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[報告] イチBizアワードで配達員保険システムがみちびき賞を受賞

2025年03月18日

今年で3年目を迎えた地理空間情報を活用したビジネスアイデアコンテスト「イチBizアワード」の表彰式が2025年1月31日、江東区有明の東京ビッグサイトで行われました。当日は、計172件の応募(アイデア部門:101件、ビジネス部門:61件、地域部門:10件)から絞り込まれた45件がノミネートされ、その中から最優秀賞や各部門賞のほか、みちびきを活用したアイデアやサービスに贈られる「みちびき賞」などの協賛企業特別賞が選出されました。

イチBizアワードの会場
新藤議員

表彰式に先立ち、来賓として衆議院議員の新藤義孝氏(前経済再生担当大臣・自由民主党G空間社会実装委員長)が登壇して挨拶しました。新藤議員は、自らが「G空間情報」を核とした新しい事業領域(G空間プロジェクト)に長年深く関わっていることを紹介し、位置情報の高精度化やデジタル化によって可能になる新産業や社会課題の解決策について説明しました。具体的には、日本が独自に運用するみちびきの高精度測位により位置を数cm単位まで正確に把握できる点を示し、それが農業や防災、自動運転など幅広い分野に応用できるとしました。地理空間情報の基盤整備に複数の省庁が関わるため、誰も一元管理ができない現状を踏まえて、一つのプロジェクトとしてまとめ上げる重要性も指摘しました。日本政府が進める「G空間プロジェクト」体系化の取り組みにより、新しいビジネスやスタートアップを興し、日本が人口減少社会であっても成長し続ける大きな可能性への期待も語りました。

ミズニゴール

ミズニゴール(株式会社ハタケホットケのホームページより)

2024年度のイチBizアワードで最優秀賞に選ばれたのは、田んぼの水を撹拌して濁らせることで雑草の光合成を妨げて、米の有機栽培における除草作業の手間を軽減してくれるロボットに、みちびきのCLAS(センチメータ級測位補強サービス)対応受信機を搭載することで位置情報を高精度化した「水田雑草対策ロボット ミズニゴール」(株式会社ハタケホットケ 日吉有為)でした。

表彰式-1

最優秀賞を受賞した日吉氏(中央)(イチBizアワード公式ビデオより)

このほかアイデア部門の優秀賞は、高齢化や軽傷患者の通報、人手不足で限界を迎える救急医療をITの力で最適化し持続可能にする「Quick」(武田淳宏)と、未就学児~小学校低学年向けの交通安全学習ゲーム「あるいてGO!」(共愛学園前橋国際大学 渡辺研究室 根井茉那)が受賞しました。「Quick」は、通信指令室での電話対応補助AI、救急車の必要ない軽傷患者と最寄りのタクシー、医療機関を繋げるプラットフォームを提供します。「あるいてGO!」は、ビデオゲーム「Minecraft(マインクラフト)」上に再現された自分が住む街の中で、安全に楽しく交通ルールを学べます。

また、ビジネス部門の優秀賞は、助け合い海難救助サービス「よびもり」(株式会社よびもり 千葉佳祐)と、AI×スマホ×自動車を使ったごみ分布調査システム「タカノメ」(株式会社ピリカ 古橋大輔)の2タイトルが受賞しました。「よびもり」は、海難事故発生時に、SOS発信端末とスマホアプリで同じ組合の漁師や近くにいる別の漁師ユーザーに緊急救助を要請できます。「タカノメ」は、走行中の車載スマートフォンで路上を撮影し、機械学習によりごみを検知して、位置情報と共に自動記録します。
地域部門の優秀賞は「有害鳥獣情報共有システム」(令和6年度まちのデータ研究室チーム「鳥獣害撲滅」/香川大学 西村侑馬)が受賞しました。野生の有害鳥獣の出没エリアが広域化した問題を解決するため、一般市民による獣害被害の通報手段の確立と情報共有を行うシステムです。

各部門受賞者の詳細は、下記にてご確認ください。

表彰式-2

準天頂衛星システムサービスの石橋社長(左)によるみちびき賞の授与

みちびき賞には、「みちびき×ブロックチェーンを用いた配達員保険システム」(株式会社シーエーシー インテグレーション統括本部 基盤P&S部 ブロックチェーン推進グループ)が選出されました。このシステムは2021年度のみちびきを利用した実証事業で実施されたもので、みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)による位置情報を活用して配達員の走行状況をモニタリングし、その情報と連動する保険システムを組み合わせることで危険走行の減少を目指すものです。

表彰式-3

受賞したシーエーシーの薮下智弘氏(中央)

イチBizアワードは、今回で3度目の表彰式を迎えました。公式サイトには過去2回に受賞したアイデアのうち9件の、その後の活躍状況がまとめられています。ジャンルを見ると、農業やインフラ管理、空飛ぶクルマから子育て支援、日記アプリまで多岐にわたります。今年度は、それに救急医療や海難救助、ごみ分布調査システムなどが加わり、地理空間情報の広がりを感じさせるアイデアコンテストとなりました。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

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