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PALTEKのSLAS対応「GPSトラッカーR」がドコマップと連携

2023年01月30日

横浜に本社を置き、半導体や設計ソフトの販売などを行う株式会社PALTEKはこのほど、みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応した同社の「GPSトラッカーR」が、株式会社ドコマップジャパンが提供する動態管理システム「DoCoMAP(ドコマップ)」と連携すると発表しました。これにより、GPSトラッカーRの位置表示をドコマップの地図上に表示できるようになります。PALTEKでGPSトラッカーRを担当する同社ODM(受託開発)チームの若松範之課長に、DoCoMAPと連携した経緯などを聞きました。

PALTEK若松氏

PALTEKの若松氏

コンテナシャーシに搭載して置き場所を把握

提供イメージ図版

サービス提供イメージ

GPSトラッカーRは、PALTEKが2020年に株式会社エクスプローラと共同で開発したGNSSトラッカーです。みちびきのSLASに対応することで一般的なGPSに比べて高精度な位置情報を取得し、商用LPWAの一種であるSigfox(シグフォックス)を使ってクラウドに送信できます。

物流において船積みや、トラックと連結して運搬する「コンテナシャーシ(輸送用の台車)」への搭載を目的としているのが大きな特徴であり、交換式の一次電池を採用することで、電池駆動でありながら長寿命を実現しています。GPSトラッカーRは本来、高頻度でリアルタイムに位置情報を送信する“動態管理”を想定しておらず、コンテナシャーシがどこに置いてあるか把握するために、低頻度かつ高い精度で“静態管理”を行う端末として開発されました。

若松氏は、位置情報取得にSLASを採用した理由を次のように説明します。
「港湾部のストックヤード(一時保管場所)はコンテナが金属製のため、一般的なGPSでは誤差が大きくなり、ストックヤードに置いてあるのに現在地が海上に表示されることもあります。そのため、誤差のばらつきが少ないSLASを採用しました」

高い耐環境性能と低価格を両立

若松氏は以前、株式会社エクスプローラに在籍しており、その時にみちびきを利用した実証事業に応募・採択されて、GPSトラッカーRのプロトタイプとなる無線ICタグ付きの位置トラッキングデバイスを開発しました。
GPSトラッカーRは、このプロトタイプから無線ICタグ機能を省いてシンプルにした上で、より省電力性、及び耐環境性・耐久性を追求した製品です。サイズは18.9cm×5.6cm×4.2mm(GPSアンテナ含まず)で、電池容量は4,800mAh。動作温度範囲は-15度C~+80度Cで、IP67相当の防水仕様(予定)となっています。アンテナは外付けで、約5mのケーブルを延ばしてコンテナの天頂部に設置し、衛星電波を受信しやすくするように配慮しました。

GPSトラッカーR

GPSトラッカーR

デバイスは樹脂製の筐体を採用し、飛び石などを防ぐためにトラクターヘッド(トレーラーを牽引する車両)と連結する側のコンテナ側面下部に固定して設置します。コンテナに穴を空けてネジ止めすることは難しく、結束バンドで固定するため、デバイスが重いと振動で壊れる恐れがあり、駆動時間との兼ね合いでどれくらいの電池容量にするか決めるのが難しかったといいます。

屋外使用なので筐体は防水性と耐振動性を考慮する必要があり、加えて内部に結露が発生し故障する恐れもあるため、その対策も必要でした。完成するまでさまざまな状況でテストを行い、一つずつ改良を重ねながら開発を進めました。
「耐環境性能と価格のバランスを考え、どこで折り合いを付けるかが悩みどころでした。運送業界にはこうした製品を気軽に使いたいという思いがあり、コンテナシャーシ1台ごとに1個ずつ付けなければならず、低価格を追求しました」(若松氏)

