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[報告] NIHONBASHI SPACE WEEK 2025でみちびきの利活用を紹介

2026年01月08日

2025年10月28~31日の4日間、東京・日本橋で国内外の政府や宇宙機関、学術団体、民間宇宙ビジネスなど100以上の企業・団体が一堂に会する「NIHONBASHI SPACE WEEK 2025」が開催されました。一般社団法人クロスユーと三井不動産株式会社が主催し、内閣府宇宙開発戦略推進事務局のほか、総務省、文部科学省、経済産業省、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が後援する宇宙ビジネスの一大イベントであり、会期中に150以上のスピーカーによる講演と30以上のイベントが行われました。その一つとして会期3日目の10月30日に開催された「準天頂衛星システム『みちびき』の概要 ~7機体制の完成にかかる利活用拡大に向けて~」の模様を紹介します。

※本記事は、みちびき5号機打上げ(2025/12/22)の約1カ月半前に行われた「NIHONBASHI SPACE WEEK 2025」の紹介記事であり、5号機の運用を前提とした内容を一部含みますが、当日の説明内容をそのままお伝えするものです。

会場外観

会場となった室町三井ホール&カンファレンスが入るCOREDO室町テラス

三上参事官

冒頭、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室長)が、みちびきの概要や機能を説明すると共に、すでに自動車やドローンを始めとする様々な分野でみちびきに対応した製品が発売され、利活用されていることを紹介しました。現在、日本上空を周回するみちびき衛星は5機ですが、今後2機追加されて7機体制での運用が予定されています。三上参事官は、それによりみちびきだけで測位することが可能となり、受信可能範囲が広がり、測位精度も安定すると解説しました。また、将来は運用中にどの1機が故障しても大丈夫なように、バックアップも含めた11機体制の構築を検討していると語りました。衛星信号のスプーフィング(なりすまし)対策のため、2024年度からみちびきの新サービス「信号認証サービス」の運用を開始したことも説明しました。

講演風景-1
船水氏

続いて北海道ガス株式会社の船水孝洋氏(技術開発研究所 主査)が、ガス導管漏洩検査管理システムにCLAS(センチメータ級測位補強サービス)及びLiDAR(レーザースキャナー)・SLAM(自己位置推定と環境地図作成の同時実行)を導入する取り組みについて紹介しました。ガス導管漏洩検査管理システムは、スマート保安の一環として同社が2023年度から本格運用している仕組みで、衛星測位により検査員の位置情報を取得して検査結果の記録・集計・報告を自動化するものです。
同社は2024年度のみちびきを利用した実証事業に応募して、札幌市内及び市外近郊においてCLASによる測位精度や機材の取り扱いやすさを検証すると共に、3D点群モデルとLiDAR計測データの比較・参照により取得した絶対座標の精度を検証しました。今後は高精度測位技術を活用した地下埋設物のデジタル管理技術を確立し、全国のガス・通信・上下水道事業者への展開を目指しています。将来は3次元点群データや都市デジタルツインの相互利活用・データ連携を行うことで、都市・インフラ全体の維持管理・安全管理の高度化への貢献を目指しています。

藤田氏

国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の藤田実季子氏(地球環境部門 大気海洋相互作用研究センター 主任研究員)は、2024年度のみちびきを利用した実証事業として株式会社Oceanic Constellations、イネーブラー株式会社と共同で行った、みちびきを活用したドローン船による気象観測の実証実験について紹介しました。
この実証では、宮城県沖において船舶を、相模湾においては自律航行型の海上ドローンを用いてMADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)により対流圏遅延量を測定し、海上の可降水量をリアルタイムに推定する観測実験を行いました。そしてその結果、気象庁が発表している解析値と差がなく推定できることを確認しました。今後は水上ドローンのコンステレーション(衛星群)により海洋における同時多点センシングの実現に向けた取り組みも進めて、海上におけるみちびきの利活用を広げていく方針です。

榎本氏

モデレーターの榎本氏

その後に行われたパネルディスカッションでは、宇宙キャスターの榎本麗美氏がモデレーターを務め、北海道ガスの船水氏、JAMSTECの藤田氏、そして内閣府宇宙開発戦略推進事務局の和田弘人企画官(準天頂衛星システム戦略室)、株式会社ハタケホットケの日吉有為氏(代表取締役)、オーシャンソリューションテクノロジー株式会社(OST)の水上陽介氏(代表取締役)の五氏がパネリストとして登壇し、議論を行いました。

