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JR東日本メディアが、災危通報対応のデジタルサイネージ用STBを開発

2020年02月03日

ディスプレイや大型LEDビジョンなどに広告や案内情報を映し出す「デジタルサイネージ」は、ポスターや看板のように貼り替えの手間がなく、時間帯や曜日で表示情報を変更できるほか、動画が使用できる点なども注目されて、最近、繁華街や駅の構内などで目にする機会が各段に増えてきました。このデジタルサイネージを始めとする駅サインボードの製作・保守、電車内や駅ポスターの提出・撤去などの事業を展開するJR東日本メディア株式会社は、みちびきの災危通報(災害・危機管理通報サービス)に対応したSTB(Set Top Box, ディスプレイに接続して特定のサービスやコンテンツを映し出せる機器)「Signadia(シグナディア)」を開発しました。今回は同社を訪ねて、Signadiaの概要と開発に至った経緯を聞きました。

JR東日本メディアの小笠原氏、加藤氏、越氏、岡部氏

左からJR東日本メディア株式会社の小笠原聡氏(デジタルサイネージ担当特別顧問)、加藤博史氏(デジタルイノベーション部 営業推進課 統括シニアリーダー)、越良二氏(同部 部長補佐)、岡部彰氏(同部 開発戦略課 システム開発グループ シニアシステムエンジニア)

STBとして初めて災危通報に対応

Signadia本体

Signadia

外付けGNSSアンテナ

外付けGNSSアンテナ

デジタルサイネージには、ディスプレイにUSBメモリやSDカードを挿して、中に保存したコンテンツを表示するだけのシンプルなものから、ネットワーク経由で管理サーバからコンテンツを配信するクラウドサーバ型などいくつかの方式があります。シンプルな方式は、配信スケジュールや再生時間などを細かく調整することはできませんが、非常に安価です。これに対してネットワークを利用する方式は、コンテンツの差し替えが容易で、遠隔操作で複数台を管理できるなどの利点がありますが、初期投資や毎月の維持管理の費用がかかります。

今回、JR東日本メディアが発売するSignadiaは、これらの方式の長所を兼ね備えたもので、HDMIケーブルを使ってディスプレイに小さなボックスを接続するだけで、すぐにデジタルサイネージの準備を整えられます。100V電源さえあれば、ネットワーク不要で表示でき、スマートフォン型の操作端末を使って、専門業者に依頼しなくても簡単にコンテンツを入れ替えられます。
コンテンツの表示は、日にちや時間、曜日、平日/休日など細かい設定が可能で、先々までの配信内容を予約設定できるスケジュール機能も備えています。電源を落とした翌日も、再び電源を入れると前日最後に表示していたコンテンツが自動的に流れ、停電した場合の復帰も簡単です。ネットワークを利用して管理サーバから配信する仕組みではなく、毎月の維持管理費もかかりません。

概要図

災危通報を受信・表示する仕組み

こうした特徴に加えてSignadiaは、デジタルサイネージ用のSTBとして初めて、みちびきの災危通報に対応しました。ネットワークに接続していないスタンドアロンの機器であるにも関わらず、みちびきから発信された地震や津波などの災害情報をダイレクトに受信し、表示できます。

JR東日本メディアの加藤氏

「インターネットでも多くの災害情報を入手できますが、Signadiaはネット経由の配信でなく、みちびきからダイレクトに受信します。つまり、電源さえあれば、仮にインターネットや携帯電話回線が使えなくなっても災害情報を受け取れるのです。スタンドアロンの使用を前提としたSignadiaにおいて、災害情報の提供を実現するには、みちびきの災危通報が不可欠でした」(加藤氏)

全体表示かテロップのみ表示かを選択できる

静止画モード

画面全体に表示する静止画モード

テロップモード画面例

下部にテキストを流すテロップモード画面例

災危通報の表示は、画面全体に災害情報のテキストと災害発生エリアが分かる簡易地図を表示する静止画モードと、コンテンツ画面の下部にテキストを流すだけのテロップモードの2通りを選べます。表示時間や表示回数、テロップ速度、縦画面・横画面の切り替えなどが可能で、静止画モードで表示するデータ受信エリアも、日本全国を北海道/東北/関東/中部/近畿/中国/四国/九州・沖縄の8つに分ける八地方区分や、気象庁による11地域や4地域の予報区分、そして都道府県別から選択でき、細かく設定可能です。また、表示可能な災危通報データは、緊急地震速報・震源・震度・津波・火山・降灰、気象・洪水・台風・海上の10種類です。

JR東日本メディアの小笠原氏

「開発当初は、みちびきのL1S信号にどのように災危通報の情報が含まれるか全く分かっておらず、そこから文字情報を取り出して画像にするまでは少し苦労しました。静止画モードとテロップモードはいずれも受け取った文字情報をそのまま配信するので、静止画モードでは該当エリアを地図で表示するようにしました。配信される災害情報が多い場合に備えて、画面構成でテキストの表示スペースに余裕を持たせるなど、より見やすい画面を追求しながらデザインを検討しました」(小笠原氏)

L1S対応受信機でSLASにも対応可能

同社はGNSS受信機を搭載したデジタルサイネージ用STBを以前から発売していましたが、その用途はGNSSの電波を利用した時刻合わせが目的でした。今回、災危通報を目的としてみちびきのL1S信号に対応した受信機を搭載したのは、業界でも初の試みとなります。また、L1S信号を受信するため、サブメータ級測位補強サービス(SLAS)に対応可能となりました。バスなどにこのSTBを搭載し、停留所に近づくと位置情報に基づいて広告を表示するといった活用方法も検討しているそうです。
「みちびきの災危通報で日本全国くまなく災害情報が届けられるようになりました。私たちは、みちびきから受け取った情報を一般市民の方々が幅広く見ることができる環境を実現したいと思います」(加藤氏)

大型商業施設のサイネージ例

JR水戸駅前の大型商業施設に設置されたサイネージ(赤枠内)

サイネージ設置時の出力確認で表示された災危通報

設置時の出力確認で災危通報を表示

現在、発売に向けて商業施設や公共施設などへ営業活動を進める中で、みちびきの災害情報を取得する点にも反響があり、導入を検討したいという声も寄せられているそうです。最初の事例としては、2月にJR水戸駅前にオープンする大型商業施設が、Signadiaを使ったデジタルサイネージのシステムを導入します。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

※本文中の製品画像提供:JR東日本メディア株式会社

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