供していきたいと考えています』


NECソリューションイノベータ株式会社 神藤英俊・主席プロフェッショナル

NECソリューションイノベータの神藤・主席プロフェッショナルは、みちびきの利用拡大活動について最新の取り組みを紹介しました。── 『みちびきの利用拡大の業務は大きく分けて、情報収集・発信と、利用実証の推進の2つがあり、情報収集は、活用事例や業界動向の収集、過去の公募採択関係者へのフォローアップなどを通じて実施しています。情報発信は、展示会や講演会などのイベントやウェブサイトを活用しているほか、新たなユースケースを創出する「みちびきコミュニティ」の活動にも取り組んでいます。利用実証の推進は、みちびき実証事業公募や技術支援、事業化支援、好事例の発掘、受信機メーカーとのマッチング推進などを行っています』


東京海洋大学 学術研究院 久保信明教授

東京海洋大学の久保教授は、建設現場における測量手法として、みちびきの高精度測位を利用して行った実験結果を報告しました。── 『今回行ったのは、MADOCA-PPPによる基準点位置決めの可能性と、情報化施工現場を想定したCLAS(センチメータ級測位補強サービス)の実証実験、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)の静止・移動体での性能を評価しました。MADOCA-PPPの実験は、東京海洋大学とフィリピン大学の2カ所で精度を検証しました。CLASは、建設現場において重ダンプの運転席天井にアンテナを設置して、盛り土作業の連続運用中に測位を検証しました。SLASは、東京海洋大学の研究室屋上で取得した静止データによる結果と、自動車による移動体で取得した結果を検証しました。建設現場で行った実証実験のCLAS測位結果は非常に安定しており、現場での普及を期待しています』


株式会社シーエーシー ブロックチェーン推進グループ 薮下智弘グループ長

シーエーシーの薮下氏は、みちびきのSLASを活用してフードデリバリーサービス配達員の運転状況をモニタリングし、この運転情報と連動する保険システムを開発した実証結果を報告しました。── 『配達員の車両(バッグ)にSLAS対応のGNSS受信機を付けて位置情報を収集し、収集したデータをBluetoothでスマートフォンに転送します。スマートフォンからクラウド上のシステムに運転情報を送信し、ブロックチェーン上で共有・公開することで、運転実績によって保険料や報酬を変動させるシステムを構築しました。みちびきによる正確な位置情報と、ブロックチェーンによる改ざんが難しいデータ共有による2つのデータ信頼性を担保することで、社会問題ともなったフードデリバリーサービス配達員の危険運転問題の解決を目指します』


マゼランシステムズジャパン株式会社 岸本信弘・代表取締役

マゼランシステムズジャパンの岸本氏は、みちびきのセンチメータ級受信機を複数台使用して連携させ、正確な姿勢情報を取得する「マルチアンテナソリューション」の実証事業について報告しました。── 『CLASとMADOCA-PPPに対応した受信機を、移動する基準局(ムービングベース)とみなして、これに対応する1~3セットのスレーブRTK(リアルタイムキネマティック)移動局とを組み合わせると、移動体が停止している時やスリップが発生している状況でも正確な姿勢情報を出力できます。この情報を無人移動体やドローンなどの制御系へ送ることで、自動運転の精度や安定性・応答性を向上させることが可能となります。実用化に際しては精度、機能を維持しつつ、より簡素化、簡便化が必要であり、第三世代のみちびき対応CLAS受信機の開発に注力して、サイズ、コスト、消費電力の大幅な低減を図ります』


福島工業高等専門学校 ビジネスコミュニケーション学科 芥川一則教授

福島工専の芥川教授は、みちびきのCLAS対応受信機を搭載した小型電気自動車と、高精度三次元地図とを組み合わせて行った自動運転の実証実験を報告しました。── 『レーザースキャナーを搭載するドローンを使って取得した高密度点群データをもとに作成したMarhy 3D Map(機械可読高精度三次元地図)上でルートデータを作成し、そのルートをCLASの測位で辿ります。電気自動車は1人乗りの「PIUS」を使用し、アクチュエーターでハンドル制御できるようにして、福島ロボットテストフィールドのコースで実証実験を行いました。今回の実証で、センサーを使わなくてもルートを指定すればそのまま動くということが分かりました。みちびきとMarhy 3D Mapはとても相性が良く、センチメートル単位で制御できました。現在は標準化の作業を進めており、公開もしたいと考えています』


