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[実証2025-1] コア:木材トレーサビリティ効率化と伐採情報真正性の実証

2026年07月13日

内閣府は準天頂衛星システムサービス株式会社と連携して毎年、みちびきの利用が期待される新たなサービスや技術の実用化に向けた実証事業を国内外で実施する企業等を募集し、優秀な提案に対して実証事業の支援を行っています。
今回は、2025年度に株式会社コア 中四国カンパニーが、NECソリューションイノベータ株式会社、地方独立行政法人山口県産業技術センター、一般社団法人森林CO2クレジット協会と共同で実施した「みちびきによる木材トレーサビリティの効率化と伐採情報真正性についての実証」の取り組みを紹介します。実証は、株式会社佐久(宮城県南三陸町)、一般社団法人リフォレながと(山口県長門市)、かつらぎ町森林組合(和歌山県かつらぎ町)の協力を得て、各市町の山林で行われました。プロジェクトを取りまとめたコア 中四国カンパニーの板屋真一郎氏(営業統括部 営業企画課長)に話を聞きました。

顔写真-関係者4人

(左から)今回実証について話を聞いたコア中四国カンパニー・板屋氏と、実証の取り組みに加わったNECソリューションイノベータ・深田彰氏、山口県産業技術センター・藤本正克氏、リフォレながと・三好聡氏

合法的に伐採された木材や木材製品の流通と利用を促進し、違法伐採の取り締まりによる木材価格の維持や森林資源の保護を目的とする「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(通称:クリーンウッド法)」が2017年に施行されました。この法律は2025年に改正法が施行され、木材関連事業者に合法性の確認や報告が義務付けられました。しかし、現状では素材生産者への義務付けにとどまり、どこで伐採された木材かを明確にするトレーサビリティ(追跡可能性)の確立が課題となっています。
こうした状況の中でNECソリューションイノベータは、情報改ざんを困難にすることができるブロックチェーン技術を活用して、伐採後の出荷から販売までの木材トレーサビリティを実現するシステムを開発しました。このシステムは、1)伐採段階で作業員がどこで木材を伐採したか等の情報を入力するのは現場での作業負荷が高く、2)位置情報を自動で取得しようとしても森林現場では衛星測位の位置精度が悪く、3)現状の測位信号では改ざんのリスクがあり伐採地情報に使うには信頼性が不足していたという理由から、伐採情報は対象にせず、市場への入庫時からブロックチェーンに登録する仕組みでした。

図版-01

今回の実証事業の対象部分

今回の実証事業を行うに当たって、コア 中四国カンパニーはNECソリューションイノベータと共同で、みちびきを用いた木材トレーサビリティの効率化を検討しました。その結果、1)みちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)及びCLAS(センチメータ級測位補強サービス)を活用して木材トレーサビリティの伐採情報・運搬情報を自動取得する、2)みちびきの信号認証サービスによって取得した位置情報の真正性を担保する技術を検証することを決めました。また、同時にこの実証に付随する形で、3)伐採時において作業員の正確な位置情報を把握することで、隣地境界確認を効率化すると共に、作業員の安全確保を図る取り組みも行うこととしました。

図版-02

実証事業の概要

コア 中四国カンパニーはみちびきの高精度測位に早くから注目しており、2020年度のみちびきを利用した実証事業にも石灰石の採掘支援で参加していました。今回は林業分野での参画となった点を、板屋氏は次のように説明します。
「当社は以前からスマート林業に注目しており、これまでも森林資源の調査にドローンのソリューションを提供するなど、いろいろな業務で携わっていました。違法伐採による森林破壊が課題となり、クリーンウッド法が改正される中で、認証された木材を積極的に活用しようという取り組みが生まれました。木材のトレーサビリティにみちびきを活用することで、こうした課題の解決につながるのではないかと考えました」

