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[報告] みちびき(準天頂衛星システム)ウェビナーを開催しました

2021年10月26日

内閣府宇宙開発戦略推進事務局は10月12日、「みちびき(準天頂衛星システム)ウェビナー ~初号機後継機打上げ&みちびき利活用最前線~」を実施しました。当日はみちびき初号機後継機やみちびきの活用事例を紹介する講演に加えて、みちびきの将来についての意見を交換し合うパネルディスカッションを行いました。

準天頂衛星システムと初号機後継機打ち上げについて

内閣府宇宙開発戦略推進事務局 参事官/準天頂衛星システム戦略室長 上野麻子

内閣府の上野参事官

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の上野麻子参事官(準天頂衛星システム戦略室長)が、準天頂衛星システムの概要及び、今回打ち上げる初号機後継機について解説しました。初号機後継機の打ち上げで今後のみちびきのサービス継続が担保されると共に、2~4号機と同様にMADOCA(高精度測位補正技術)用のL6E信号も配信されます。さらに衛星の設計寿命も従来の10年から15年へ延びました。2023年の7機体制に向けた展望やみちびきの利活用状況、対応製品、みちびき公募実証事業の概要なども紹介しました。

みちびき初号機後継機が拓く高精度測位

三菱電機株式会社 鎌倉製作所 主管技師長 廣川類氏

三菱電機・廣川氏の講演

三菱電機株式会社の廣川類氏(鎌倉製作所 主管技師長)が、みちびき初号機後継機の技術面を解説しました。初号機後継機は全長約19mで、乾燥質量は約1.6トンです。姿勢計測を行うスタートラッカーや、姿勢制御を行うリアクションホイールといった装置を搭載しています。搭載する時計は、誤差が約100万年に1秒の正確さを誇る高精度ルビジウム原子時計であり、正確な測距信号を生成します。廣川氏は、みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)が自動車の先進運転支援システム(ADAS=Advanced Driver-Assistance Systems)や船舶の自動接岸システム、農機の自動運転、配送向けドローンなどで利用が進んでいるとした上で、CLASの仕組みや現状の課題と対応を説明すると共に、さらなる性能向上や国際標準化、利用推進活動など今後の展望も紹介しました。

自動運転(レベル3)の実用化 -交通事故ゼロ社会の実現を目指して-

株式会社本田技術研究所 先進技術研究所 知能化領域 兼 AD/ADAS研究開発室 エグゼクティブチーフエンジニア 杉本洋一氏

本田技術研究所・杉本氏の講演

株式会社本田技術研究所の杉本洋一氏(先進技術研究所 知能化領域 兼 AD/ADAS研究開発室 エグゼクティブチーフエンジニア)が、今年3月に発売した新型レジェンドに採用された先進技術「Honda SENSING Elite(ホンダセンシングエリート)」を解説しました。同技術は、みちびきのサブメータ級測位補強システム(SLAS)による高精度測位と高精度地図を組み合わせて、自動車線変更の誘導支援や前後・左右方向の制御、高速道路の料金所の検知などを実現しました。さらに自動運転レベル3の渋滞運転機能の実現にもSLASが貢献しています。

みちびきを活用したリアルタイムスポーツトラッキング最前線

N-Sports tracking Lab合同会社 代表 CEO 横井愼也氏

N-Sports tracking Labの横井氏

N-Sports tracking Lab合同会社の横井愼也氏(代表 CEO)が、みちびきを活用したリアルタイムスポーツトラッキングの仕組みを紹介しました。同社はウインドサーフィンなどの選手向けにパフォーマンス分析サービスを提供しているほか、洋上のレースを陸上からも観戦できるよう、リアルタイムに選手の位置情報をマップ上で可視化するシステムを提供するなど、広域スポーツのエンターテインメント支援事業を展開しています。
ウインドサーフィンのワールドカップを想定した実証実験では、みちびきのSLAS対応受信機を選手が装着し、スタート/ゴールのリアルタイム自動判定を行ったほか、ドローンによる自動撮影、小型自律ブイの実証実験なども行いました。また、今夏行われた大規模大会では400艇もの船舶の位置情報をリアルタイムに把握したほか、災害・危機管理通報サービス(災危通報)に対応することで選手の安全対策も行いました。

