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[報告] S-NET宇宙利用シンポジウムでみちびき利用の活発な議論

2019年04月22日

内閣府宇宙開発戦略推進事務局と経済産業省の主催による「S-NET宇宙利用シンポジウム/誰もが使える衛星データでこれまでにない価値を」が3月25日、都内で開催されました。このシンポジウムは、3年目を迎えるS-NET(スペース・ニューエコノミー創造ネットワーク)をオープンコミュニティの場としてさらに強化・拡張することで、わが国の宇宙産業の競争力強化につなげようとするものです。ここでは、みちびきに関連する報告や講演の概要をご紹介します。

「準天頂衛星システムへの期待」 ── JIPDEC坂下常務理事

冒頭、パネルディスカッションへの導入としてスピーチを行った一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)常務理事の坂下哲也氏は、高精度測位は経済活動のあらゆる局面で活用が可能であるとして、いくつかのユースケースを例示して一層の利用を呼びかけました。そして、みちびきは「正確で、完全で、有効に機能する社会インフラ」であると、その重要性を強調しました。

パネルディスカッション 「みちびきを利用した位置情報サービスの可能性」

パネルディスカッション「みちびきを利用した位置情報サービスの可能性」では、パネリストとして株式会社フォルテの葛西純氏(代表取締役社長)、株式会社Hacobuの佐々木太郎氏(代表取締役社長CEO)、カレンシーポート株式会社の杉井靖典氏(代表取締役CEO)、グリー株式会社の原田考多氏(開発本部XR事業開発部部長)の4氏、モデレーターとして株式会社野村総合研究所の佐藤将史氏(コンサルティング事業本部 ICTメディア・サービス産業コンサルティング部 上級コンサルタント)が登壇しました。

左からモデレーターの佐藤氏、パネリストの葛西、佐々木、杉井、原田の各氏

左からモデレーターの佐藤氏、パネリストの葛西、佐々木、杉井、原田の各氏

モデレーターの佐藤氏は、パネリストの4氏について、高精度測位情報の利用に関する新しいアイデアを持つ方々だと紹介。続いてL1S信号対応の測位モジュールを使ったサービスを提供するフォルテの葛西氏が、滋賀県の琵琶湖や岐阜県、北海道で行っている実証事例を踏まえながら、社会実装に向けた意気込みを示しました。

さらにスマート物流を実現するための物流情報プラットフォームの構築に関わるHacobuの佐々木氏が、その事業内容を紹介し、カレンシーポートの杉崎氏は、位置と時刻の情報を暗号化しブロックチェーンに登録することで、取引の真正性を保証するアイデアを紹介しました。また、グリーの原田氏は位置情報の精度が向上することで、新たなAR(拡張現実)ゲームの可能性に期待を示しました。

平井内閣府特命担当大臣

平井内閣府特命担当大臣

パネルディスカッションの最後に登壇した平井卓也内閣府特命担当大臣(宇宙政策)は、国が果たすべき役割はみちびきのインフラをしっかりと整備することとした上で、そのインフラを利用した民間による活発なビジネス展開に期待していると述べました。

ビジネス展開への期待を語る平井大臣(右端)

ビジネス展開への期待を語る平井大臣(右端)

「農業分野における宇宙データ利用の展望」 ── 北海道大学 野口伸教授

シンポジウムの後半には北海道大学大学院農学研究院の野口伸教授(内閣府 SIP次世代農林水産業創造技術プログラムディレクター)が、測位衛星や観測衛星の利活用で先行し、テレビドラマ等で社会的にも注目を集めつつある次世代の農業のありようについて講演しました。野口氏は、労働力不足解消や農業の産業としての魅力向上などのターゲットを掲げた上で、地球観測衛星データの利用や農業データ連携基盤の概要、高精度測位技術を基盤としたロボット農機の現状、スマート農業の国際展開などについて語りました。

当日はロビーで、準天頂衛星システムサービス株式会社も協力したパネル・映像展示を行ったほか、会場では衛星測位以外にも、衛星画像の利活用や、宇宙を利用した新たなビジネスアイデアコンテスト「S-Booster」などのテーマで講演やプレゼンテーションが行われ、シンポジウムは盛況のうちに終了しました。

以上

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