図版-03

重機に搭載したみちびき対応受信機と回転センサー

一般的なトレーサビリティはモノ(生産物)にタグなどを付けて行いますが、木材は重機を使用しなければ運搬できないため、今回の実証事業では木材にタグやGNSS受信機を付けるのではなく、重機の位置情報をもとに木材の移動を追跡しました。これが実現できれば、タグにかかるコストがなくなり、大幅なコスト削減を実現できます。
位置情報の取得は、コアのCLAS対応「Cohac∞ Ten」、CLAS及び信号認証サービスに対応した「Cohac∞ Ten++」、SLAS対応「Cohac∞ QZNEO」の3種類の受信機を重機に取り付けました。

図版-04

運転席付近に受信機を搭載

林業で使用される重機には、立木の伐倒や集積作業を行うフェラーバンチャ(伐倒機械)や、立木の伐倒・枝払い・玉切り及び集積作業を行うハーベスタ(伐倒造材機械)、フォワーダ(積載式集材車両)、グラップルローダー(木材を掴んで運ぶアタッチメントを搭載した特殊自動車)、フォークローダー(先端をフォークに換装した特殊自動車)など様々な種類があり、実証ではそれぞれCLAS対応、及びSLAS対応の受信機を搭載して実験を行いました。

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実証対象となった重機

図版-06

伐採から出荷までの流れと重機

木材トレーサビリティ情報の取得に当たっては、みちびき対応受信機を搭載した重機の位置情報を取得し、1秒ごとに位置と速度を記録することで、データの連続性や指定箇所以外への移動、木材の積み替え不正が発生していないかを検出可能かどうかを検証しました。
また、位置情報だけでは不正な積み下ろしが行われているかどうかを区別することが難しいため、実証では、木材の積込を行うグラップルローダーにM5Stack社の回転センサーを取り付けて、トラックに積み込んだ回数を計測し、1回当たりの積込平均本数をかけ合わせることで出荷量を推定しました。積込回数の計測は、みちびきを活用して取得したグラップルローダーとトラックの高精度位置情報をもとに両者の距離が近づいた時の方位角を測定し、グラップルローダーがトラックの方向を向いている回数を測定することでトラックに積み込んだ回数として計測しました。

図版-07

位置情報をもとに方位角を測定して積み込んだ回数を計測

検証の結果、位置情報の取得により生産場所と積み出し場所を特定し、木材をフォワーダに搭載して生産林から出荷した後に、山土場へ運搬して巻き立て(伐採した木材を貯木場に積み上げること)を行い、そこからトラックに積み込んで木材市場や製材所へ運搬するまでの間、位置情報を連続して取得することでトレースが可能であると確認できました。
ただし、樹木の枝葉で測位電波がさえぎられるなど一部において位置情報が抜けている部分や、位置が飛んでいる部分があり、そうした点では目視確認が必要となります。また、重機が停止している箇所では、休憩や買い物など正当な停止なのか、不正な作業を行っているのかをシステム上で区別する必要があることも分かりました。
取得した測位情報は、当初SLASよりCLASの方がデータにバラつきがある箇所がありましたが、高精度アンテナに切り替えたところCLASの精度が安定しました。板屋氏はこの結果について、「受信機の価格や安定性を考慮すると、林業トレーサビリティではSLASの運用で網羅できると考えられる」と評価しています。

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和歌山県かつらぎ町にて取得したハーベスタの移動軌跡(受信機はCohac∞ Ten)

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和歌山県かつらぎ町にて取得したグラップルの移動軌跡(受信機はCohac∞ QZNEO)

一方、出荷量の推定は、重機の回転量により積込回数を計測することは可能と確認できたものの、木材の1回当たりの積込平均本数が、木材の太さや出荷先による積み込み方法の違い、運転手の違いによって差異が生じると判明したため、出荷先ごとの特性をデータベース化して回転数に対する係数を自動的に切り替える仕組みなどで解決することを検討しています。

