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[報告] GNSS・QZSSロボットカーコンテスト2023を開催

2023年11月27日

衛星測位機能を搭載したロボットカーによる自律走行を競い合う「GNSS・QZSSロボットカーコンテスト2023」の審査会が2023年10月22日、東京海洋大学・越中島キャンパス(東京・江東区)のグラウンドで行われました。
ロボットカーコンテストは一般社団法人測位航法学会が主催し、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構、公益社団法人日本航海学会 GPS/GNSS研究会、準天頂衛星システムサービス株式会社の3者が共催として加わっています。みちびき等のGNSSを利用する研究者・技術者の相互交流や、大学・高専・専門学校・高校等の学生に対する衛星測位の基礎技術修得の機会提供などを目的として毎年行われており、開催は今年で17回目となります。

グラウンド全景

会場となったグラウンド

会場では10チームが出走

コンテストは、昨年に引き続きリモート参加とリアル(現地)参加が混在するハイブリッド形式で行われました。エントリーしたのは大学生や高専生など計14チームで、そのうち3チームがリモートで参加し、10チームが会場で出走しました(1チームは棄権)。

ルール説明図

4つのパイロンを周回する「ダブルパイロンREIWA」(公式サイトより)

ルールは、メインとなるパイロン(指標となる置物)2つ、サブのパイロン2つの計4つのパイロンを周回して得られるポイントを競う「ダブルパイロンREIWA」です。メインパイロンは約20mの間隔で設置され、サブパイロンは2つのメインパイロンを結ぶ直線上でメインパイロンから内側に1m離れた位置に配置されます。ロボットカーは自律走行によってメインパイロンを8の字型に周回し、メインパイロンを通過したり、パイロン間を結ぶ中心線を通過したりするたびに通過ポイントが加算されます。
また、メインパイロン周回ポイントを獲得した上で競技時間内にセンターサークル内に停止してアピールするとボーナスポイントが加算されます。競技には3分の制限時間が設けられ、ポイントを数多く得るにはスピードと正確さのバランスを調整する必要があります。
なお、リモート参加者は、ダブルパイロンREIWAのルールに準じたコースを周回する動画を事前に撮影して投稿し、それをもとに審査して、現地参加者とは別に表彰を行いました。

競技中のスナップ

コンテストにて競技中の様子

計8チームがCLASを採用

ロボットカーは、主な航法センサーとしてGNSS受信機を搭載し、マイコンの制御プログラムに従って自律的に走行します。単独測位だけでなく、RTK(リアルタイムキネマティック)やみちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)による測位を採用することも可能です。近年CLAS受信機の小型化、低価格化が進んでおり、機器構成がシンプルになり、搭載機器類・重量が減ることなどを理由として、今年は測位方式にCLASを選ぶチームが大幅に増え、オンラインを含めると全体の半数以上の計8チームがCLASを採用しました。

SatNavCar

優勝した小山工業高等専門学校「SatNavCar」

QueenBee

準優勝の名城大学「QueenBee」

足パン PANDA★

3位となった愛知県立愛知総合工科高等学校専攻科「足パン PANDA★」

GNSS受信機以外にジャイロセンサーや地磁気センサーの搭載も認められています。競技中の手動による遠隔操作は不可で、ハードウェアとソフトウェア共にすべての自律制御部がロボットカーに搭載されている必要があります。また、ロボットカーのサイズは高さ40cm以下、幅50cm以下、奥行50cm以下と定められており、「走行に必要なロボットカーの機器一式が旅客機(国内線)の機内持ち込みサイズに収まること」という規定もあります。
参加者にはラジコンカー模型を流用した機体を使う人が多くいますが、中には機体を一から自作する人もいます。今回会場となった東京海洋大学のグラウンドは、普段はサッカーやラグビーなどで使われることが多く、凹凸が多いため出場するロボットカーには不整地に対する走破性も求められます。

K-∞/網嶋号2023

神戸市立工業高等専門学校/小矢研究室「K-∞(エイト)」(左)、明治大学理工学部 電気電子生命学科/網嶋研「網嶋号2023」(右)

阿蘇不知火号 CLAS 22 改/Salesio-one

熊本高専Makers「阿蘇不知火号 CLAS 22 改」(左)、サレジオ高専情報通信工学研究室「Salesio-one」(右)

CTO δ-type/シャカリキマッスル号

小山工業高等専門学校 機械工学科CTO「CTO δ-type」(左)、日本工学院北海道専門学校チームシャカリキ「シャカリキマッスル号」(右)

ゼロツー

新居浜工業高等専門学校 安里研究室「ゼロツー」

優勝は小山工業高専の「SatNavCar」

小山工業高専の2人

優勝した小山工業高専の2人(右)。左は実行委員の熊本高専・入江博樹教授

この日優勝したのは、ユーブロックスのRTK対応受信機「ZED-F9P」を搭載した小山工業高等専門学校の「SatNavCar」で、オフロード用の大きなタイヤで走行し、自作のグラウンドプレーン(金属板)上にアンテナを搭載し、高速かつ安定した走りを実現しました。小山工業高専の加賀谷龍史さんは、「直線で加速するように設定し、バッテリーの電圧を上げることで高速で走れるようにしました」と開発の工夫点を説明しています。
準優勝は、同じくユーブロックスのZED-F9Pを搭載した名城大学の「QueenBee」。3位はセプテントリオのCLAS対応受信機「Mosaic-CLAS」を搭載した愛知県立愛知総合工科高等学校専攻科の「足パン PANDA★」が受賞しました。

名城大学のメンバー

準優勝を獲得した名城大学のメンバー

審査員特別賞は、明治大学理工学部 電気電子生命学科/網嶋研の「網嶋号2023」と、熊本高専Makersの「阿蘇不知火号 CLAS 22 改」が受賞しました。この2チームは、いずれもセプテントリオのMosaic-CLASを受信機に採用してロボットカーを走らせました。明治大学の髙島信之介さんは、「Mosaic-CLASは誤差1cm以下と精度が高く、実装も簡単で扱いやすかった」とコメントしています。
このほか、リモート参加では福島県立平工業高等学校情報工学科の「平工J(へいこうジェイ)」が審査員特別賞を受賞しました。また、優勝・準優勝・3位・審査員特別賞の受賞者以外のチームにも敢闘賞が贈られました。

集合写真

表彰式後に全員でガッツポーズ

このコンテストには、スポンサーとしてアイサンテクノロジー株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、小峰無線電機株式会社、古野電気株式会社、CQ出版株式会社、ユーブロックスジャパン株式会社、セプテントリオ、岩城農場の8社が加わっています。各社からの賞品として、小峰無線電機やユーブロックスのGNSSアンテナ、セプテントリオのGNSS受信機やソニーのGNSS対応ワンボードマイコン、CQ出版の書籍「センチメートルGPS測位 F9P RTKキット・マニュアル」やGNSS受信機のセット「トラ技RTKスターターキット基地局・移動局(u-blox NEO-M8P×2)」のほか、GNSSを活用したスマート農業に取り組む岩城農場(栃木・大田原市)からは米10kgが贈呈されました。

安田会長

安田会長

主催者を代表して表彰式に参加した測位航法学会の安田明生会長(東京海洋大学名誉教授・工学博士)は、「衛星測位は世界中で重要な技術として注目されており、ロボットカーで培った技術を活かして皆さんの力で住みやすい快適な世の中を実現していただきたい」と語り、コンテストを締め括りました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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