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エアロセンス、GNSS搭載の対空標識でドローン測量を効率化

2018年10月09日

国交省は近年、測量から設計、施工に至るまで、ICT技術を全面的に活用して建設現場の生産性向上を図る取り組み「i-Construction」を進めています。それを実現する技術の一つとして注目されるのがドローン(UAV)を使った測量です。従来の地上での測量と比較して大幅な時間短縮と工数削減が可能で、かつ広い敷地の土木測量も短期間で行え、人件費や手間も削減できます。また、撮影した航空写真をパソコン上で加工すれば、高精度な3Dデータを作成することもできます。

衛星測位機能付きの「AEROBOマーカー」

このドローン測量において、現場での測量工数とデータ処理工数を大幅に削減できる製品を提供するのが、ソニーとZMPの合弁会社であるエアロセンス株式会社です。同社は、ソニーのセンサー技術とZMPのロボット制御技術を組み合わせた、ドローンを活用した新しいビジネス開拓を目指して設立されました。2017年7月からGNSSを搭載した対空標識「AEROBO(エアロボ)マーカー」の提供を開始し、現在は、このAEROBOマーカーとドローン測量、クラウドデータ処理を統合したパッケージシステムも提供しています。

AEROBOマーカー

AEROBOマーカー

位置情報ログの後処理で誤差数cmの高精度測位を実現

これまでのドローン測量では、空撮を行う際に、測量の基準となる“標定点”を複数箇所、地上に設置して、緯度・経度・高度を調べる必要がありました。この標定点をもとに、ドローンから撮影した空中写真と、地上の位置情報を対応させる“標定”を行うことで3Dデータを作成します。ドローン測量の品質は、この標定点の座標の精度に大きく左右されます。

標定点を設置する際は、トータルステーションやGNSS測量機を使用して地上測量を行う必要がありますが、マーカーそのものに衛星測位機能を搭載したAEROBOマーカーを使えば、設置の手間を大幅に減らせます。設置方法は、土台となる黒いマットを小さな杭で固定し、その上にAEROBOマーカー本体を置いてボタンを押して測位するだけ。設置した後、ドローンの運用(機体のセットアップ~空撮完了)を行っている1時間ほどの間にGNSS計測を終えてしまいます。

設置してボタンを押すだけの簡単操作

設置してボタンを押すだけの簡単操作

AEROBOマーカーにはみちびき、GPS、GLONASSのL1C/A信号に対応したマルチGNSS受信機とバッテリーが搭載されており、ドローン撮影の終了後に取得した位置情報をクラウドへアップロードすることで、後処理によって高精度な位置情報を自動計算します。測位方式は、複数のGNSS受信機による干渉測位方式を用いた“スタティック測位”を採用しており、測位誤差わずか数cmと、RTK(リアルタイムキネマティック)よりも高精度な測位を実現しています。

エアロセンスの清水氏

エアロセンスの清水氏

エアロセンスの技術開発部でメカトロニクスエンジニアを務める清水悟氏は、AEROBOマーカーの開発で苦労した点について、「測位誤差を低くするために、GNSSアンテナの配置や回路の設計には試行錯誤がありました」と話します。

エアロセンスの真栄城氏

エアロセンスの真栄城氏

同社のソフトウェアエンジニア、真栄城(まえしろ)朝弘氏によると、航空写真の中から自動的に複数のマーカーを検出できるようにするため、ソフトウェアのアルゴリズム構築に苦労したほか、本体の色についても何度も実験を行って最適な色を決めたそうです。「本体の色はあまり自然界にない、周囲に溶け込まない赤と黒の組み合わせにしました。表面処理も、炎天下でも光が反射しにくいマット仕上げです」と、そのこだわりを語ります。

AEROBOマーカーには通常の写真測量用のほかに、レーザー測量対応版も用意しています。レーザー測量は、写真測量では難しい山間部の地形を測るために利用する場合が多く、従来は対空標識を測量するために、山間部に重い測量機器を持ち運ぶ必要がありました。AEROBOマーカーであれば1個当たり500g未満と軽量で、山間部での測量作業の手間を軽減できます。

