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サブメータ級測位補強を実現したMASAのGNSSゴルフウォッチ

2018年10月31日

みちびきの高精度測位にはサブメータ級測位補強サービスやセンチメータ級測位補強サービスなどがあり、このうちサブメータ級測位補強に対応した製品をいち早く発売したのが、東京・中央区のベンチャー企業である株式会社MASAです。
同社が今年7月に発売した「ザ・ゴルフウォッチ プレミアムII」は、みちびきが送信するL1S信号に対応したゴルフウォッチで、従来製品に比べて大幅に精度が向上しており、誤差は約1~2m以下の高精度を実現しています。サブメータ級測位補強サービスに対応したコンシューマー(一般消費者)向け腕時計型ウェアラブル端末としては世界初の製品となります。

ザ・ゴルフウォッチ プレミアムII

ザ・ゴルフウォッチ プレミアムII(画像提供:株式会社MASA)

ゴルフウォッチとは、ゴルファーのプレイを支援する機能を搭載した腕時計型ウェアラブル端末で、グリーンまでの距離や打数、トータルスコアなどの通知を一覧表示できます。また、コース図も表示でき、現在地および100ヤードごとの同心円が表示され、グリーンの方向やハザードの位置をひと目で確認できます。これにより、ゴルファーは次のショットをどのクラブでどの方向に打てばいいのか、適確に判断することが可能となります。
同社の代表取締役を務める末永雅士氏は、「ゴルフの場合は打つ距離が10m違うと選ぶべきクラブが変わってしまいます。これまで通常のGPSだと、条件の悪い冬場では10mを超える誤差が発生することもありましたが、みちびきのサブメータ級測位補強サービスによって安定して1~2mの精度が可能になります。これはとても大きいことです」と語ります。

「精度」を最優先に追求する開発方針

2008年に創業したベンチャー企業、MASAは、長年にわたり宇宙開発事業に携わってきた末永氏が、宇宙関連の技術を活用したコンシューマー向けの製品を提供することを目的にスタートしました。
最初に発売したのは「GPSキャディー」と呼ばれるゴルフ用の携帯端末「グリーンオン」で、以後、2012年に腕時計型のゴルフ用ウェアラブル端末「ザ・ゴルフウォッチ」を発売し、他にもランニング時のラップタイムや距離などを音声で知らせるGPSナビゲーション端末「GPSボイスコーチ」や、レーザー光を利用したゴルフ練習器具「レーザーコーチ パッティング」などの製品を販売しています。

MASAの末永氏

MASAの末永氏

同社の開発方針は、"精度最優先"であること。たとえばGPSウォッチの場合、GNSSアンテナをケース(筐体)に埋め込んだほうがデザインは良くなりますが、MASAの製品ではあえてケースの外側に出して、バンドとの付け根の部分に配置させることで、受信感度を高めて精度を向上させました。ケースも、金属製にするとアンテナの感度に影響を与えるため樹脂製にして、上位機種の装飾には、電波を遮断するカーボンは使わず、カーボン調の樹脂を採用しています。

「ゴルフウォッチシリーズは時計の形をしていても、あくまでも"受信機"であり、精度を良くすることを最優先に考えました」(末永氏)

みちびきの高精度測位にも早くから注目

このように精度を最優先に追求してきた同社は高精度測位への関心も非常に高く、基準局で得た誤差補正情報をFM電波により提供するDGPS(Differential GPS)や、航空機に対して誤差補正情報を提供するSBAS(Satellite-Based Augmentation System、衛星航法補強システム)などを利用する機能をゴルフウォッチに搭載できないかと検討してきました。
みちびきの高精度測位にも早くから注目しており、2016年にはサブメータ級測位補強サービスの初期の仕様であるL1-SAIFと、SBAS(MSAS)の両方の信号に対応した「ザ・ゴルフウォッチ プレミアム」を発売しました。L1-SAIF対応のGNSSチップと非対応のチップで特にサイズの差がなかったため、この時のハードウェアの開発では小型化などの苦労はまったくなかったとのことです。

「ザ・ゴルフウォッチ プレミアムの発売後、去年(2017年)秋にサブメータ級測位補強サービスの方式が(L1-SAIFから)L1S信号に仕様変更すると知りました。L1Sは電離層の補正だけでなくDPGSの技術も使っているので、より大きな精度向上が期待できると思い、急きょ、ザ・ゴルフウォッチプレミアムIIの開発を決めました」(末永氏)

ザ・ゴルフウォッチプレミアムII

ザ・ゴルフウォッチプレミアムII

ザ・ゴルフウォッチA1

ザ・ゴルフウォッチA1

ザ・ゴルフウォッチプレミアムIIは、今年7月にすでに発売が開始されていますが、L1S運用が開始したら、ユーザがファームウエアを更新することで、L1S対応ができる仕組みになっています。
また、今年2月に発売した同社の10周年記念モデル「ザ・ゴルフウォッチA1」は、搭載しているチップが異なるため、すでに同製品を購入したユーザーにはハードウェアのアップグレードサービスを提供してL1S信号に対応させる予定といいます。

サブメータ級の精度向上も追求してほしい

MASAの末永氏

MASAの末永氏

末永氏は、みちびきのサブメータ級測位補強サービスならではのメリットとして、機器を小型・軽量化できること、消費電力が少ないこと、機器を安くできる点などを挙げています。
ザ・ゴルフウォッチプレミアムIIは、縦45.0mm×横41.1mm×厚さ11.3mmと腕にはめられるサイズで重量が約53g、GPS使用時に14時間連続使用可能と、ゴルフを楽しむのに十分な性能です。また、推奨小売価格が税別2万5000円と、サブメータ級測位補強サービスに非対応のゴルフウォッチと同程度の価格を実現しています。

末永氏は、「センチメータ級測位はまだ受信機が大きく重いのに対して、サブメータ級対応のGNSSチップならばゴルフウォッチのような小さな端末にも簡単に組み込めるので、コンシューマー向け製品には最適です。みちびきというとセンチメータ級測位にばかり注目しがちですが、L1S信号によるサブメータ測位補強サービスは、モニター局を増やしたりすることで、将来的には、さらなる測位精度向上も追求していただきたい」と期待を込めて語ります。
同社は今後リリースするゴルフウォッチについては、すべてL1S信号対応とする予定です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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