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ゼンリンデータコム、大分県でトラックから離発着するドローン配送の実証実験

2019年07月04日

人口減少が進む中、過疎地においては宅配物の共同配送などにより物流コストを下げる取り組みが始まっています。そこで注目されているのがドローンなどの新たな技術を活用した荷物配送の仕組みです。限界集落の集配所に届いた荷物を各家庭に届ける際に、ドローンを使えばラストワンマイルの配送を効率化できます。株式会社ゼンリンデータコムは、このような新たな物流を見据えたドローン配送の実証実験を大分県杵築市で実施しました。この実証実験は、内閣府と準天頂衛星システムサービス株式会社が2018年度に公募した「みちびきを利用した実証実験」の1つとして採択され、今年2~3月に行われました。

限界集落におけるラストワンマイルのドローン配送

ゼンリンデータコムの出口氏

ゼンリンデータコムの出口氏

ゼンリンデータコムの出口貴嗣氏(経営企画本部 副本部長)は、今回の実証実験を行った理由を次のように説明します。
「みちびきの高精度な測位技術には以前から注目していて、何かに応用できないかとずっと考えていました。当社はカーナビゲーションに加えて、物流トラックなどにGNSSトラッカーを搭載して位置情報を取得する動態管理ソリューションも提供しています。みちびきとドローンを組み合わせれば、これをもっと高度化できると考えました」

トラック物流の限界を補完する形でのドローン活用については、各社でさまざまな実証実験が行われています。しかし、限界集落でトラックからドローンを飛ばし、個宅の庭に直接荷物を届けるといった想定の実験は、これまで例がありません。ゼンリンデータコムは、ドローンとみちびき、物流という3つの要素を統合した実証実験を、この想定で行ったのです。

トラックから個宅の庭にドローンで直接届ける(提供:ゼンリンデータコム)

トラックから個宅の庭にドローンで直接届ける(提供:ゼンリンデータコム)

「限界集落では今後、道が細くトラックが通りづらいなどの理由で個別配送が難しい場合、集落の集配所に荷物をまとめて届け、各家庭からそこへ荷物を取りに行くといったケースが増えていくと予想されます。その際の集配所から各家庭までの配送、つまり“ラストワンマイル”にドローンを活用すれば、車の運転が困難な高齢者でも日用品や薬などの生活必需品を確実に受け取ることが可能となり、利便性が大きく向上すると思いました」(出口氏)

2トントラックの上部でドローンの自動離発着

実証実験では、みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)に対応したGNSS受信機をドローンに搭載し、トラックからの自動離発着を行って高精度測位と制御技術を検証しました。

黄色線はドローンの飛行経路。自動飛行は地点間のウェイポイント(Way Point)上空を通過するように設定されている(提供:ゼンリンデータコム)

黄色線はドローンの飛行経路。自動飛行は地点間のウェイポイント(Way Point)上空を通過するように設定されている(提供:ゼンリンデータコム)

スタート地点(A地点)に停車したトラックの上部からドローンが自動離陸し、配送先の個宅の庭(B地点)まで飛行して着陸します。その間にトラックはA地点からドローン回収ポイント(C地点)へと移動し、B地点で荷物をリリースしたドローンは再び離陸し、トラックが待機しているC地点へと飛行して自動着陸するという流れです。

利用機体DJI-S1000(提供:ゼンリンデータコム)

利用機体DJI-S1000(提供:ゼンリンデータコム)

なお、A地点とB地点の間と、B地点とC地点の間にはそれぞれ仮想のウェイポイントを設定し、飛行する際にはその地点を通過するようにしました。これは、飛行の際にドローンが飛行可能なエリアを選んで飛べるかどうかを検証するための措置です。

利用機体はDJI社の「S1000」で、受信機にはマゼランシステムズジャパン株式会社の「MJ-3008-GM4-QZS」を使用し、モバイルクリエイト株式会社及びciRobotics株式会社が開発に協力しました。

