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セイコーグループ、機械式腕時計の精度検定にみちびきを活用

2019年07月22日

測位衛星が発信する信号には正確な時刻情報が含まれており、電波を受信することでさまざまな機器の「時刻合わせ」をすることが可能です。今回は、みちびきが提供する時刻情報を、機械式時計の精度検定システムに採用した事例を紹介します。

セイコーソリューションズ株式会社は、ネットワーク内の機器を時刻同期させるための機器やシステムを、通信、電力、放送、金融などの多様な業界に提供しています。システムの核となる「グランドマスタークロック(GMC:Grandmaster Clock)」は、みちびきやGPSなど測位衛星の原子時計に、内蔵の小型原子時計や高精度水晶発振器を同期させ、ネットワーク内に供給するタイムサーバーの役割を果たします。
同社のグループ会社であるセイコーインスツル株式会社は、高級機械式時計の製造を行う盛岡セイコー工業株式会社の検査工程のシステム刷新に際し、このグランドマスタークロックを核に据えた「時計精度検定システム」を構築し、機械式時計の検定手法を向上させました。

17日間に及ぶ検定試験

雫石高級時計工房

雫石高級時計工房(画像提供:セイコーインスツル株式会社)

機械式腕時計は、ぜんまい、歯車、てんぷなど、200を超える精密なパーツで構成されています。中でも同社のフラッグシップとなる「グランドセイコー」9Sメカニカルは、機械式でありながら1日当たりの時間の進み遅れ(日差)がわずか数秒と、機械式時計としては高い精度を誇ります。

その精度を実現するため17日間に及ぶ検定試験を行っています。6方向の姿勢差、3段階の温度など、さまざまな条件のもとで、基準値内に収まったものだけが合格品として出荷されます。この機械式時計の検定に、測位衛星の原子時計を原振(げんしん=時刻・周波数の基準)としたシステムが使われています。

1秒に6~10回刻む秒針の動きを連続撮影

具体的には、1秒当たり6~10回のステップ動作する秒針の位置を、カメラで高速撮像し、個々の画像にグランドマスタークロックに同期したタイムスタンプを付与します。そして画像処理と演算の応用により、秒針のステップ間隔時間以下で、どのレベルの精度が実現しているか、把握が可能となります。

時計精度検定システム

時計精度検定システムのイメージ(画像提供:セイコーソリューションズ株式会社)

セイコーソリューションズの橋本直也氏(ネットワークソリューション本部 ネットワークソリューション技術統括部 NS開発部 NS企画開発課 担当課長)に、システムについて聞きました。

セイコーソリューションズの橋本氏

セイコーソリューションズの橋本氏

「衛星測位では複数の衛星信号を受信する必要がありますが、グランドマスタークロックは定置運用されるので、いったん位置が確定すれば、1機の衛星信号だけで正確なUTC(協定世界時)同期が維持できます。高仰角であるほどマルチパスの影響が小さく、地上からの電波障害への耐性も高まりますから、その1機がみちびきであるケースが多くなると思っています」

同システムには国産のGNSS基準周波数発生器(FURUNO GF88シリーズ)が使われており、衛星も含めたオールジャパン体制の時刻同期システムとして、「みちびきが天頂付近に位置するアジア・オセアニアの広い地域で生かせるはず」(橋本氏)と期待を語ってくれました。

(取材・文/喜多充成・科学技術ライター)

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