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[報告] G空間EXPO2026でみちびきのセミナーと展示

2026年03月16日

2026年1月28~30日の3日間、東京ビッグサイトにおいてG空間EXPO2026(主催:G空間EXPO運営協議会、共催:日刊工業新聞社)が開催されました。今年が15回目となるG空間EXPOは、地理空間情報が高度に活用され、社会課題の解決に貢献する社会の実現を目指して2010年から行われています。主催の運営協議会には、内閣府のほか国土地理院、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、公益社団法人日本測量協会、一般社団法人地理情報システム学会など産官学の各団体が連携して加わっています。
内閣府宇宙開発戦略推進事務局と準天頂衛星システムサービス株式会社は、1月28日にセミナー「準天頂衛星システム『みちびき』早期の7機体制実現を目指して ~日本のG空間インフラの「安全・安心」を支えるサービス~」を開催したほか、会期中を通してみちびきブースを出展しました。

会場外観

東京ビッグサイト

三上参事官

1月28日の出展者セミナー「準天頂衛星システム『みちびき』早期の7機体制実現を目指して」では冒頭、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室長)が開会挨拶を行いました。三上参事官は、2025年12月にみちびき5号機が喪失したことに言及し、できるだけ早く事故原因を究明し、衛星及びロケットを健康な状況に戻してみちびき7号機の打上げを行いたいと表明した上で、「このセミナーに登壇するのは日頃からみちびきを利活用している企業の方々であり、我々も説明を聞くたびに『これは面白い』『いろいろな分野に展開してほしい』と考えている人たちです。今日の話を聞いて皆さまが何かを感じたら、ぜひその感想を横展開してください」と呼びかけました。

地籍調査にCLASとLiDAR SLAMを活用した実地検証を報告
松本コンサルタント菅野氏・今本氏
菅野氏と今本氏

株式会社松本コンサルタント国土調査部の菅野雄一氏(主任研究員)と今本佳歩氏(技術員)が、地籍調査にCLASを活用した取り組みを紹介しました。同社は地籍調査の新手法として、CLAS(センチメータ級測位補強サービス)及びLiDAR SLAM(レーザー計測による自己位置推定及び点群取得)の活用を進めています。

講演1-1

2023~25年にかけて自社の敷地内にある2級基準点相当の精度検証点において、CLASを2カ月おきに1日受信し、9~17時の時間帯に130~140セット(1セットは10秒)の観測を行いました。その結果、観測値はCLASの仕様値を満たしましたが、時おり誤差の大きい値が含まれたため、セット間較差による判定で異常値を除外することにより、精度のよいものだけを使用することにしました。

講演1-2

さらにCLASを用いた単点観測法による筆界点の測量(一筆地測量)のマニュアル案を作成し、2023年と2025年に千葉県や徳島県にて測量を実施しました。2025年の実証では、精度の評価基準は国土調査法施行令(別表第四)を基準として、CLAS観測値(2セットの平均値)を地籍成果値と比較して精度を検証しました。その結果、圃場整備後の農地(千葉県長生村)の筆界点209点では、RMS誤差が3.5cm(甲三の基準は15cm以下)で最大誤差が7.0cm(甲三の基準は45cm以下)と、基準値を十分に満たす精度が得られました。次に衛星測位の条件の悪い山間部の谷間(徳島県三好市)の筆界点202点で測量を行ったところ、RMS誤差は4.0cm(乙一の基準は25cm以下)で最大誤差22.1cm(乙一の基準は75cm以下)と、こちらも基準値を満たす精度となりました。

講演1-3

これらの結果から、CLASを用いた筆界点の測量は、上空視界をある程度確保できれば必要な精度を満たせることが確認できました。CLASであれば携帯電話のつながらない地域でも使用でき、TS法に比べて基準点が少なくて済むため基準点設置作業の削減や人員削減を期待できます。
さらに樹木下など上空視界の確保が困難で電話も通じない山間部などにおいて、上空視界を確保できる箇所にCLASを使って標定点を設置し、樹木下の筆界点はLiDAR SLAMで計測する手法も検証しました。LiDAR SLAM技術を用いた公共測量マニュアルによると、標定点の誤差は水平・標高とも標準偏差10cmとされており、CLASの精度で十分対応可能です。

講演1-4

同社は2025年、徳島県佐那河内村の農地部及び樹木下の林道、千葉県南房総市の道路予備山林内においてCLASを用いた標定点設置の検証を行いました。1観測点当たり本観測2セットと点検観測2セットの計4セット(南房総市では本観測1セットと点検観測1セット)を実施し、その平均値を成果値としました。その結果、セット間較差の制限値は水平3cm以内、標高6cm以内となり、標定点として十分な精度が得られました。この結果を踏まえて、現在CLASによる標定点測量の仕様案を検討すると共に、作業マニュアル案の作成にも取り組んでいます。

