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GPS応用の速度計でビジネス展開する「バイオスシステム」 [前編]

2016年07月17日

静岡県湖西市。浜名湖の湖面に白く尾を引くクルーザーの航跡を見下ろし、遠く対岸には浜松駅近くの超高層ビルを望む、木々に囲まれた高台に、測位衛星からの信号を応用したユニークな製品群を提供する株式会社バイオスシステムが社屋を構えています。

株式会社バイオスシステム

ビジネスの中核は「GPSを利用した速度計」

わずか社員十数名の小世帯ながら、自動車や関連機器の開発現場で必要とされる計測システムを、国内自動車メーカーのほぼすべてに供給しています。そのビジネスの中核は「GPSを利用した速度計」。同社はこれをGVS(Global Velosity System)と名付け、知財化しています。

GVS®速度・距離計 VGVS-SP25Si

GVS®速度・距離計 VGVS-SP25Si

「VGVS-SP25Si」の標準機器構成

標準機器構成

クルマに備えられているスピードメーターは、空気の入ったタイヤの回転数から導き出されるという原理的な制約から、そこそこの精度しか出せません。しかし開発の現場では、より高い精度の速度計が必要となります。

燃費測定でも、カギを握るのは「速度計」

たとえば燃費測定でも、速度計はカギを握っています。自動車の型式認定を受ける際には実走行を模擬した「JC08モード」による燃費測定が義務付けられており、その試験は、地面に固定され、ローラーの上に車のタイヤを載せて運転する「シャシダイナモ」上で行われます。この際、車両に応じた走行抵抗を負荷として与える必要がありますが、この走行抵抗は実車による実測で求められなければなりません。

図版出典:「燃費測定モードについて」(国土交通省)

シャシダイナモメータによる燃費測定方法(出典:国土交通省ウェブサイト資料を一部加工)

車速30km/hでの走行抵抗を計る場合には、車速35km/hでギアをニュートラルにし、車速が25km/hへ落ちるまでの時間を計測する、と决められています。正確な速度計がなければ、正確な走行抵抗は測れず、正確な燃費も得られません。燃費はユーザーが自動車を選ぶ際の指標の1つとなっているほか、数値によって税金が優遇・軽減されるなど、社会的に重要な意味を持っています。

物理量を正確に測定することはあらゆる経済活動の基盤であり、肉屋さんの店頭には検定証印のついた秤が、機械加工の現場にはゲージやマイクロメーターが必要なのと同様、クルマの開発現場でも精度の良い速度計は欠かせない訳です。

当時の速度計は、車両後部から路面に照射する光学式

もともと同社は30年ほど前から、自動車の排ガス測定システムを手がけていました。一定の走行パターンを繰り返す際、テストドライバーにその瞬間その瞬間で求められる車速をガイドしつつ、適切なタイミングで排ガスを取得するシステムです。当時は、車両の尾部に装着し、路面に照射した光の散乱光を計測する、光学式の速度計が用いられていました。いわば「レーザーマウス」のようなものです。

バイオスシテムの山口社長

バイオスシテムの山口社長

その方式での計測に限界が見えてきた頃、社長の山口哲功氏は「GPSを利用した速度計」を思いついたといいます。

「そもそも地球の自転が秒速何百m、衛星の速度も秒速何kmという中で、その情報を総合して"止まっている場所"の座標を求めるのは、すごく大変なこと。でも速度なら、もっと簡単に精度を上げられるはずだと...」(山口社長)

位置を正確に求めるには、測位衛星と受信アンテナの間の距離を正しく求めなければなりません。電離層や大気圏遅延、衛星クロックのゆらぎなどの誤差要因を入念に取り除く工夫が必要です。しかし速度を求めるだけなら、位置を引き算して得られる「相対距離」の情報で十分。前後の位置情報の両方に等しく含まれる誤差は消えてしまうからです。しかも、衛星から供給される時刻は原子時計と同じオーダーの正確さを持ちます。「移動距離÷時間」で求められる「速度」のほうが、より容易に高い精度を得られる──。

ここにGPS速度計の優位性がありました。(以下、後編に続く)
 

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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