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[報告] ILS 2023でピッチやブース展示を実施

2024年01月15日

内閣府は、2023年12月4~7日に東京・港区の虎ノ門ヒルズ森タワーで開催された「イノベーションリーダーズサミット(ILS)2023」(運営:株式会社プロジェクトニッポン、後援:経済産業省)の初日と2日目のイベントに参加しました。
ILSはアジア最大規模のオープンイノベーションマッチングイベントで、国内外の主要機関が選出した有望スタートアップがピッチ登壇やブース展示などを通じて大手企業との商談を行います。ここにアドバイザリーボードとして参加した内閣府は、初日の12月4日にみちびきの利活用企業による「みちびきスタートアップピッチ」を開催し、みちびきを活用したビジネスを展開する5社がピッチ(短時間のプレゼンテーション)を行いました。また、ピッチに登壇した5社が12月4日と5日の2日間、展示ブースにてそれぞれのビジネスアイデアや提供サービス・製品を紹介しました。

ピッチ会場

ピッチ会場の様子

みちびきをハブとした新事業創出に期待

三上参事官

三上参事官

ピッチの開会にあたり登壇した内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室長の三上建治参事官は、みちびきのサービス開始から5年が経ち、多くの対応製品やサービスが市場に投入されている中で、今回のピッチに参加した5社は位置情報を活用した新たなユースケースを創出した企業であると紹介しました。そして今回のイベントをきっかけに、DX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートシティの実現に必要なデータを提供する基礎インフラのシステムとしてみちびきを知っていただき、これをハブとして企業と企業、企業と個人が1つになってコラボレーションし、新事業が生まれることを期待すると挨拶しました。

みちびきの提供サービスや今後を解説

和田企画官

和田企画官

内閣府宇宙開発戦略推進事務局 準天頂衛星システム戦略室の和田弘人企画官は、みちびきの特徴や、みちびきが提供するCLAS(センチメータ級測位補強サービス)、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)、MADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)などのサービスの概要を解説し、農業や土木・建設、ドローン、海上などさまざまな分野において新たな製品やサービスが生み出されている状況を解説しました。今後の展開については、7機体制の構築に向けて2023~24年度にかけてみちびきの5~7号機を打ち上げ予定で、11機体制に向けた検討・開発に着手していることも紹介しました。また、測位信号に含まれる航法メッセージが本物であることを証明する信号認証サービスや、MADOCA-PPPの実用サービスを提供開始であることや、災危通報(災害・危機管理通報サービス)がJアラート(全国瞬時警報システム)やLアラート(災害情報共有システム)に対応予定であることも説明しました。

ドローン利活用の現状と展望を紹介

曽谷社長

イームズロボティクスの曽谷氏

イームズロボティクス株式会社の曽谷英司・代表取締役社長は、同社が行うドローンを活用したソリューション開発の現状を紹介しました。同社は日本発のドローンメーカーとして陸・海・空すべてのシーンで活用できる機体を開発しており、型式認証取得予定の機体も開発中です。さまざまな企業と協力して、ラストワンマイル配送やインフラ点検事業、警備事業などの分野においてドローン利活用の推進を図っており、精緻な飛行や複数台の同時飛行を実現するために位置精度が重要であるとして、みちびきの高精度測位が必須であるとしています。現在の取り組みを進めることで、ドローン同士が通信して衝突回避をしながら編隊飛行する世界を2030年までに実現することを目標にしており、より大型で精度の高いマルチコプターや長距離飛行が可能なVTOLドローンの開発を進めています。また、他社との差別化として、みちびきのサービスの提供範囲であるアジア圏をターゲットに海外展開も目指していると語りました。

CLAS活用の小型船舶向け自律航行技術を開発

木村CEO

エイトノットの木村氏

株式会社エイトノットの木村裕人・代表取締役CEOは、同社が取り組む船舶の自律航行化の取り組みを説明しました。同社が開発した自律航行プラットフォーム「エイトノット AI CAPTAIN」は、地図上で目的地を指定することでルートが自動的に設定され、無人で自律航行を行えるシステムで、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)の高精度測位により障害物・他船の回避や定点保持、離岸・着岸を自動で行えるほか、遠隔モニタリングも可能です。このプラットフォームを搭載した自律航行水上タクシーが今年(2023年)1月に広島で商用運行を行ったほか、船舶とドローンの協調制御にも取り組んでおり、みちびきの高精度位置情報を活用して、航行中の自律航行船の上にドローンが離発着する実証実験も行いました。木村氏は、RTK(リアルタイムキネマティック)と比較した場合のCLASの利点として、基準局が不要で自由度が高いことと、通信環境に左右されず利用できることの2点を挙げており、これを活用した自律航行技術により海から新しい経済圏を創出することを目指していると説明しました。

