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フォルテ、災危通報にも対応した新型GNSSトラッカーを今春発売へ

2019年01月15日

衛星測位で取得した位置情報を3G/LTE回線などを使ってクラウドへ送信するGNSSトラッカー。これをいち早くみちびきの高精度測位に対応させたのが、青森市のベンチャー企業である株式会社フォルテです。同社は、2017年にみちびきのサブメータ級測位補強サービスに対応したGNSSトラッカーを発売し、さまざまな動態管理ソリューションを提供してきました。
そして同社は、さらに機能を向上させると同時に、新たにみちびきの災危通報(災害・危機管理通報サービス)に対応したGNSSトラッカーの最新機種、FB2003を開発し、今春の発売に向けて準備を進めています。同社代表取締役の葛西純氏に話を伺いました。

FB2003の試作品

FB2003の試作品

災危通報のほか、音声再生や自律航法の機能を追加

FB2003の新機能。その1つめは、音声の再生機能です。FB2003には124MBの音声ファイル格納用ストレージが搭載されており、ジオフェンス(地図上に設けた仮想的なフェンス)を設定した上で、FB2003を持った人が特定のエリアに入ると指定した音声を再生できます。また、インターネットから音声をプッシュ配信でき、外国人向けに外国語で情報を知らせることも可能です。

2つめはみちびきの災害・危機管理通報サービス「災危通報」に対応したことです。災危通報を受信して、FB2003のストレージに内蔵した音声ファイルを再生することもできます。この機能を使えば、たとえばサイクリングツアーやマラソンレースなど、観光やスポーツの用途で本機を使用中に災害が起きた際は、参加者にすばやく情報を伝えられます。

葛西氏は、「通信インフラが使えなくなった時でも、衛星から災害情報を受信できるようになったのはとても大きいです。災危通報を使えば、たとえば被災者が持っているデバイスが災害情報を受信したことを契機に、そのデバイス上で何らかの機能を作動させるようなことも考えられるので、今後はそのようなソリューションを検討していきたいと思います」と、みちびきの災危通報に大きな可能性を感じています。

フォルテの葛西氏

フォルテの葛西氏

3つめは、自律航法(デッドレコニング)機能です。みちびきのL1S信号に対応したGNSS受信チップに加えて、ジャイロ及び加速度、地磁気、気圧の4つのセンサーを搭載し、各センサーから得られる情報をもとに、どの方向にどれくらいの距離を移動したかを推定できます。この自律航法機能とみちびきの高精度測位を組み合わせることで、衛星信号の受信が困難な状況でも安定した測位を行えます。この自律航法機能は、自動車と自転車、人のそれぞれに対応した3モードを切り替えることが可能で、状況に応じて使い分けられます。

FB2003の筐体デザイン

FB2003の筐体デザイン(画像提供:株式会社フォルテ)

筐体はFB200とほぼ同じで、75mm×46mm×17mmとコンパクトサイズを実現しています。バッテリー容量はFB200の1000mAh(ミリアンペアアワー)よりも大容量の1400mAhとなり、位置情報の送信間隔を15秒で運用した場合、約12時間使用できます。また、FB200は3G対応でしたが、FB2003はLTE通信に対応しました。LTEのCAT4を採用し、全キャリア(KDDI・ドコモ・ソフトバンク)に対応しました。IP65相当の防水・防塵仕様で、筐体を覆うシリコンケースも用意しており、このケースを使ってベルトや自転車などさまざまなものに取り付けることができます。

シリコンケース

シリコンケースも用意(画像提供:株式会社フォルテ)

みちびきの高精度測位に早くから注目

フォルテは2005年に青森市で創業したスタートアップ企業で、GNSS関連のデバイスだけでなく、骨伝導ヘッドセットなどのウェアラブルデバイスも開発しています。GNSS機器の開発を始めたのは2009年頃で、代表取締役の葛西純氏が観光案内用のナビゲーション端末を搭載した電動アシスト自転車「ナビチャリ」の開発を始めたのがきっかけでした。

