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オープンデータで避難所地図を表示する「ヒナンパス」が、熊本地震に暫定対応

2016年04月20日

4月14日夜に発生した最大震度7の熊本地震は、翌日深夜にM7.3の本震が発生、その後も複数回の最大震度6クラスの余震が発生するなど熊本・大分地方で活発な地震活動が続き、多くの方が避難生活を余儀なくされています。私設避難所で過ごす被災者にとって情報・物資配給の拠点である公設避難所は重要な場所です。自治体ウェブサイトなどで場所が公開されていますが、それでも多くの人が情報を容易に見つけられず、市町村役場などに多くの問い合わせが寄せられていると報じられました。

こうした事態を受け、株式会社jig.jp(以下jig.jp)は、地震発生の翌日に自社で提供する避難所ナビサービス「ヒナンパス」を、被害の大きかった熊本市と益城町がウェブサイト上に公開している避難所リストを用いて、暫定的に対応させました。現地にいる利用者は、現在位置周辺の避難所の位置を1タップで地図上で確認できます。

避難所ナビサービス「ヒナンパス」

「ヒナンパス」ホーム画面(左)。「近くの避難所をすべて表示」で、自分の現在位置と周辺の避難所の位置・道順が地図上に表示されます

地図を利用するには、ヒナンパスにスマートフォンやパソコンなどのブラウザからアクセスして、「近くの避難所をすべて表示」ボタンをタップします。また、同じ画面の「地震」ボタンをタップすると、逃げる時の心構えリストが表示されます。リストは地震以外にも、洪水、高潮、噴火など、8つの災害それぞれに対応しています。

位置情報+オープンデータで「最寄りの避難所への経路」

ヒナンパスは、jig.jpが提供する自治体向けクラウドASP(Application Service Provider)サービス「オープンデータプラットフォーム」(以下odp)に対応したアプリです。オープンデータとは、政府や自治体などが持つ公共性の高いデータを誰でも再利用が可能な形で提供するという考え方です。総務省はオープンデータを「機械判読に適したデータ形式で、二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータ」であり「人手を多くかけずにデータの二次利用を可能とするもの」と定義して取り組みを推進しており、各省庁や自治体などでも整備が進められつつあります。

オープンデータのうち最も利用しやすい形式のデータとして推奨される「Linked-RDF」形式のデータを作成するには専門知識が必要で、自治体等の担当者が臨機応変にデータを作成するのは困難です

odpは、あらかじめ用意されたExcel形式のテンプレートにデータを入力してウェブサイトからアップロードするだけで「Linked-RDF形式」のオープンデータを簡単に作成し、オープンデータアプリケーション開発者などが利用するデータカタログサイトに公開できる仕組みです。

odpの仕組み。Excelデータを政府が推奨する「5つ星データ」に変換し、データを利用する企業や市民が容易にアクセスできるように公開します

オープンデータの多くは情報源が自治体であるという特性から、位置情報との組み合わせによりさまざまな利活用が可能で、多くのアプリやサービスがodpで公開されています。「ヒナンパス」も、odpで作成・公開された避難所データをすぐに利用できるよう、jig.jpが提供しているアプリの1つです。福井県鯖江市、静岡県島田市など複数の自治体がヒナンパスを利用して住民向けに避難所案内のサービスを提供しています。

odpにデータを公開することで、すでにodpのデータを利用して公開されているアプリやサービスを相互利用できるようになります。たとえば東京・品川区では、避難所、公共施設、AED(Automated External Defibrillator、自動体外式除細動器)などのオープンデータをodpに公開することで、ヒナンパスのほか、jig.jpが公開している「AEDを探す」(AEDがある場所を地図上に表示するサービス)、「ナビわんこ」(観光情報アプリ)などを利用できるようになっています。

自治体へ「避難所データ」公開用テンプレートを無料提供

昨年11月から、jig.jpはodpの機能限定版として、自治体のオープンデータとしてもっともニーズが高い「避難所データ」を利用できるExcelテンプレートを無料で提供しています。無料アカウントの発行には当日中に対応、その後、データが整備されていればおよそ30分で「ヒナンパス」による情報が可能になります。

odpの「避難所データ」テンプレートに定義されている項目。最低限、避難所の名称、住所、緯度・経度(自治体保有のGISシステムを利用して取得可能)のデータがあれば、ヒナンパスでの表示が可能になります。jig.jpでは「被災地の自治体から申し出があれば、データとして避難所の名称と住所のリストを提供いただければ利用してもらえるよう、ボランティアの協力を募って緯度・経度データを入力するデータ登録代行も検討中」とのことです

現在、熊本近辺の自治体で避難所情報を二次利用可能なオープンデータとして公開しているのは熊本市と佐世保市だけとなっています。jig.jpでは、自治体に対して「全国どの自治体でも、5つ星オープンデータとしてodpに避難所データを登録さえすれば、ヒナンパスを使えるようになります。災害は自治体規模の大小に関係なく容赦ありません。odpを使って避難所情報のオープンデータ公開にご協力お願いします」「少しでもヒナンパスが、被災者や現地ボランティアの方のお役に立てることを切に願っています」と呼びかけています。

※ヘッダの画像は、イメージです。本文画像提供:株式会社jig.jp

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