SLASを活用した配達員保険システム

薮下グループ長

シーエーシーの薮下氏

株式会社シーエーシーの薮下智弘氏(インテグレーション統括本部 基盤P&S部 ブロックチェーン推進グループ長)は、同社が展開するみちびきの高精度測位とブロックチェーン技術を活用したフードデリバリーサービスの配達員向け保険システムについて説明しました。このサービスは、みちびきのSLASに対応したGNSS端末を配達車両に搭載し、配達中の位置情報を収集してブロックチェーン上で運転情報を共有・公開するシステムで、運転実績により保険料や報酬を変動させて、配達員のルールを守る意欲を向上させる点が特徴です。ブロックチェーン技術により、競合するフードデリバリーサービスの業者間で信頼性のある情報共有が可能となります。また、位置情報の取得にSLASを活用することで、逆走運転などのルール違反を判定でき、事故率の低減や、より安全なルートの共有が可能となります。薮下氏は、まず地域や業者を限定した上でスモールスタートを図る予定だと話しました。

スマートフォンに装着できるGNSS端末

高安代表取締役

レフィクシアの高安氏

レフィクシア株式会社の高安基大・代表取締役は、スマートフォンに取り付けて高精度測位が可能となるGNSS端末「LRTK Phone」を紹介しました。これはアンテナ一体型のGNSS端末で、スマートフォンに装着可能なため携帯性に優れている点が特徴です。これまではRTK(リアルタイムキネマティック)に対応した製品を販売していましたが、12月からCLASとRTKの両方に対応した新製品が発売されます。専用の「LRTKアプリ」を使ってCLASによる高精度な位置情報を取得でき、位置情報はクラウドに送信してウェブ上で参照したり、CSV形式でダウンロードしたりできます。高安氏は、点検業務において補修箇所の写真を高精度な位置情報と共に記録したり、目印位置をAR表示させたりできるほか、撮影場所へのナビゲーション機能や、点群データへの位置情報の付加、土量計算なども行えるなど、製品の付加機能もアピールしました。

ドローンによる洋上風力発電設備の点検

鹿谷社長

エアロダインジャパンの鹿谷氏

エアロダインジャパン株式会社の鹿谷幸史・代表取締役社長は、ドローンを活用した同社のさまざまなDXの取り組みを紹介した上で、みちびきを利用した実証事業として島根県で行った、CLAS対応ドローンを活用した洋上風力発電設備の点検事業について説明しました。この実証では、海岸沿いの陸地に建つ風力発電所を洋上風力発電所に見立てて、CLAS対応ドローンが洋上を自律飛行して風車に近づき、写真撮影を行いました。それにより災害復旧時の点検に問題なく使えることを確認できたほか、現在、落雷痕の判別までできるように赤外線カメラを用いた点検手法も開発中です。鹿谷氏は、ドローン物流で船や海上施設への自動着陸を行う場合や、東南アジアにおいて泥炭火災の消火活動の際の火元位置の特定、プラント点検におけるデジタルツイン化などにも高精度な位置情報が重要な役割を果たすと考えており、CLASの活用を検討していると話しました。

各企業の提供サービスを展示ブースで紹介

展示ブース-1
展示ブース-2

みちびき関連の展示ブース

ピッチに登壇した5つの企業は、展示ブースでそのビジネスアイデアや提供サービスを紹介しました。また、イームズロボティクスはみちびき対応ドローンの実機を、レフィクシアはLRTK Phoneや、CLASに対応したバッテリー・アンテナ一体型受信機「LTRK Pro2」の実機をブースに展示しました。会場にはオープンイノベーションに関心のある人などが数多く訪れ、みちびきブースの展示物やパネルに興味を惹かれて立ち寄る人や、スタートアップピッチの講演がきっかけで詳細な話を聞きに来る人などで盛況となりました。

ドローンの展示

イームズロボティクスのみちびき対応ドローン

内閣府では、みちびきを活用した新たなコラボレーションや先進的なビジネスが創出されること、そしてそこから「みちびきの仲間」の輪が大きく広がっていくことを期待して、今後もこのようなイベントへの参加を企画していきます。

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