ナビチャリ

ナビチャリ

このナビゲーション端末は、衛星測位で取得した位置情報をもとに移動経路を案内するほか、観光スポットに近づくと音声で観光情報を多言語再生する機能も搭載していました。音声案内には、耳を塞がない骨伝導スピーカーを採用し、鼓膜を使わずに軟骨を使うことで音声を聴き取れます。騒がしい屋外でも確実に案内音声を聴くことができます。
ナビチャリは現在、日本全国で10の自治体に導入されています。フォルテは現在、この骨伝導スピーカーとGNSSデバイスの2つを事業の柱にしています。

葛西氏は、フォルテが他の企業に先駆けてみちびきの高精度測位に対応したIoTデバイスを世に送り出すことができた理由について、「ナビチャリを展開する中で、高精度測位に対するニーズを以前から感じていたため、みちびきで測位精度が向上することを知り、いち早く開発を始めることができました」と説明しています。

FB200

FB200

フォルテはGNSSトラッカーそのもので利益を出すのではなく、位置情報をクラウドに集約して配信するプラットフォームのシステム構築や、その利用料などを主軸に置いているため、デバイスの価格を安価に設定しており、FB200では2万円以下という低価格を実現しています。ロットにもよりますが、FB2003も同水準の価格で提供する予定で、今後も更なる低価格化を図っていく方針です。

高精度な位置情報により新しいビジネスが創出

これまでフォルテは、サイクルイベントにおいて参加者のロードバイクサブメータ級測位補強サービス対応のGNSSトラッカーを付けることで故障車や道迷いを把握したり、「青森ねぶた祭り」の山車にGNSSトラッカーを搭載して、ねぶたの山車が市内のどこにいるのかがわかるアプリを提供したりと、さまざまな実証実験を重ねてきました。

ねぶたの山車の位置情報をリアルタイムに配信(画像提供:株式会社フォルテ)

ねぶたの山車の位置情報をリアルタイムに配信

2019年には、ベトナムからサイクリングツアーに訪れた観光客に対してGNSSトラッカーと骨伝導スピーカー搭載ヘッドセットを提供し、双方向で多言語によるコミュニケーションを図る実証実験や、岐阜県で行われる、オリエンテーリングでの安全管理や位置情報の可視化のサービス支援を予定しています。
2019年春に発売予定のFB2003では、LTEだけでなく、LPWA(Low Power Wide Area)に対応した製品も開発中です。また、マラソンランナーが身に付けたり、ペットに装着したりすることができる軽量・コンパクトなトラッカーや、橋の監視などのアセットマネジメントや鳥獣害対策などに適したデバイスも開発中です。

2018年までに行ったサイクルイベントや祭りでの実証実験も継続して行う予定で、サイクルイベントにおいて心拍数やエネルギー消費などのバイタル情報などを計測したり、区間タイムを知らせたり、祭りでアプリ上での決済機能を搭載したりと、新しい試みも行う予定です。

サイクルイベントでの実証実験

サイクルイベントでの実証実験(画像提供:株式会社フォルテ)

葛西氏は、「みちびきの高精度測位によって精度の良い位置情報データが得られるようになったことは、新しいビジネスが生まれるきっかけになると思います」と、測位精度の向上に期待する一方で、災危通報などの新しいデータが衛星から得られるようになったことにも注目しています。
「当社では3月に、災危通報を使って地上のデバイスを作動させる実証実験を札幌で行う予定です。従来の衛星測位は、測位信号を発信するだけでしたが、そこに新たな情報が乗るようになったことは大きな意味を持ちます」と、みちびきの災危通報機能に期待を寄せています。
さらに、みちびきを活用したビジネスが日本で定着すれば、それをアジアやオセアニアなどに横展開することも可能であると考えており、そのためにも「まずはサブメータ級測位を活用したサービスをしっかりと定着させたい」と意気込みを語りました。

このような数々の先進的な取り組みが注目され、2018年12月22日に、全国放送にて「Tell me Aomori -青森と世界をつなぐ翻訳アプリ-」と題したフォルテを紹介する番組が放映されました。今後、同社がみちびき対応のデバイスを使ってどのようなサービスを生み出すのか注目されます。

なお、同社は1月16~18日に東京ビッグサイト(東京・お台場)で開催される第5回ウェアラブルEXPOに展示ブースを出展します。興味のある方はぜひご来場ください。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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