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「Shot Navi」を展開するテクタイトに聞くSLASの魅力

2020年11月24日

ゴルフ用距離計測器「Shot Navi」シリーズを展開するテクタイト株式会社は2020年10月12日、新しいGNSSゴルフナビ「W1 Evolve」を発売しました。みちびきのサブメータ級測位補強サービス(SLAS)に対応し、誤差1m以内の高精度測位が可能な腕時計型のGNSSゴルフナビです。同社の野村尚央氏(執行役員、Wearable Products事業部 事業部長)と松本剛矢氏(同事業部 Products営業dep. 営業Gr. 課長代理)に話を聞きました。

テクタイトの松本氏、野村氏

左から松本氏、野村氏

2008年にナビの草分け「Shot Navi」発売

ゴルフは、ボールをいかに少ない打数でカップインさせるかを競うスポーツです。そのため、打つ場所からグリーンへの距離を正確に把握しなくてはなりません。GNSSゴルフナビは衛星測位機能を搭載したゴルフ用の距離計測器であり、現在地からグリーンのセンターを始めグリーンエッジやハザードなどコース上のさまざまな地点への距離や、自分が飛ばしたボールまでの飛距離などを計測することができます。

レーザー距離計

レーザー距離計

GNSSゴルフナビが登場する以前、ゴルフ場で距離計測器として普及していたのはレーザー距離計でした。ただ、距離を計測する際に対象物へレーザーを照射する必要があり、距離が離れれば離れるほどレーザーを上手く当てるのが難しく、使いこなすには技術が必要でした。GNSSゴルフナビは、誰でもすばやく簡単に距離を把握できる手軽さがあり、それも人気の要因となりました。

Shot Naviシリーズの初代モデルとして携帯型の「Shot Navi Pocket」を発売したのは、今から12年前の2008年のこと。国内のゴルフ場データを網羅した初のGNSSゴルフナビで、当初見込んでいた3年で6万台の販売目標をたった半年で完売し、ヒット商品となりました。Shot Navi Pocketが売れた理由を、野村氏は次のように説明します。

「当時はちょうどGPSという言葉が一般化してきた頃で、タイミングが良かったと思います。ゴルフは距離の精度が重要となるスポーツで、プレーヤーは次の一手をどのクラブで打つか、距離を考えて選択します。コース上の目標への距離がすばやく表示されれば、どのクラブを選ぶか、その場で瞬時に判断できます。その使い方はロケーションサービスとして価値があり、製品としてもマッチしやすい。それでヒットしたのでしょう」

テクタイトの腕時計型GNSSゴルフナビ

テクタイトの腕時計型GNSSゴルフナビ

Shot Naviシリーズはその後、2009年にコースレイアウトが表示されるカラー液晶搭載モデル、2011年には腕時計型モデルを発売し、今年(2020年)シリーズ累計で販売台数100万台を突破しました。

キャディのアドバイス代わりとして定着

Shot Naviが、初めてみちびきのSLAS(サブメータ級測位補強サービス)に対応したのは昨年(2019年)からで、今回のW1 Evolveは、その4機種目となります。

W1 Evolve

W1 Evolve(画像提供:テクタイト株式会社)

W1 Evolve

「当社のお客様はリピーターが多く、GPSの精度を気にされているのを日頃、肌で感じていました。以前から、RTK(リアルタイムキネマティック)測位や、コースへのビーコン(近距離無線を活用した位置特定技術)設置などの高精度測位を研究してきましたが、コスト面で折り合わずコンシューマー(一般消費者)向け製品には採用できませんでした。みちびきのSLASなら、安価なコストで精度を出せるので、測位の安定性やスピード向上が実現できればお客様のニーズがあると考え、製品化しました」(野村氏)

GNSSゴルフナビのユーザーは主に40代以上の男性で、ゴルフ場へ年間5回以上行くヘビー層に高い比率で普及しています。テクタイトには「いまやGNSSゴルフナビは必需品」というユーザーの感想が多く寄せられます。
「ゴルフというスポーツ自体は昔から変わりませんが、プレイ中の判断を支援するツールとして、キャディさんのアドバイスに置き換わる形で定着してきたのだと思います」(野村氏)

テレビ中継に採用されているテクタイトのコース図

テレビ中継に採用されているテクタイトのコース図(画像提供:テクタイト株式会社)

ShotNavi「NEO2 HP」と「NEO2 Lite」

NEO2 HP(左上)とNEO2 Lite(右下)

ShotNaviシリースに、携帯型の「NEO2」という機種があります。以前、SLAS非対応だった「NEO2 EX」の時は、下位機種で安価な「NEO2」や「NEO2 Lite」の人気が高かったのに、昨年SLAS対応の「NEO2 HP」を発売した後は、上位機種の「NEO2 HP」の方が下位機種を販売数で上回るようになりました。これもユーザーからの高精度へのニーズを感じた事例の一つといいます。

「当社では他にもランニングウォッチやサッカーの分析システムなどGPS(衛星測位)を利用した製品を提供していますが、ゴルフの場合、特にユーザーからの位置精度に対する要求が高いと感じます。SLAS非対応の海外メーカー製のGNSSゴルフナビやスマホアプリと比較した場合、みちびきのSLASは大きなセールスポイントになっています」(野村氏)

サッカーの分析システム用の端末

サッカーの分析システム用の端末

精度が上がればサービスの可能性も広がる

現在、GNSSゴルフナビにはさまざまなメーカーが参入していますが、テクタイトは地図会社に頼らず、自社で国内外のゴルフ場のコースデータを調査しているのが特徴です。そのデータは、プロゴルフツアーのテレビ中継でも、飛距離や残距離の計測、コースレイアウトの表示に採用されています。最新の「W1 Evolve」には、国内約2,400箇所のゴルフ場のコースレイアウトが収録され、海外のコースレイアウト(122カ国・地域、59,315コース)もダウンロード可能です。
最後にお二人に今後のみちびきに期待することを聞きました。

松本氏

松本氏

「みちびきは高精度というだけでなく、天頂付近に見える衛星が増え、測位の安定性が高まるメリットもあります。今後、現在の4機から7機体制へ移行して衛星数が増え、さらに安定した測位ができると期待しています」(松本氏)

「われわれの理想は、まずは常に安定したサブメータ級測位を実現することであり、次はさらに高精度の測位も目指しています。精度が高くなれば今はできていないことがたくさん実現できる可能性が高く、たとえばサッカーなど細かく速い競技の軌跡を誤差なく記録できれば、選手の動きを時系列的に検証でき、ゴルフ場でもカートや芝刈り機の自動運転が可能になります。サービスの可能性が大きく広がると思います」(野村氏)

野村氏

野村氏

みちびきのSLASに大きな可能性を見いだし、対応するGPSゴルフナビを次々にリリースしているテクタイト。今後の展開が注目されます。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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