マルチコプターや固定翼ドローンを自社開発

エアロセンスでは、上記のAEROBOマーカーに加えて、独自開発のドローン「AEROBO」や、AEROBO・AEROBOマーカーを使用した測量を支援するための端末ソフトウェア「AEROBOステーション」、ウェブブラウザだけで使えるデータ処理サービス「AEROBOクラウド」などを提供しています。
AEROBOクラウドでは、ドローンのフライトやマーカーの配置プランを地図上に表示し、他の人と共有できます。また、空撮画像とAEROBOマーカーのGNSSログをアップロードするだけで、空撮画像からマーカーを自動的に検出してマッチングを行い、測量結果の入力や画像中のマーカー位置の選択などを行わなくても、自動的に測量処理を行えます。さらに、空撮画像から3DモデルやDEM、オルソ地図の生成などを高速に行えます。

独自開発のドローン「AEROBO」

独自開発のドローン「AEROBO」

「AEROBO」のGNSSアンテナ搭載部

「AEROBO」のGNSSアンテナ搭載部

クワッドローターのマルチコプターである「AEROBO」は、AEROBOステーションを活用することで、離着陸を含めた完全自律飛行が可能で、ソニー製の高性能なカメラを搭載しています。また、標準搭載のカメラだけでなく、ジンバル付き動画カメラや遠赤外線カメラなどを搭載でき、測量や点検、監視、物流など幅広い用途に使用できます。

AEROBOマーカーは自社製ドローン以外に、他社のドローンと組み合わせて使うことも可能です。また同社は、有線給電による連続飛行および撮影が可能で、光ファイバーケーブルにより非圧縮かつ高画質の映像をリアルタイムに伝送できる、有線ドローンシステム「AEROBO on Air」も提供しています。

「マルチコプター型無線ドローンは飛行時間が20分程度しかなく、これでは短いというお客さまも多くいます。当社の有線ドローンは最大6時間の飛行が可能で、イベントなどの映像撮影で需要があります。有線接続のため、無線ドローンのように風に流される心配も少なく、安全性が高いのも特長です」(清水氏)

同社では、他の取り組みとして、垂直離着型の固定翼高速ドローン「VTOL」の開発も進めています。これまでの飛行実績としては、竹富島の港湾から石垣島の海岸に向けた離島間の飛行実証実験や、ザンビア共和国での医療関連物資の輸送実証実験などを行っています。物資輸送のほか、災害対策や観光体験プログラムの創出など、幅広い分野で実用化を目指しています。

みちびきのセンチメータ級測位にも期待

AEROBOマーカーはGPSに加えてGLONASSやみちびきの補完機能を利用しており、山間部などでも安定した測位を実現していますが、同社はドローン側の測位機能として、みちびきの高精度測位にも期待を寄せています。

「AEROBOマーカーは、同じ地点に長時間設置するという使用目的のためにスタティック測位を採用しましたが、みちびきのセンチメータ級測位は、移動体であるドローン側の測位方式として使うのに適します。ドローン側で高精度に測位できれば、地上にマーカーを置くのが難しい状況でも、ドローンを飛ばすだけで測量できます。現状ではセンチメータ級測位に対応した受信機は大きく重いですが、いずれ小型軽量のものが出てくると思いますのでドローンへの搭載も検討していきます」(清水氏)

エアロセンスの清水氏(左)と真栄城氏(右)

エアロセンスの清水氏(左)と真栄城氏(右)

真栄城氏はドローンの可能性について、「人が行けないところや、危険な場所にも行けるのがドローンの最大の利点。災害現場などで人が近づけなくても迅速に測量や点検で現況を確認でき、そのニーズは大きい」と語ります。最新の衛星測位技術を使ってドローンの世界に新風を吹き込もうとするエアロセンス社。その今後の取り組みが注目されています。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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