GPSトラッカーRは1日4回6時間おきのタイミングで位置情報を取得する設定で、これでバッテリーは1年間保ちます。要望に応じて取得タイミングをカスタマイズでき、もっとも頻度を高くした場合は10分おきに取得することも可能です。ただ、取得頻度を高くすると、当然ですがバッテリーの消耗が激しくなります。
「2019年の実証事業から今年まで、実用化に時間がかかった理由は、位置情報の取得頻度とバッテリー容量のバランスをどうするか悩んだためです。お客様によって事情が異なり、高頻度で取得したい方がいる半面、1日4回で十分という意見も多く、最終的に1日4回の位置情報取得を標準仕様として実用に至りました」(若松氏)

物流管理者が地図上で一括確認

船積みされてきた貨物用コンテナは、港湾内にあるストックヤードに降ろされた後にトラクターヘッドが来てピックアップします。ただ、広大なストックヤードには似たような大量のコンテナが置かれており、置き場所の間違いも頻繁に起こるため、目的のコンテナを探すには時間がかかります。
そこでPALTEKは、コンテナにGPSトラッカーRを取り付けて定期的に位置情報をクラウドに送信し、ドコマップジャパンが提供する動態管理システム「DoCoMAP」の地図上で置き場所を把握できる新たなサービスを提供開始することにしました。

サービス概要

サービス概要

DoCoMAPでは、以前からドコマップジャパンが提供するシガーソケット給電の「docomap GPS」端末をトラクターヘッドの運転席に搭載することで、リアルタイムの動態管理を実現していました。今後はトラクターヘッドの位置情報に加えて、コンテナシャーシに取り付けたGPSトラッカーRの位置情報も、DoCoMAPのアプリで一括して確認できます。それにより、どのトラクターヘッドがどのコンテナシャーシを運搬中で、どのコンテナシャーシがヤードに置かれているかを、物流管理者が簡単に把握できます。

画面例

地図上にコンテナシャーシの置き場所を表示

新サービスには、位置情報が3日間測位されない場合に行方不明であることを通知したり、設定期間にずっと同じ駐車場にいる場合は不動状態である旨を通知したりする機能も搭載しています。
また、DoCoMAPの背景地図は標準でGoogleマップが採用されていますが、港湾内のストックヤードや物流拠点の駐車場などで位置管理する場合は、オプションでオリジナルのイラストマップを作成するサービスも用意しています(イラストマップ作成には、事前の現地調査が必要です)。

新サービスは現在、物流会社6社に試験提供中であり、正式提供が決まれば、GPSトラッカーRの端末、及びDoCoMAPの1年間の利用料込みで1台につき約2万円で提供する予定です。

イラストマップ

駐車場のイラストマップ(暫定版)

付加価値を提供して顧客の課題を解決する

PALTEKは今後、GPSトラッカーRをさらに改良しながらこのサービスを広げていく方針です。トラクターヘッド用の「docomap GPS」端末についても、自社で同様の製品を新たに開発する予定はなく、ドコマップジャパンの代理店として一緒に販売していく予定です。
「基本的に、誰かが抱えている悩みを解決するという“課題解決型”の会社なので、まだ誰も提供していないサービスを生み出して、『こういう便利なものがありますよ』と提案していきたいと考えています。まずは、このGPSトラッカーRを少しでも普及させていくことが当面の目標です」(若松氏)

衛星測位機能を活用したクラウドサービスの提供では、課題に応じた製品の付加価値が大事であり、GPSトラッカーRも当面は物流分野に絞って展開していきます。
「新しい分野で上手く連携していただけるパートナーが見つかれば別ですが、何の知見も持たずにただ『位置情報を取得できる』というだけでは、なかなか市場に伝わりません。当社の場合、まずサービスをしっかりと選び、そこに絞ってハードウェアを開発するという姿勢を大事にしています」(若松氏)

自動運転の時代を迎え、仮にトラクターヘッドが自動で運転されたとしても、コンテナシャーシの正確な位置が分からなければ、自動で迎えに行けません。
「コンテナシャーシの位置をきちんと管理できる当社のサービスであれば、将来のテクノロジーにも対応できると思います」(若松氏)という考えのもと、同社は今後もみちびきの技術を活用し、物流分野に注力してサービスを提供していく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

※記事中の画像・図版提供:株式会社PALTEK、株式会社ドコマップジャパン

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