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国交省北陸地方整備局がCLASを活用して除雪トラックの実証実験

2021年03月22日

高齢化が進む中、雪国では除雪車オペレータの人員不足が課題となっています。国土交通省 北陸地方整備局は、熟練度の低いオペレータによる除雪車の運転支援を目的に、みちびきのセンチメータ級測位補強システム(CLAS)を活用した除雪トラックのマシンコントロール化に取り組んでおり、2020年冬、新潟県阿賀野市と南魚沼郡湯沢町の一般国道において実証実験を行っています。担当する北陸地方整備局 北陸技術事務所(北陸雪害対策技術センター)の小浦方一彦氏に話を聞きました。

小浦方氏

小浦方氏

MMSの3次元地図データとCLASによる測位

北陸地方整備局は2018年度、除雪トラックのマシンコントロール化に先立って、路上の障害物を検知して知らせる作業ガイダンス装置を開発しました。この装置は、マンホールや橋梁ジョイントなどの障害物、縁石や中央分離帯などの構造物との接触事故を防止するため、作業注意区間への接近を画面表示と音声によって警告します。ここで障害物や構造物への接近を検知するのは、国土地理院の基盤地図情報をベースにした、ネットワーク型RTK測位による位置情報でした。

画面例

作業ガイダンス装置の画面例

今回のマシンコントロール化ではシステムをさらに発展させ、MMS(Mobile Mapping System、モービルマッピングシステム)で取得したレーザー点群データから、障害物・構造物の情報を抽出した高精度3次元地図データを作成しました。みちびきのCLASによる測位で取得した除雪車の高精度位置情報と3次元地図内の動作基準点が一致すると作業装置が動作します。精度の高い自車位置情報と、精度の高い地図データを使って行うマシンコントロールという訳です。

フロントプラウ

フロントプラウ

グレーダ装置

グレーダ装置

除雪トラックには、車両前面で新雪を押しのける「フロントプラウ」、通行車両に踏まれて路面に固着した圧雪を削り取る「グレーダ装置」、シャッタを閉めて雪を一時的に抱え込む「サイドシャッタ」などの作業装置が搭載されています。現在行っている実証実験では、このうちサイドシャッタのマシンコントロール化について除雪現場での作動を確認しました。

サイドシャッタ

サイドシャッタ

サイドシャッタは、交差点などの、除雪した雪を置いてはいけない区間でシャッタを閉めて一時的に雪を抱え込みます。交差点など特定区間での開閉動作になり、位置情報のみで制御が可能である点、そして動作時の安全性なども考慮した結果、まずこの装置の実験を行いました。

除雪トラック

実証実験に使用した除雪トラック

CLASを選んだ理由は測位精度とコスト

2012年にスタートした北陸地方整備局による除雪車へのICT(情報通信技術)活用の取り組みでは、最初は測位方式としてネットワーク型RTKを利用していました。しかし、2017年度からみちびきのCLASを導入する検討を開始しました。
「CLASに切り替えた理由は測位精度とコストです。ネットワーク型RTKとコスト等を比較した結果、通信料金が不要でセンチメータ級測位補強サービスが提供されるCLASに行き着きました」(小浦方氏)

CLAS対応アンテナ

除雪トラックの上部に設置されたCLAS対応アンテナ

CLAS対応受信機は、運転席の上部にアンテナを設置しています。CLASの測位をもとに実際にマシンコントロール化を行った感想を小浦方氏に聞くと、「一般にGPSなどが誤差10m程度といわれており、自動化に採用した場合、動作させたい位置とは違う場所で作業装置が動くことになりかねません。今回採用したCLASは公称値で(移動体での)水平誤差12cm、垂直誤差24cmの精度があり、除雪車の自動化に使えると判断しました」と話してくれました。

オペレータ同乗でシャッタ開閉タイミングを調整

CLASを導入した開発で苦労したのは、除雪トラックの作業速度の速さでした。
「除雪トラックは、除雪車の中で作業速度がもっとも速く、平面交差点のある区間でも時速30km前後になります。これだけ速く動く移動体で、衛星測位を反映させながら作業装置を動かすとなると、タイミングが合わない場面も出てきます。さらに作業装置自体が油圧で動いており、その動作時間も見込む必要がありました」(小浦方氏)

こうしたタイミングのずれを考慮しながら、車速が速い時も遅い時も同じタイミングでサイドシャッタが動くように調整するのに苦労したといいます。

除雪トラック

実証実験中の除雪トラック

また、MMSで取得した高精度3次元地図についても課題がありました。センターラインや電柱、標識など、路上にはさまざまな構造物があり、それらをすべて地図に入れ込もうとすると車両側の処理能力が追いつかないので、どの情報を入れるか取捨選択したうえで地図データの加工が必要でした。

これらの課題を一つずつクリアしながら開発を進め、ようやく実証実験にこぎつけることができました。
「オペレータにも実際に同乗してもらい、マシンコントロールの意見を聞きました。サイドシャッタを動かすタイミングが早いか遅いかといった感想を聞き、細かく調整した結果、これなら実際の除雪現場で使えるだろうとの評価をいただけました」(小浦方氏)

サイドシャッタの開閉を自動化

サイドシャッタの開閉を自動化

サイドシャッタの動作状況

サイドシャッタの動作状況を確認しながら実験

今後はフロントプラウやグレーダ装置の実証実験へ

今回の実証実験ではサイドシャッタの開閉作業を自動化しました。今後はフロントプラウやグレーダ装置の自動化に取り組んでいきます。フロントプラウとグレーダ装置の自動化は現在、試作ユニットによる構内試験を進めており、来年度以降に供用中の道路での実証実験も行う予定です。

フロントプラウの構内試験

フロントプラウの構内試験

「フロントプラウは、進行角(雪を流す方向)を調整する制御を自動化します。たとえば交差点に入るまでは、左に30°フロントプラウを傾けて、除雪した雪を路肩側(車線の外側)へ寄せていきますが、交差点内では寄せた雪が置き去りにされて、通行車両の支障とならないよう、フロントプラウを水平にして雪を前へ押していきます。グレーダ装置は伸縮することで除雪する幅を調整することができます。こうした制御を自動で行えるようにします」(小浦方氏)

除雪機械オペレータ年齢構成の推移図

新潟・富山・石川県における除雪機械オペレータ年齢構成の推移(一般社団法人日本建設機械施工協会 北陸支部調べ)

トンネルや山間部等における電波の受診状況への影響について確認する必要もあり、C LASの位置情報をもとにした作業装置の自動化には完成まであと数年かかる見込みです。
「除雪作業に従事する方の年齢構成を見ると、17年前の1998年度では50歳以上が29%と全体の3割以下の比率なのに対し、2015年時点では50歳以上が4割を占めるなど、オペレータの高齢化が進んでおり、担い手の確保が大きな課題となっています。作業装置を自動化してオペレータの負担を減らすことで、除雪という仕事をだれもが就きやすい職業にできればと思います。その目的を達成するために、これからも開発を続けていきます」(小浦方氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

参照サイト

ヘッダ及び本文中の画像提供:国土交通省 北陸地方整備局