出口氏は実験にあたって苦労した点をこう説明します。
「ある程度、着陸の精度が保たれないとドローンがトラックから落ちる危険性があります。みちびきの高精度測位がきちんと行われるかだけでなく、取得した高精度な位置情報を使ってドローンを正しく制御できるかという点も課題です。また、測位や制御が上手くいっても、強い風などの影響があれば誤差が大きくなる可能性があります。そこで、考えられる要因を洗い出し、それがコントロール可能かを事前に検証した上で2回のテスト飛行を行い、3回目にようやくメディアに向けてオープンな形で実証実験を行いました」

事前検証では、最初はトラック上部への着陸は行わず、地上にどれくらいの精度で着陸できるかを検証しました。この事前検証で、CLASを使えばほぼピンポイントに着陸できることを確認できたといいます。

ゼンリンデータコムの輿石(こしいし)氏

ゼンリンデータコムの輿石(こしいし)氏

今回の実証実験で使ったトラックは、実運用でも使えることを前提として選定しました。この点について、出口氏と一緒に実証実験を行ったゼンリンデータコムの輿石亘氏(ITS本部 ITS第二事業部 リーダー)は次のように説明します。

トラック上で離発着するドローン(提供:ゼンリンデータコム)

トラック上で離発着するドローン(提供:ゼンリンデータコム)

「今回は山間部の運用を想定して2トントラックを使いました。このサイズのトラックでは、上部のドローンが離発着するスペースは約3m×1.8mになります。ここにはドローン離発着用に特別な機器を設置したりはしませんでしたが、ランディング時の安定を考えてドローンマットを敷きました。ドローンの制御は、画像解析など他の技術は使わず、CLASを含めた衛星測位だけを使用しました」

なお、着陸地点の位置情報にも、当然ながらセンチメータ級の精度が求められます。そこで三菱電機製のCLAS対応受信機「AQLOC」を使用してA・B・C地点の位置情報を取得し、それをもとにトラックの停止位置を決め、道路に付けた目印に合わせてトラックが停車するようにしました。

センチメータ級測位の精度を検証

今回の実証実験では、3日間にわたりトラックからの自動離発着を行い、CLASの精度を検証しました。
「CLAS受信機によるセンチメータ級の測位補強信号の受信が確認できましたが、実際にドローン制御を行う場合、当然ながら着陸した地点と目標との距離は大きくなります。今回は特に屋外で風の影響を受けた時にどれくらいこの距離に影響が出るのか注目していました。結果は、やはり飛行中の風速の変化が激しい時は距離も大きくなる傾向が見られました。たとえば着陸時には風が止んでいても、その直前に風が吹いていると、ドローンが制御により位置を合わせようとした結果、距離が大きくなってしまいました。とはいえ、CLASでは着陸した地点と目標との距離が最大約50cm(最小は11cm)に収まっていますので、トラック上でのドローンの離発着が十分可能ということは確認できました」(輿石氏)

出口氏(左)と輿石氏(右)

出口氏(左)と輿石氏(右)

トラック上でのドローン離発着の可能性に手応えを感じた一方、今後の課題も浮き彫りになりました。それぞれに伺うと、出口氏は荒天の際の対応を課題に挙げました。
「今回の風はそれほど強くなかったのですが、実際の運用ではもう少し強い風が吹く日もあるでしょうし、雨の降る日もあります。そうした条件でも安全なフライトを実現するには、みちびきの高精度測位をもとにドローンの制御技術をもう少し改良する必要があると思いました」(出口氏)

一方、輿石氏は都市部での活用など将来の運用イメージを語ってくれました。
「今回はオープンスカイの環境でしたが、都市部ではどうしてもマルチパスの影響が見られます。安定性を高めるためにも、みちびきの7機体制実現に期待したいです。CLASの精度の高さは十分に分かりましたので、あとはこれを実社会にどう応用していくかが重要だと思います。物流以外でも、災害時にドローンで物資を避難所へ運ぶといった、さまざまな利用の仕方を検討していきたいと思います」(輿石氏)

出口氏は「今後は、より社会実装に近い形での実証実験を検討したい」と意気込みを語っており、今後もみちびき活用のさまざまな可能性を模索していく方針です。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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