コンテンツです

NEXCO東日本、みちびきのCLASによるロータリ除雪車自動化を推進

2021年02月08日

北国の冬には欠かせない除雪作業は、多種多様で熟練を要する作業ですが、労働人口の減少や熟練者のリタイアによって技術伝承が困難であるという課題に直面しています。そこで東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)は、非熟練オペレータでも安全・確実に作業できる環境の構築のため、冬期の高速道路管理に不可欠な雪氷対策の高度化・効率化・安全性向上を目指して開発に取り組んでいます。

ロータリ除雪車

高精度測位による位置情報で除雪車を制御

NEXCO東日本の北海道支社では、このような雪氷対策高度化システムを「ASNOS(アスノス、Advanced/Autonomous Snow and ice control Operation Systemの略)」と名付け、その一環としてロータリ除雪車の自動化を目指して開発を進めています。ロータリ除雪車は、オーガと呼ばれる雪を掻く装置で路肩部の雪を掻き込み、シュートで路肩へ吹き飛ばす除雪用の車両で、およそ時速3~5kmの速さで走行します。

ロータリ除雪車

ロータリ除雪車

同支社では2017年度にみちびきを活用した運転支援システムを開発し、試行導入しました。この時に導入した運転支援システムは、センチメータ級測位補強システム(CLAS)による高精度測位と、あらかじめ作製した高精度三次元地図情報を組み合わせることにより、車両の正確な位置、路肩に設置されている非常電話や排水マスなどの位置を運転席のガイダンスモニター上に表示して除雪作業を支援するシステムでした。
このシステムをさらに発展させて、除雪車の位置情報と除雪車の作動制御装置を連動させることで自律走行及び作業操作の自動化を目指しており、2020年9月に同支社の夕張ICテストフィールドにて自律走行を初めて確認し、同年11月にメディアに向けて公開実験を行いました。この公開実験では、オペレータが乗車した状態で、ステアリングやブレーキに触れることなく自動的に走行操舵する様子が公開されました。

試験走行

オペレータが両手を上げた状態での試験走行

除雪作業は、日によっては積雪や吹雪による視界悪化で白線やガードレールなどの構造物が見えなくなることもあります。本システムを使えば、そのような状況でも、構造物の位置情報を認識して自動的に運転や除雪作業を行えます。
NEXCO東日本・北海道支社の臼井和絵氏(技術部 技術企画課 課長代理)によれば、現在は、除雪車の操舵とオーガの操作を担当する人と、シュートの方向や安全の確認を担当する人の2名で行っている除雪作業を、自動化により1名で行うことを目指しているのだといいます。

車体の傾きで生じる位置情報の誤差をIMUで補正

高速道路の路肩は2.5~3mくらいで、路肩と走行車線を分離する白線の幅は20cmです。その範囲内で、車幅2.2mのロータリ除雪車を走行車線にはみ出さないよう走行させるには、一般的な衛星測位では難しく、高精度な測位技術が必要です。
北海道支社の阿部勝義氏(技術部 技術企画課 課長)は、除雪車の位置を測る方法としてみちびきのCLASを選んだ理由について、「設置やメンテナンスにかかるコストなどを総合的に検討した結果、みちびきのCLASを主体に開発することに決めました」と説明します。

AQLOC-LightとIMU

運転席の受信機「AQLOC-Light」とIMU(慣性計測装置)

CLASの受信機は、三菱電機株式会社のAQLOC-Lightを使用しており、アンテナの取付位置による精度誤差の検証などを行いました。
「除雪車は普通の車と違って、ボディを屈曲させて操舵を行うため、アンテナの取付位置によって誤差が大きい箇所と少ない箇所があることが分かりました。どこに取り付けたら良いかを検証した結果、前輪車軸中央上に設置しました」(ネクスコ・エンジニアリング北海道 交通環境課 栗原啓伍氏)

アンテナ

アンテナは前輪車軸中央上に設置された

開発時に苦労した点として、ロータリ除雪車の車高の高さが挙げられます。除雪車の車高は3m以上と一般車両に比べてかなり高く、少しでも車体が傾くと路面の位置情報とのズレが大きくなってしまいます。
「高速道路は排水のために横断勾配が2~3%程度付けられており、もともと路肩が傾いていることに加え、雪道の凹凸による傾きも生じます。実際には位置が変わっていないのに、傾きによって動いていると認識してしまうため、傾斜の補正を行うのに苦労しました。IMU(慣性計測装置)の情報を使うことで、車両の姿勢的な要因による誤差を解決しました」(ネクスコ・エンジニアリング北海道 交通環境課 伊藤俊明課長)

操作席

タブレットPCが置かれた操作席

他には、高精度な位置情報をもとに、油圧によるステアリング機構を使って操作を細かく制御できるように調整する点にも苦労したと説明してくれました。実験公開を行ったテストフィールドのコースは、実際の高速道路よりも曲線半径が小さなカーブで構成され、より厳しい条件でのテストとなりましたが、オペレータが完全に手を放した状態で、カーブに沿ったスムーズな自律走行を披露しました。

公開実験の様子

公開実験の様子

精度向上や機能強化で2022年度までに実用化へ

今後の課題は、事前に作製する高速道路の高精度三次元地図の整備です。ここで、いかに高精度な地図を整備するかが重要なポイントとなります。高精度三次元地図の作製はMMS(モービルマッピングシステム)と呼ばれる車両を使って行いますが、山間部を走行する際などに衛星測位の電波状況が悪くなることがあり、一部区間で精度が低下した場合に、それを上手く補正しなくてはなりません。

また、除雪車自体の測位精度についても、最適な測位機器の選定によるさらなる高精度化を目指すと共に、安全対策として路肩に停車している一般車両を検知するためのセンサーの搭載、自律走行だけでなくシュートで雪を吹き飛ばす操作の自動化など、実用化に向けたさまざまな研究を進めていく予定です。

スタッフ集合写真

1月27日の走行試験に参加した10人。写真右から株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道 交通環境課の伊藤課長・小倉氏・河村氏、NEXCO東日本 北海道支社 技術企画課の渥美氏・阿部課長・臼井課長代理、NEXCO東日本 帯広管理事務所の生方所長・中野工務担当課長・村田氏と、運転席に乗るオペレータの堂坂氏(ネクスコ・メンテナンス北海道 帯広事業所)。他にも多数のメンバーが参画し、自動化が進められている

「CLASを活用した除雪車の走行制御については雪上を除き一定の目途がたったので、今年度は雪上での挙動の確認と精度向上を図ります。今後のロードマップとして、来年度はシュート装置の自動操作化の開発及び精度向上、さらに高速道路本線での試験を行った上で、2022年度内の実用化を目指しています。まずは雪の多い岩見沢IC~美唄IC間の区間への導入を予定しており、その後は順次、北海道の他のエリアにも広げていきます。除雪車の制御をすべて人力で行う従来のやり方では長時間の作業は難しいですが、監視するだけで済むのであればオペレータの負担が軽減し、結果として長時間の作業が可能となり、雪害に対してより強力な対処が期待でき、冬の高速道路の安全安心に繋がります」(臼井氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

関連ページ

※ヘッダ及び本文画像提供:東日本高速道路株式会社