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ファンリード、マレーシアでみちびき活用のドローン観測システムを実験

2020年06月15日

スマート農業の実現に欠かせない存在として注目されているドローン技術。このドローンを使った観測システムに、みちびきの高精度測位技術を適用する取り組みが進められています。
株式会社ファンリード(今年4月に株式会社マイクロネットワークテクノロジーズから社名変更)は、ジオインサイト合同会社(ファンリードパートナー)、株式会社ディープ・センシング・イニシアティブ、マゼランシステムズジャパン株式会社、グローバル測位サービス株式会社の4社と協力して、みちびきの実証実験向けセンチメータ級測位補強信号であるMADOCAを活用したドローン観測システムを企画。みちびきを利用した実証実験公募の採択テーマとして、昨年から今年にかけて国内、及びマレーシアのサラワク州ミリ市にて実証実験を行いました。
その詳細を、同社開発ソリューション部の岸耕一氏(IoT×宇宙ビジネス開発担当)、経営企画部の桐谷大輔氏、督永千晶氏に聞きました。

ファンリードの桐谷氏、岸氏、督永氏

左からファンリードの桐谷氏、岸氏、督永氏

標定点を使わずに植物の生育状況を観測

ドローンを使ってパーム椰子などの植物の生育状況を観測し、病虫害が発生していないかどうかを監視する場合、定期的にドローン観測を行った場合に、観測する位置が以前観測した時と数mずれていると固体の確認ができなくなります。従来のドローン観測システムは位置精度に数mの誤差が生じるため、農業分野で使用すると観測目的とは異なる個体を誤観測する恐れがありました。位置精度を向上させるには「標定点(GCP:Ground Control Point)」と呼ばれる目印を地上に設置し、測量する手間が必要で、これはコスト増の大きな要因となっています。

従来のドローン観測システム

<従来のドローン観測システム>

MADOCAを活用した仕組み

<MADOCAを活用した仕組み>

今回の実証実験では、MADOCA対応のGNSS受信機を搭載したドローンを使用することにより、GCPを使わなくても単独で高精度な測位を実現し、海外においても十分な位置精度を確保できるかを検証しました。誤差10cmオーダーの精度を確保できると確認できれば、異なる時間で同一対象を捉えることが可能となり、両者のスペクトルを比較して植物の変化を把握できます。開発ソリューション部の岸氏は、同社が実証実験を行う理由をこう説明します。

「これまでの民生用ドローンの多くはGNSSによる測位が数mずれてしまっていました。私たちは、みちびきを使うことで農業用観測データに必要な位置精度を実現できるかを検証するために今回の実証実験を行いました。GCPを使わずにどれくらい精度が出るのか、そしてビジネスを展開したいと考えている海外のアジア地域でどの程度の精度を出せるのか、その検証が目的でした」(岸氏)

ドローン観測に必要な誤差10cmオーダーの位置精度

観測システムとターゲット

観測システムとターゲット

実証実験は、まず静岡県藤枝市で実施されました。マゼランシステムズジャパン社製のMADOCA対応GNSS受信機及びアンテナ、従来型GNSS受信機とアンテナ、そして位置精度検証のためのDSI社製ハイパースペクトルセンサーを搭載したドローンを飛行させ、高度約7mの位置から地上に設置したターゲットを観測しました。

「1機のドローンにMADOCA対応受信機と一般的なGNSS受信機の2つの測位システムを搭載し、飛行しながらターゲットを観測し、ハイパースペクトルセンサーで得られたデータからターゲットセンサーの座標を抽出して、両者で測位結果にどれくらい差が出るかを比較しました」(岸氏)

飛行観測の仕組み

飛行観測の様子

飛行観測の様子

ターゲットは50cm四方の周囲と異なる特徴的なスペクトルである赤色及び黄色の正方形を2つ並べたもので、それぞれの正方形が1つの植物(固体)をイメージしています。このターゲットを、広さ約20m×50mの検証エリア内に3個分散して配置しました。エリア内には、みちびきだけでは予想したとおりの精度が出せなかった場合を想定して、予備的にGCPを敷地内に10個設置していましたが、結果的にはGCPを一切使用することなく、ドローン観測に必要な位置精度である誤差10cmオーダーを確保できることが確認できました。

マレーシアでも国内と同様の手順で実験

大規模農園での実験

大規模農園での実験

続いて、マレーシアにおいても国内と同様の手順で海外実験を実施しました。マレーシアではGCPは一切設置しませんでしたが、実験の結果は誤差が約20cmと、ドローン観測を行う上では十分な精度を確保できることが確認できました。

「マレーシアやインドネシアなどアジアの大規模農園や森林地域では、病虫害に罹患した植物を早期に発見するためのサービスのニーズが高いものの、基準局の整備が困難なため、ネットワーク型RTK(リアルタイムキネマティック)測位が不可の場合が多く、GCPを設置することなく単独で高精度測位を実現できるMADOCAはとても有効です。これにスペクトル分解能の優れたハイパースペクトルセンサーと組み合わせることで、これまでにない新たなサービスを実現したいと思います」(岸氏)

実験フィールド

実験フィールド

ターゲットの設置

ターゲットの設置

飛行観測

飛行観測

みちびきとドローンで新たなスマート農業を実現

同社は、観測システムの実用化に向けた今後の課題として、インターネット環境がなく、みちびきからの直接受信のみでMADOCAを利用する場合の初期収束時間(TTFF)の長さを挙げています。

「今回の実証実験ではそれほど問題になりませんでしたが、現地の農場関係者が対応受信機を搭載したドローンを実際に使用する場合、飛行前に測位が収束するまでの時間を待つ必要が出てくるため、今後の技術改良で収束時間が短くなることに期待しています。受信機やアンテナの更なる低価格化、小型化にも期待したいですね」(岸氏)

みちびきによる高精度測位とドローンの組み合わせで、これまでにない新たなスマート農業の実現を目指している同社は、みちびきの今後に大きな期待を抱いています。

岸氏

岸氏

「バンコクでGNSSのカンファレンスに参加した時、アジア各国の関係者の多くの人たちがみちびきのサービスが日本だけでなく、アジアやオセアニア地域もカバーしていることを知りませんでした。そして彼らに『皆さんもみちびきを利用できますよ』と話をすると、ぜひ使ってみたいと高い関心が集まりました。みちびきのポテンシャルは非常に高く、わが国の優れた測位インフラでビジネス展開を図っていくベースは十分にあると認識しています」(岸氏)

同社は今後、海外においてはマレーシアにて実証パートナーと、国内においてはスマート農業を推進する機関と連携しながら、みちびきの高精度測位を活用したドローン観測サービスの実用化を目指していく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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※ヘッダ及び本文中の画像・図版提供:株式会社ファンリード