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[報告] 大阪商工会議所で企業向けにみちびき活用セミナー開催

2026年04月20日

準天頂衛星システムサービス株式会社は2026年3月11日、みちびきの最新動向や活用事例を紹介する企業向けセミナー「関西から宇宙へ!宇宙×ビジネス 日本版GPS『みちびき』活用セミナー」を大阪商工会議所(大阪市中央区)にて同会議所との共催により開催しました。本セミナーは、一般社団法人クロスユーが事務局を担う「みちびきコミュニティ」の取り組みとして開催されたもので、宇宙産業へ参入を検討中の企業やすでに取り組みを進めている企業などが参加し、講演やパネルディスカッションと共に登壇者と参加者による交流会も行われました(所属・肩書はイベント当時のものです)。

開会挨拶
クロスユー 中須賀氏(東京大学 教授)
講演写真-01(中須賀氏)

冒頭、セミナー事務局を担当する一般社団法人クロスユー代表理事の中須賀真一氏(東京大学大学院工学系研究科 教授)が開会挨拶を行いました。中須賀氏は、宇宙産業において測位分野がもっとも大きな産業になったことを踏まえて、測位技術を利用して何ができるかを考えてほしいと呼びかけて、セミナーがスタートしました。

講演写真-02(中須賀氏)
みちびきに関する最新の取り組みを解説
内閣府 三上参事官
講演写真-03(三上参事官)

内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官(準天頂衛星システム戦略室長)は、日本の宇宙政策やみちびきの運用体制について解説した上で、GPSを補完する衛星測位サービスや、高精度測位を行うCLAS(センチメータ級測位補強サービス)、SLAS(サブメータ級測位補強サービス)、MADOCA-PPP(高精度測位補強サービス)など、みちびきの提供サービスの概要を説明しました。そしてこれらのサービスがスマート農業やドローン物流、インフラ・メンテナンス、スポーツ、海洋など様々な分野で活用されている事例も紹介しました。三上参事官は、政府が策定した地理空間情報活用推進計画では「誰もが、いつでも、どこでも必要な地理空間情報を利用できるG空間社会(地理空間情報高度活用社会)の実現」を目指しており、来るべきサイバー空間において高精度な位置と時刻のインプットが可能となる、みちびきを活用したビジネスを検討してほしいと呼びかけました。

講演写真-04(三上参事官)
みちびきを利用した公募実証を紹介
NECソリューションイノベータ 神藤氏
講演写真-05(神藤氏)

準天頂衛星システムサービスの委託先であるNECソリューションイノベータ株式会社の神藤英俊氏(エアロスペース・ナショナルセキュリティ統括部 シニアプロフェッショナル)は、みちびき利用拡大推進の取り組みやみちびきを活用した実証事例などを紹介しました。現在、みちびきの高精度測位に対応した製品はすでに数多く販売されており、その実用化を推進する取り組みとして公募実証を行うと共に、展示会への出展やウェブサイト運用などのプロモーション活動にも取り組んでいます。みちびきを利用した実証事業は2018年から継続して実施しており、プロトタイプ受信機の貸し出しや測位衛星を可視化するアプリ「GNSS View」の提供も行っています。みちびきは現在5機体制で運用しており、日本だけでなくアジア・オセアニア周辺地域でも利用可能である点も補足しました。

船舶の自律航行技術開発で、安全運航を当たり前に
エイトノット 奥田氏
講演写真-06(奥田氏)

株式会社エイトノットの奥田悠希氏(船舶知能化事業部 PMユニット)は、同社が取り組む船舶自律航行化の事業内容と、自律航行船におけるみちびきの活用事例について説明しました。小型船舶向け自律航行プラットフォーム「エイトノット AI CAPTAIN」は、ほぼ全ての小型船舶に後付け可能なシステムで、タブレットを使って地図上で目的地を指定するだけでルートを自動設定し、目的地までの自律航行が可能となります。また、障害物や他船の自動回避、遠隔モニタリング、自動離着岸などの機能も搭載しています。
みちびきのCLASを活用して、安全な自律航行の実現に欠かせない高精度な位置情報を取得しており、自動車の自動運転に使われている光学カメラやLiDAR(レーザースキャナー)などセンサーを併用しています。当初はRTK(リアルタイムキネマティック)を採用していましたが、基準局を設置する場所の確保や、洋上でモバイル通信の利用が制限されるなどの課題があり、基準局が不要で通信環境にも左右されないCLASを採用することにしたといいます。みちびきはアジア・オセアニアでも利用可能なため、他国での展開にも挑戦する方針です。
奥田氏はAI CAPTAINの導入事例として、大崎上島町(広島県)の離島における旅客輸送や宅配サービスでの活用、自律航行船とドローンの協調制御の実証事業、東京港での自律航行船実証などを挙げました。また、同社は既存の船舶に後付けする「レトロフィット事業」で培ったコア技術をソリューション事業として展開する方針です。船舶の知能化技術をメーカー製品に組み込めるモジュールとして提供し、みちびきを活用した船舶向けの自己位置推定エンジンを海洋土木や測量・海洋調査の分野に提供するなど、幅広いシーンでみちびきの技術を活用する検討を進めています。