和田企画官

議論に先立つ自己紹介で内閣府の和田企画官は、近年、個人でも手の届く価格帯のみちびき対応受信機が出現しており、今後みちびきの7機体制が確立すれば、他国の衛星や地上の通信設備に左右されず、陸域・海域の区別もなく、だれもが衛星測位を使える環境が整いつつあるとの現状を説明しました。その上で、すでにみちびきを活用している先進的な事業者の事例を参考にして、みちびきの使いどころを知ってほしいと呼びかけました。

日吉氏

ハタケホットケの日吉氏は、CLASを活用した水田雑草対策ロボット「ミズニゴール」を紹介しました。ミズニゴールは水田圃場を走行し、水を濁らせることで雑草の光合成を阻害し、その成長を抑制すると共に、生えたての雑草を物理的に除草することもできるロボットです。手動で操作するラジコン型と、みちびきのCLASに対応したGNSS自動走行型の2種類があり、自動走行型は水田圃場の中を設定したルートに沿って自動で走行することが可能です。2022年に長野県内10カ所で利用されていたのが、翌年には県外も含めた30カ所に広がり、今年は全国100カ所で使われていると普及の状況を説明しました。

水上氏

オーシャンソリューションテクノロジーの水上氏は、過去にみちびきを利用した実証事業として行った、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応したIoTデバイスを船舶に設置して航跡を記録して、AI(人工知能)による解析で水産資源を評価・管理し、操業日誌を自動で作成・データ化する取り組みや、MADOCA-PPPや信号認証サービスを用いてIUU(違法操業)漁業対策を行う取り組みについて紹介しました。同社の漁業者支援サービス「トリトンの矛」はみちびきだからこそ実現したサービスであり、GPSだけでは測位誤差が大きくAI解析しても精度が向上しなかったのに対し、みちびきの高精度測位を使うことで航跡をもとに船舶の行動を分析できるようになったと説明しました。

講演風景-2

パネルディスカッションの様子

その後は、みちびきに関する様々なテーマを挙げて議論や意見交換を行いました。
まず「みちびき利用者のリアル」というテーマでは、日吉氏が「位置情報を正確に取れるのはありがたいが、ミズニゴールは地面を走るローバー型であり、制御する機器の性能が悪いと、位置情報を正確に反映しながら走行するのが大変でした。あの手この手で何とか精度を上げています」と苦労を語りました。
水上氏は「みちびきとAIによって船舶の操業記録を自動化できたことから、今はデータが日々増えている状態です」と説明し、漁業者がスマート水産業に取り組むきっかけとして、みちびきの高精度測位が大きく貢献していると話しました。
また、船水氏はみちびきを導入した理由にランニングコストの安さを挙げたほか、「ガス事業者にとっては災害時にできるだけ早く目的地に到着し、高精度に被害を見つけることが大切であり、みちびきはとても有効に活用できます」と災害時に強い点に言及しました。

講演風景-3

「今後みちびきで実現できる未来」について藤田氏は「衛星測位を使って水蒸気量をリアルタイムに測定する場合、陸上では様々な方法があるが、海上において無料で使える方法は、アジア・オセアニアではみちびきしかありません」として、今後、海洋モビリティが発展していく中でみちびきは大いに役立つと語り、その可能性に期待を寄せました。
日吉氏も「農業で使うにはセンチメートル単位の精度が必要であり、RTK(リアルタイムキネマティック測位)はコストがかかるので大規模な農家でないと導入できません。特に中山間地域の小さな圃場では効率が悪く投資しにくいので、無料で使えるみちびきに大きな可能性を感じています」とスマート農業におけるみちびきの活用に期待を表明しました。船水氏は「地下に埋まっているのはガス管だけではなく、他のインフラ事業者の方々もみちびきをぜひ使ってほしい」とみちびきの利活用を呼びかけました。

講演風景-4

みちびきの信号認証サービスについて和田企画官は、「これからは衛星測位の信号認証がすべてのユーザーにとっての基盤的な技術になります。認証機能を付加した上で位置情報を提供できるみちびきは、他国のサービスに比べて大きなアドバンテージになると思います」と語りました。
各氏の話を聞いて今後のみちびきにとても可能性を感じたというモデレーターの榎本氏は、「(みちびきをどのように活用するかは)皆さんのアイデア次第と思いますので、みちびきに触れてみたい、使ってみたいと思った方は、ぜひみちびきコミュニティに参加していただきたい」と来場者に呼びかけて、議論を締めくくりました。

集合写真

登壇者一同

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

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