図版-10

積込回数の計測結果

板屋氏によれば、今回の実証では位置情報データを現場で地図上に可視化し、その場ですぐ作業員に見せることを心がけたといいます。
「これまで林業では位置情報を可視化する仕組みがなかったのですが、今回、生成AIも活用して位置情報を迅速に可視化し、データをその場で作業員の方々に見てもらいました。その結果、こんなに見える化できるのかと喜んでいただき、積極的に協力してもらえました」(板屋氏)

次に、みちびきの信号認証サービスを利用して測位信号のスプーフィング(なりすまし)を防止し、位置情報の改ざんを防いで真正性を担保できるかどうかを検証しました。ハーベスタやフォワーダなどの重機に信号認証サービスに対応した受信機「Cohac∞ Ten++」を搭載し、森林内で信号認証が正確に動作するかを確認したところ、皆伐地(オープンスカイ)では認証成功率が100%と良好な結果となりました。
一方、間伐地や作業道では枝葉による遮蔽で受信環境が悪化して認証失敗率が高くなり、特に間伐地においては失敗率が70%を上回る場所もありました。木材の運搬を行う作業道でも左右の木々や上空の枝葉によって電波環境が悪くなり、成功率が80%台となる場合が多く確認されました。一部では木材の積み下ろしにかかる時間に相当する3分以上、連続で認証に失敗するケースもあり、積み下ろしの際に位置情報の保証が困難になる可能性も発生しました。これは、署名データを受信できない場合に、全てのデータを揃えるために復帰に時間がかかることが理由と考えられます。

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山口県長門市にて取得した認証成功・失敗の結果

図版-12

各地の信号認証サービスの計測結果

板屋氏はこれらの課題に対して、みちびきの衛星数増加による改善を期待すると共に、インターネット配信による補完という方法も検討しています。また、IMU(慣性計測装置)を活用して衛星が途切れた数分間を重機の動きを補完し、不自然な挙動がなかったのかを判定する仕組みや、直近の有効な認証状態をキャッシュに保存して短時間維持するなど信号認証アルゴリズムの改修などを行う方法も検討しています。

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みちびき対応受信機とアンテナを装備して位置情報を記録

作業員の位置情報取得の検証は、宮城県南三陸町にて行いました。歩行者のヘルメットの頭頂部にアンテナを設置し、そこから配線を分配してCLAS対応受信機「Cohac∞ Ten」、及びSLAS対応受信機「Cohac∞ QZNEO」に接続しました。この状態で歩行者が林地境界や作業道を繰り返し歩いて、位置情報を記録しました。
取得結果は、CLASでは軌跡のうち約1%に時間や位置が飛んでいる箇所が見られた一方で、SLASではほぼエラーが発生せず、今回の実証実験の環境における安定性についてはSLASの方がCLASを上回る結果となり、[MN1.1]受信機はSLASで十分であるという結論になりました。隣地境界の確認に使用する場合、約1mの精度でも十分可能であり、隣地境界を登録することで、重機や人に対して隣地境界に近付いている旨のアラートを出すことが可能となり、作業員の安全確保にもつながります。

図版-14

宮城県南三陸町での計測結果

コアは今回の実証で得た知見をもとに、林業に用いる重機に簡易的に取り付けが可能なSLAS受信機に、回転センサーやIMUを一体化した測位ボックスの開発と、信号認証サービスに対応したSLAS受信機の開発を検討しています。また、NECソリューションイノベータと連携し、林業トレーサビリティシステムに伐採位置情報の管理機能を追加する開発も進める方針です。
「みちびきの衛星数が増えることで、山間部での測位の安定性や信号認証サービスの認証性能が向上すると思います。みちびきの今後に期待しています」(板屋氏)

クリーンウッド法は、今後さらに厳格化すると予想されています。コアはそれを想定して準備を進め、2027年度には伐採位置情報を自動で取得できる林業向けソリューションの提供を開始したいと考えています。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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