CLAS測位を利用した橋梁点検支援ロボット「視る・診る」
ジビル調査設計 毛利氏
講演写真-07(毛利氏)

ジビル調査設計株式会社の毛利茂則氏(取締役会長)が、みちびきのCLASを活用した橋梁点検支援ロボット「視る・診る(みるみる)」の実証実験を紹介しました。「視る・診る」は、橋の上に台車を設置し、台車から鉛直ロッドにより橋梁下部へ可動式の水平アームを下ろすことにより、水平アームに搭載した撮影カメラで橋梁下部を点検できるロボットです。同社は春江電子株式会社と共同で、CLASの位置情報を橋梁下部で有効活用するための座標連携装置を開発しました。
撮影時は、橋の上の台車に搭載したCLAS対応受信機が取得する高精度の位置情報をもとに座標連携装置を介して、測位電波を受信しづらい橋梁下部の撮影ポイント及び老朽箇所の位置情報を算出することが可能です。従来は手書きのスケッチで位置の特定や記録を行っていたため、調査員によって個人差があり、再確認時に既往調査位置の確認に時間を要しましたが、みちびきのCLASと座標連携装置を活用することで、実証実験において約0.4mの精度で撮影位置を特定できました(その後の改良で約0.2mまで精度向上)。
国土交通省の点検マニュアルでは、GNSS情報について撮影箇所を特定する重要な情報と位置付けているものの、橋梁桁下などで衛星信号が届かず精度が十分に得られない場合は記録不要とされています。同社は今後、橋梁桁下の衛星信号が届かない領域においても「視る・診る」で十分な位置精度が得られることを実証し、現在の「記録が望ましい」との記載から「記録を必要とする」に変更することを目指しています。今後は国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)への機能付加申請を行い、更なる位置精度向上に向けた改良や、他のインフラ施設の維持管理保全への対応を検討中です。また、教育用としてGNSSによる“地上絵アート”を製作可能な装置の開発も考えているそうです。

パネルディスカッション-01

講演に続いて中須賀教授をモデレーターとしたパネルディスカッションが行われました。パネリストには、講演を行った内閣府の三上参事官とエイトノットの奥田氏に、ジビル調査設計の橋梁点検支援ロボット「視る・診る」のプロジェクトを支援した福井県工業技術センターの松井多志氏(企画支援部 技術相談グループ 総括研究員)と大阪商工会議所の松本敬介氏(産業部部長)が加わり、みちびきの可能性や今後の課題を議論しました。

パネルディスカッション-02(中須賀氏、奥田氏、松井氏、松本氏、三上参事官)

左から中須賀氏、奥田氏、松井氏、松本氏、三上参事官

最初のテーマ「非宇宙産業から宇宙産業に入ったきっかけ」と「障壁をどう乗り越えたか」に対して、エイトノットの奥田氏は、自律航行技術において自己位置精度が重要であるというきっかけで高精度の衛星測位を利用し始め、みちびきを利用することでRTKに制約が多いという障壁を乗り越えることができたと説明しました。続いて松井氏が、福井県では新産業としての宇宙産業に着目し、非宇宙産業から宇宙産業に入ってもらうために、ふくい宇宙産業創出研究会や福井県民衛星技術研究組合などを設立して、地球観測衛星や測位衛星の利活用推進や人材育成に取り組んできた経緯を紹介しました。
続くテーマ「宇宙利用のビジネス上のメリット」について、大阪商工会議所の松本氏は、「みちびきを上手く使えば、動いているものの位置情報をすべて取得できるので、これは大きなメリットになる」として、将来的にはデータを上手く分析して結果を導き出すことで人材育成につなげたいと期待を寄せました。これに対して三上参事官は、人材育成は学生のチームを交えて進められるとよいと提案し、「彼らの意識を『地元の地域をよくするために衛星データを活用する』という方向にぜひ向けていただきたい」と話しました。

パネルディスカッションの後には参加者との質疑応答も行い、会場から登壇者の発表内容やみちびきの活用法、みちびき測位信号のセキュリティ、みちびき対応受信機の価格などについて様々な質問が寄せられました。

閉会挨拶
大阪商工会議所 西田氏
講演写真-08(西田氏)

閉会挨拶は、大阪商工会議所の西田昌弘氏(産業部次長、産業・技術振興担当課長)が行いました。西田氏は、大阪商工会議所では2年前から新技術によるイノベーション創出を促進するプラットフォーム事業「次世代テックフォーラム」にて、宇宙ビジネスの可能性を考える「宇宙ビジネスクラスター」に取り組んでいると話し、「他地域連携なども行っていく予定なのでぜひご参加ください」と参加者に呼びかけました。
セミナー終了後には登壇者を交えて参加者同士の交流会も行われ、活発な情報や意見の交換が行われました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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