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福井で放鳥された2羽のコウノトリが位置情報を発信中

2015年10月25日

2015年10月3日に福井県越前市で2羽のコウノトリが放鳥されました。この2羽は前年の2014年6月に越前市白山地区の繁殖施設で孵化(ふか)したオスのげんきくんとメスのゆめちゃんです。

放鳥式典

2015年10月3日に行われた放鳥式典で飛び立つコウノトリを見守る市民

いったん絶滅したが試験放鳥で復活

コウノトリは水田のドジョウやカエルや水生昆虫を1日500gも捕食し、成鳥で翼長が2mにも達します。豊かな生態系と自然環境を象徴する生き物として知られ、日本ではいったん絶滅しましたが、2005年から兵庫県での試験放鳥で復活して数を増やしてきました。兵庫県豊岡市にあるコウノトリの郷公園は保護・研究のメッカとして知られ、福井の2羽だけでなく、7月に3羽を放鳥した千葉県野田市からも野生復帰に向けた訓練のためここへ来ています。
福井で放鳥された2羽には位置を知らせる発信機が取り付けられています。太陽電池で動作し、アルゴスシステム(=環境モニタリングや生物調査で使われる、衛星を利用した測位・通信システム。本拠はフランス)経由で自機の位置情報を知らせる、重量わずか40gの端末です。福井県は継続的に2羽の位置情報履歴を公開しています。

宮城県と滋賀県にそれぞれ到達

位置情報履歴から作成した地図

県が公開した位置情報履歴をもとにした地図(青色:げんきくん、赤色:ゆめちゃん)

オスのげんきくんは放鳥されたその日のうちに福井県を出て石川県に入り、能登半島で数日を過ごしますが、2015年10月8日に一気に富山県~福島県を飛び越えて宮城県まで到達。名取市~石巻市を経て、10日以降は宮城県遠田郡美里町付近に滞在しています。一方、メスのゆめちゃんは、放鳥された越前市付近にしばらく滞在するものの、10月7日に南下して滋賀県に入り、高島市付近でずっと過ごしています。
発信機の寿命は1年間を想定していますが、10年以上稼働している機械もあるということで、福井県の担当者は「じっくり見守っていきたい」と話しています。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

参照サイト

※記事中の画像提供:福井県(地図は県の公開情報をもとに作成)

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