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ボールドライトによるSLAS対応トラッキングシェアシステム

2020年03月09日

ボールドライト株式会社は、みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応したモビリティトラッキング用のIoTデバイス(GNSSトラッカー)と、その稼働状況のマップ表示、及び周辺情報の掲載を統合したトラッキングシェアシステム「AUBIT DIGITAL(オービットデジタル)」を2020年1月から提供しています。
これは、LTEなどの通信機能を搭載したGNSS端末をバスやトラックに搭載し、デジタルマップ上でリアルタイムに位置情報を管理できる動態管理システムです。同社は自治体や企業向けオリジナルマップ作成ソリューション「プラチナマップ」を2019年に発売しました。同社では今後マップ上での情報の統合と可視化が必要になると考えており、まず地図上に施設情報を表示させるプラチナマップを開発しました。その後、当初より予定していたみちびきの高精度測位を導入した移動体の表示システムであるAUBIT DIGITALの提供を開始しました。

AUBIT DIGITALのマップ画面

AUBIT DIGITALのマップ画面(画像提供:ボールドライト株式会社)

SLASで観光客に現在位置を示す

FB102

車載のFB102(画像提供:ボールドライト株式会社)

AUBIT DIGITALで使用するGNSSトラッカーは、みちびきのL1S信号を受信できて、SLASに対応したフォルテのFB102です。5秒に1回の頻度で誤差約1mの位置情報を送信でき、自動車のダッシュボードなどに設置してシガーソケットに電源をつなぐだけですぐに使用できます。

ボールドライト株式会社の宮本章弘・代表取締役は、このトラッカーを採用した理由を次のように説明します。
「AUBIT DIGITALはB2B(Business to Business)の動態管理システムとは異なり、エンドユーザーがマップを見て楽しむためのサービスです。そのため、移動体の表示ができるだけ滑らかに見えるように(高精度な位置情報を取得できる)SLAS対応のデバイスを採用しました」

宮本氏

ボールドライトの宮本氏

これまでの動態管理システムは社内向けの配送管理などの用途が多かったのですが、このサービスは主に「観光客にマップ上で乗り物の動きを見せる」ことを目的に開発されました。1年前に発売されたプラチナマップも観光協会や旅行関連事業者などの顧客が多く、発売後に「デジタルマップ上でバスなどが走っている様子を見せたい」という要望が寄せられていたそうです。

AUBIT DIGITALでは、デジタルマップ上でバスなどが移動する様子が軌跡付きのアニメーションで表示されます。公園内や海上など道路以外で使うことも見据えて、位置情報を表示する際、地図上の道路の位置に自動的に補正する「マップマッチング」の手法は使わず、取得した位置情報をそのまま地図に表示する点も特長となっています。

位置情報の送信は5秒に1回の頻度で行います。取得した位置情報の間が滑らかに表示されるようにアニメーションで補完するアルゴリズムを構築し、車のアイコンが連続的に動いているように見せています。こうすることで観光客にバスの動きを分かりやすく伝えることができます。宮本氏は、みちびきのサービス開始時からSLASにとても注目していて、もしトラッキングのサービスを提供するならSLAS対応のトラッカーを使おうと以前から考えていたそうです。

宮本氏は、アイコンの滑らかな動きを実現するには位置情報の精度が非常に重要だとして、「実際に現場で使ってみたところ、思った以上に正確な位置情報を取れました」とSLASの精度を高く評価しています。

リアルタイムの位置情報で観光地をサポート

SLAS対応のほかにも、AUBIT DIGITALにはさまざまな特長があります。背景地図はGoogleマップ以外にMapboxやMaptilerなどを選択可能で、予算とニーズに合わせて選ぶことができます。地図上に掲載する施設情報はユーザーが簡単に登録でき、登録した施設は写真のサムネイルが入ったアイコンとして地図上に表示されるため、地図を見ただけでどんな施設かひと目で分かります。乗り物の名前やタイプ、カラーなどのビジュアルを自由に設定できます。

ビジュアルを自由に設定可能

各モビリティのビジュアルを自由に設定可能(画像提供:ボールドライト株式会社)

公共交通の時刻表と地理情報に関する標準形式のGTFS(General Transit Feed Specification)に対応しているのも特長の一つです。手持ちのGTFS形式のファイルをインポートすることで、AUBIT DIGITALに時刻表やバス停などの情報を簡単に登録できます。また今後、GTFSフォーマットに対応したデータをエクスポートして「Google乗換案内」に登録することで、Googleマップの検索でバス情報を見られるようになる予定です。さらにその後、リアルタイムの運行状況に関するオープンフォーマット「GTFSリアルタイム」も対応を計画しています。

マップ画面

大阪ワンダーループバスのマップ画面(画像提供:ボールドライト株式会社)

大阪市内観光周遊バス「大阪ワンダーループバス」と大阪市内の水路を巡る「大阪ワンダークルーズ」が、2020年3月からAUBIT DIGITALを導入しました。また、奄美大島の株式会社しまバスも採用を決定し、島内のバス20台に導入予定です。

誤差約1m、みちびきの高精度測位に期待

欧州では、従来型の交通・移動手段にシェアリングサービスなども統合して次世代の交通を生み出す「MaaS(Mobility-as-a-Service、マース)」と呼ばれる考え方が広がりつつあります。これは、運営主体にかかわらずマイカー以外の全ての交通手段によるモビリティ(移動)を一つのサービスとして捉える動きです。

宮本氏は、日本でもこれからMaaSの時代が訪れようとしている中で、みちびきの高精度測位が重要な役割を担うと考えています。
「MaaSでは自動運転や乗り物同士をどう繋げるかといった点が注目されていますが、その先で重要となるのは、どう移動するかではなく、何をしたいかという『目的』であり、移動体の位置の可視化に加えて、周辺にどんな施設があるか、どんな体験ができるかといった情報が一体となって、初めてMaaSというものが完成します」

その目的に沿って、観光と高精度なトラッキングを組み合わせたサービスとして開発されたのがAUBIT DIGITALという訳です。
「MaaSにおいては、『これから来る乗り物は左右どちらの車線にあるか』や『公園の中のどこに自転車があるか』といった細かい位置情報が必要となります。SLASによって誤差約1mの精度で位置を探していくことが重要だと思います」(宮本氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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