スマート保安推進の取り組みと実証事業の成果
北海道ガス 船水氏
船水氏

北海道ガス株式会社の船水孝洋氏(技術開発研究所 主査)は、2024年度みちびきを利用した実証事業で実施した「CLASとLiDAR SLAMのハイブリッド運用による都市ガス供給エリアでのGNSS活用標準化に向けた実証」の取り組みを説明しました。同社はGNSSを活用して埋設ガス導管の漏洩検査を行う「ガス導管漏洩検査管理システム」を開発・導入し、ネットワーク型RTK(リアルタイムキネマティック)測位により位置情報及び検査履歴を取得して、検査結果の記録・集計・報告の自動化を行っていますが、RTK測位は継続的にランニングコストが発生する上、高層建物が多い都心部におけるマルチパスによる誤差が課題となっています。

講演2-1

そこで、ランニングコストが不要でセンチメータ級の高精度測位が可能なCLASを導入し、それにLiDARを組み合わせることで、GNSSが不安定な環境下での測位品質低下を補完しようと考えました。実証では、郊外エリア(JR森林公園駅周辺)、繁華街エリア(JR新札幌駅周辺)、都心部エリア(JR札幌駅周辺)の3エリアにおいてCLASの測位精度検証を実施し、大部分のエリアで高精度測位が可能であると確認できました。また、ガス導管漏洩検査管理システムへのCLASの活用検証において、都心部・繁華街・郊外・近郊のいずれのエリアでも現在のネットワーク型RTK測位と同等の検査精度を実現できると確認できました。

講演2-2

なお、測位品質低下エリアを特定すると共に傾向を分析したところ、都心部では測位品質の顕著な低下傾向が確認できたほか、その他のエリアにおいても高層マンションや街路樹などの環境要因によって局所的に測位品質が低下する箇所の存在を確認しました。さらにCLASにLiDARを組み合わせてマップマッチングによる自己位置推定の精度検証を行ったところ、CLAS単独で行った時と比べて、LiDARと組み合わせた方が都心部において高精度測位が可能であると確認できました。

講演2-3

CLASの強みは運用コストの低さと災害時に強い点にあるとして、今後はCLASとネットワーク型RTKのそれぞれの強みを活かして、用途・目的により最適な測位手法を適用していく方針で、現場にも実装していく計画です。また、小型・軽量・安価なシステムを目指し、汎用の低コストLiDARを用いて実運用に耐える精度をどこまで確保できるかの検証も実施しています。同社は高精度な位置情報を基盤とした安心・安全なまちづくりを目標に掲げ、地下埋設インフラの見える化を通じて都市全体の維持管理・安全管理の高度化を目指しています。

AR作業補助アプリにおけるみちびきの活用事例
Root 岸氏
岸氏

株式会社Rootの岸圭介氏(代表取締役)は、AR(拡張現実)作業アプリにみちびきの高精度位置情報を活用する取り組みについて説明しました。同社は2024年から、AR技術を活用した作業補助アプリとして、農業向けの「Agri-AR」や、建築・森林・防災など農業以外の分野に向けた「Work-AR」を提供しています。同アプリはスマートフォンとスマートグラスのどちらでも利用可能で、高精度位置情報ではすでにRTK(リアルタイムキネマティック)測位を活用する方式を実装しており、今後は価格や利用可能エリアの観点からみちびきのCLASやMADOCA-PPPの活用を進める計画です。

講演3-1

農業ではスマートグラスに平行直線ガイドを表示できるほか、畝の位置を決めるためのシミュレーションや距離・面積・体積の計測、作物のサイズ計測、データ保存などの機能も備えており、AI推論により計測する作物の自動検出も可能です。また、ARで看板を立てることもでき、位置情報と共にテキストを登録しておけば、どこの場所に何を植えたかを確認できます。このほか、林業において樹木の幹径の計測にLiDARを利用して自動的にスキャンしたりすることも可能です。農地分析サービス「xarvio」からエクスポートした可変施肥マップを、高精度位置情報を利用して圃場に誤差数cmの精度でAR表示することもでき、スマートグラスで確認しながら施肥を調節できます。

講演3-2

今後は、このような機能を持つAgri-AR/Work-ARにCLASを組み合わせることを検討しています。特に海上での利用において、養殖業者が湾内において作業する際の補助として使ったり、環境調査を行う際の航路や目標物を海面上にAR表示したり、組合が管理する各種境界線、岩場や危険区域、目標物などをARで可視化するなど、様々な使い方が可能で、作業効率化や安全確保、トラブル防止などにも効果が期待されます。また、各種データをAR表示でき、水温や流速・流向、水位などの海象データのほか、獣害データや測量データ、移動ルートなどを表示できます。

講演3-3

岸氏は、CLAS対応の受信機とアンテナが低価格化し、RTKと比較して通信費も不要となることからCLASに大きく注目しており、作業効率化のための効果的な使い方を探していきたいと語りました。

