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北海道で活用が進む、農業用GPSガイダンスシステム

2015年06月25日

北海道では、GPSやGISを活用した先進農業機械・技術の普及推進に取り組んでいます。道内の農家には、農作業の省力化、高精度化に向けた基本的な技術として、農業用GPSガイダンスシステムの普及が進んでいます。

「農作業用カーナビ」として農作業の走行経路などをガイド

GPSガイダンスシステムとは、GPSによりトラクタの正確な位置を測位してリアルタイムにモニターに表示し、農作業を行う際の走行経路をガイドする、いわば「農作業用カーナビ」とも言えるシステムで、効率的な運行や夜間の運転に効果を発揮します。またオプションを装着することで、ハンドルの自動操舵や作業完了範囲のマッピング、作業履歴データの管理なども行えます。連動して肥料や農薬の散布量を自動制御する機械や無人運行システムの研究も進められています。

トラクタを用いた耕起、整地、肥料散布、防除作業などでは、敷地内で重複や抜けがないよう均一に走行することが重要になります。従来であれば農産物を育てる圃場の周囲につけたマーカーや、作業機の走行跡の目視を頼りに運転していましたが、GPSガイダンスでは画面に表示される案内に沿って走行することで、正確な経路を走ることができます。

GPSガイダンスの例(画像提供・株式会社トプコン)

GPSガイダンスの例(画像提供・株式会社トプコン)

北海道の農業は国内の他地域に比べると、広い農地を少人数で管理しているという特徴がありますが、最近は農家戸数や担い手が減少しており、農家の経営規模拡大や生産コスト低減、省力化などが課題となっています。GPSガイダンスシステムは、直線で走行できる距離が長い、広い農地でより効果を発揮することもあり、同システムの国内出荷台数のうち北海道向けのシェアは毎年9割前後を占めています。

出典:「GPSガイダンス等の出荷状況」2014年版(北海道農政部生産振興局技術普及課)

出典:「GPSガイダンス等の出荷状況」2014年版(北海道農政部生産振興局技術普及課)

作業負担の軽減や収穫量の増加などの効果

北海道農政部生産振興局技術普及課では、道内の農家に聞き取り調査を行い、「GPSガイダンスなど先進農業機械活用事例」をまとめており、GPSガイダンスを利用している農家の声を知ることができます。最新の2014年度版では、9件の事例が紹介されており、マーカー設置作業がなくなり作業負担が軽減されたり、均一な肥料散布により肥料費と作業時間を削減しかつ収穫量が増加したなど、さまざまな効果が報告されています。

また、事例集では、防風林や建物の影に入った場合などに位置情報の精度が低下することから、衛星数の拡充を求める農家の声が紹介されています。通信が不安定な山あいや防風林沿いの農地などでも、低コストで安定的に測位精度向上が図られることで、研究開発と農業者のチャレンジが広がることが期待されます。

北海道では、今後一層の農業ICT化を目指し、2014~17年度にかけ、ロボット農作業機等実用化普及推進事業を推進し、新たに実用化された可変施肥システムの活用や、現在、研究開発が進められているロボット農作業機等の実用化等を推進する予定です。今後、開発が進められていく精密農業にもみちびきが活用できそうです。

無人ロボットトラクタによる代掻き実証実験も行われた(2014年5月)

無人ロボットトラクタによる代掻き実証実験も行われた(2014年5月)

取材協力・画像提供:北海道農政部生産振興局技術普及課

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