add michibiki more life 高精度空間情報 [みちびき]の社会実装による、豊かな生活の実現をめざして

株式会社フォルテ 営業部 スペシャリスト 阿部裕氏

フォルテ阿部氏の講演

株式会社フォルテの阿部裕氏(営業部 スペシャリスト)が、みちびきのSLASに対応したGNSSトラッカーを紹介しました。新たに発売されたFB2020は、USB Type-C及びマグネット充電に対応し、バッテリー容量を従来機種(FB2003)よりも増量し、かつ低消費電力を図ることで持続時間を向上しました。また、加速度センサーやジャイロセンサー、地磁気センサーの生データを送信可能としたほか、マルチパス除去機能を強化して測位精度を向上させ、エフェメリスの拡張機能を強化して測位時間を短縮しました。同社は、LPWA(Low Power Wide Area-network、低消費電力による長距離の無線通信)のSigfoxに対応したL1S対応の試作機なども開発しています。

パネルディスカッション『準天頂衛星システム「みちびき」が変える社会の価値 ~測位を支える側と利用する側~』

モデレータ:一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)常務理事 坂下哲也氏/パネリスト:N-Sports tracking Lab合同会社 代表 CEO 横井愼也氏、株式会社フォルテ 営業部 スペシャリスト 阿部裕氏、日本電信電話株式会社 研究企画部門 モビリティプロデュース 担当部長 深田聡氏

坂下氏、深田氏、横井氏、阿部氏の画像

坂下氏(左上)、深田氏(右上)、横井氏(左下)、阿部氏(右下)

後半は、講演に登壇したN-Sports tracking Labの横井氏、フォルテの阿部氏に、日本電信電話株式会社(NTT)の深田聡氏(研究企画部門 モビリティプロデュース 担当部長)を加えてパネルディスカッションを行いました。モデレータは一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の坂下哲也氏(常務理事)が務めました。
坂下氏は冒頭、これまでの衛星測位技術の変遷を紹介した上で、2024年開始予定のみちびき7機体制に言及し、今後みちびきを使って何ができるのか、そしてみちびきによって何が変わるのか、を問題提起しました。また、横井氏がみちびきを“利用する立場”から、阿部氏が“支える立場”から、そして深田氏が“社会全体を変えていく立場”から、それぞれ話題提供を行いました。
話題提供では、横井氏は先の講演内容の補足として、衛星測位によりスポーツにおけるタイム計測を高精度に行う取り組みを説明しました。阿部氏は、GNSS端末は高精度化・小型化が求められ、今後の性能向上がDX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術による生活の変革)支援につながっていくとしました。NTTの深田氏は、多様なセンシングデータをリアルタイムに統合してさまざまな未来予測を可能にする「4Dデジタル基盤」を解説し、高精度な位置情報や3D地図データベース、GNSS受信機の演算処理をクラウドで行い精度を高める「クラウドGNSS測位アーキテクチャ」などの取り組みがもたらす次世代モビリティ社会のビジョンを提示しました。
3人からの話題提供を踏まえて坂下氏は、受信機の低廉化は産業界での利活用を促進するのか、低廉化に向け今後どのようなプロセスが必要か、みちびきが私たちの暮らしにさらに浸透するために今後もっともポイントとなるのは何かといった課題を示し、それぞれについて活発な議論を行いました。

終演挨拶

準天頂衛星システムサービス株式会社 代表取締役社長 鎌形亨

準天頂衛星システムサービスの鎌形社長

準天頂衛星システムサービス株式会社の鎌形亨代表取締役社長が締めくくりの挨拶を行い、今後も引き続き同様のウェビナーを続けていく方針を表明して終了しました。

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