ダム建設現場におけるCLAS測位性能評価
鹿島建設 黒沼氏
黒沼氏

鹿島建設株式会社の黒沼出氏(技術研究所 先端・メカトロニクスグループ担当部長)が、ダム建設現場におけるCLASの測位性能評価について説明しました。同社は2020~24年にかけて成瀬ダム(秋田県)の堤体打設工事において自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)」を導入し、ダンプトラックやブルドーザーなど20数台の重機の座標をRTKで測位し、自律制御及び位置管理に利用しました。

講演4-1

重機は振動ローラやダンプトラック、トラミキ(ミキサー車)などの走行系車両と、ブルドーザーやバックホウなどの作業系車両に分類されますが、走行系車両は二次元座標の位置があれば用が足りるのに対して、作業系車両では三次元の位置情報が求められます。建設業において自動施工を展開するに当たって、安全管理のためにも自動の重機以外の車両の位置把握が重要な課題となっており、より簡便なGNSS座標管理方法としてCLASに注目して測位精度を検証したものです。

講演4-2

性能評価は、成瀬ダムにおいて2024年10月に実施しました。評価対象の重機は55トン級ダンプトラックで、RTKを搭載した重機においてアンテナ信号をCLASの受信機に分波し、同一の受信信号を用いてCLAS測位を実施しました。なお、RTKの補正信号は現場内の基地局からデジタル無線により配信しました。観測に当たっては、現場内の積込プラント近傍では測位が不安定となるため、評価対象からは除外しました。

講演4-3

その結果、CLASとRTKはいずれも98%を超える高いFIX率となり、場所によってはCLASのFIX率がRTKを上回る場合もありました。これは現場において標高が低くデジタル無線の配信の死角になっている部分においても、CLASであれば衛星から配信されるため問題なく利用できることによるものです。

講演4-4

また、FIX解同士の座標値を比較して、RTK測位解を基準としたCLAS測位解の差をもとに95%信頼区間統計値を算出したところ、全体としては水平斜距離精度で7.4cm、垂直精度で20.4cmとなり、CLASの移動体測位精度仕様内で測位できることが確認できました。

講演4-5

黒沼氏は、CLASは衛星信号のみでFIXできるメリットがあり、RTKほどの精度が要求されない平面的な位置管理には十分に利用可能であるとして、今後のCLASの改良に期待しており、工事現場における様々な場面での利用を検討していきたいと述べました。

石橋社長

最後に準天頂衛星システムサービス株式会社の石橋海代表取締役社長が挨拶を行い、「各氏にみちびきの課題や優位点を紹介いただき、有意義な情報共有ができました。この機会に、みちびきの展示ブースにもぜひお立ち寄りください」と呼びかけて締め括りました。

展示ブース-1
展示ブース-2

みちびきの展示ブース

みちびきのブースでは、みちびきのCLASに対応した水田雑草対策ロボット「ミズニゴール」(株式会社ハタケホットケ)や、CLAS対応の農業用ドローン「TSV-AQ2」(東光鉄工株式会社)、CLAS対応の農機自動操舵システム「GFX-350 CLAS Edition」(株式会社ニコン・トリンブル)などスマート農業の関連機器を展示しました。今回が初展示となるGFX-350 CLAS Editionはトラクターや田植機などの農機に後付できるGNSSガイダンス・自動操舵システムで、CLASによる高精度な位置情報を活用したスマート農業を実現できます。

展示品-1

ミズニゴール(ハタケホットケ)

展示品-2

GFX-350 CLAS Edition(ニコン・トリンブル)

展示品-3

TSV-AQ2(東光鉄工)

展示品-4

PF4(ACSL)

展示品-5

Smart検針システム(KIS)

そのほか、レベル3.5飛行に対応したCLAS対応マルチユースドローン「PF4」(株式会社ACSL)、SLAS対応スマートウォッチを活用した水道メーター検針システム「Smart検針」(株式会社KIS)、CLAS対応のスマートフォン装着型測位端末「LRTK Phone4C」や全方位撮影測位端末「LRTK360」(レフィクシア株式会社)、SLAS及び災害・危機管理通報(災危通報)に対応したゴルフウォッチ「NORM GN301」(グリーンオン株式会社)など、各社が販売するCLAS/SLAS(サブメータ級測位補強サービス)対応受信機、CLAS対応アンテナ等を展示しました。

展示品-6

左からCLAcanS(アカサカテック)、RJCLAS-L6(小峰無線)、NORM GN301(グリーンオン)、Reposaku/miltocca(エゾウィン)

展示品-7

左からLRTK Phone 4C(レフィクシア)、LRTK360(レフィクシア)、EVK-X20P(ユーブロックス)、Mosaic-G5 P3(セプテントリオ)

展示品-8

左からRWX.DC、RWS.DC/RWS.DCM/RWM.DC(ビズステーション)、Cohac∞Ten++、Cohac∞Ten(コア)

ブースでは説明員がみちびきの概要を紹介したほか、展示した製品に興味を持つ来場者には最新のみちびき対応製品の情報を案内しました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

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