福島大学食農学類 窪田陽介准教授

福島大学の窪田准教授は、高精度測位技術を活用したさまざまな農業分野のロボット開発の取り組みを紹介しました。── 『みちびきのCLASを用いたキュウリの自律型運搬ロボットは、パイプハウスと集出荷複合施設を行き来するロボットで、複数のロボットを協調させて作業を効率化します。2023年に福島県南相馬市の農業施設で運用することを目指し、研究開発を進めています。農業機械はこれまで、オペレータ操作に使う単独作業の道具でしたが、次世代の農業用ロボットには作業者とコミュニケーションをとれる機能が付加されました。「使う道具」から「協力して働くパートナー」へと変わったのです。衛星測位の高精度化により、今まで導入困難だった環境下でもロボットが利用され、それがスマート農業の普及・進展につながると考えています』


JR東日本メディア株式会社 デジタルイノベーション部 開発戦略課 越 良二・担当課長

JR東日本メディアの越氏は、みちびきの災危通報に対応したデジタルサイネージ「Signadia(シグナディア)」を紹介しました。── 『Signadiaの初号機は2018年に発売され、改良を重ねて現在は3号機改良版を販売しています。Signadiaはインターネットではなく衛星から災危通報の情報を取得できるため、安定した情報提供を行えます。低消費電力で運用できるのが特徴で、今後は太陽光パネルと小型バッテリー、反射型ディスプレイを組み合わせて、自家発電運用のデジタルサイネージも提案する方針です』


株式会社KIS 公共医療クラウド事業部 公共ソリューション部 西村泰徳課長

KIS の西村氏は、みちびきのSLASを活用した「水道メーターナビゲーションシステム」を紹介しました。── 『SLAS対応の腕時計型端末と検針用端末をBluetoothで連携させて、水道メーターの位置情報管理とナビゲーションを行えるシステムです。水道メーター位置情報の取得にSLASを活用することで、位置情報整備のコスト低減や検診担当の引継ぎにおける負荷軽減を図ることができました。今後普及すれば、災害時の水道メーター調査や水道事業者間での広域連携推進への貢献も期待できます』


N-Sports tracking Lab合同会社 田中仁子・マーケティングマネージャー

N-Sports tracking Labの田中氏は、屋外スポーツにおける地理空間情報活用の取り組みを紹介しました。── 『ウインドサーフィンなどの水上スポーツで、選手の位置情報をトラッキングするシステムを展開しています。ウインドサーフィンのワールドカップでは全選手の速度をリアルタイムに表示させて、ドローン映像と共に3Dアニメ—ションを配信してイベントを盛り上げました。また、自社で開発したSLAS対応の選手用デバイスを使い、トライアスロンにおける分散非接触型(分散スタート方式)の競技開催やオンライン観戦の実験も行いました。選手にとってデバイスを装着するデメリットはありますが、一方でバーチャルレースや詳細データが分かる競技レポートなど新たな付加価値を提供できる結果が得られました。今後は各競技に適したデバイス開発を進め、選手の負担を減らす軽量小型化や、水上スポーツでも耐えられる完全防水型デバイスなどを開発していきます』


準天頂衛星システムサービス株式会社 石橋 海・代表取締役社長

準天頂衛星システムサービスの石橋社長が閉会挨拶をして、ウェビナーは終了しました。
── 『今回のウェビナーがみちびきを活用したソリューションをさらに広げ、皆さまのお役に立つことを期待しています。私どもも引き続きみちびきの利用拡大に尽力してまいります』

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