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秋田・横手市で排雪作業の軽減対策(1)SLAS対応受信機を活用した雪の堆積状況収集

2019年05月13日

秋田県の横手市は、岩手県との県境に近い内陸の盆地に位置する、県内でも有数の豪雪地帯です。北国の自治体にとって冬季の積雪における除排雪対応は大きな課題となっており、横手市の場合も例外ではありません。人口は年々減少し、そして老年人口は増加を続けています。こうした中、みちびきの高精度な位置情報を活用して、「雪に強いまちづくり」を実現するための取り組みが行われました。2回に分けて紹介します。

秋田県のIT企業を代表にコンソーシアムを組織

雪国よこて排雪作業軽減対策コンソーシアム 参加スタッフ

コンソーシアムの参加スタッフ。(左から)NTT空間情報株式会社ビジネス開発部アライアンスグループの千葉繁氏(担当課長)と原田礼子氏、株式会社デジタル・ウント・メアの岩根えり子氏(代表取締役社長)、横手市の村田清和氏(総務企画部 部長)、NPO法人Yokotterの田畑晃子氏、株式会社エスツーの下島岳氏(首都圏営業本部 部長 兼 海外事業責任者)

この取り組みは「雪国よこて排雪作業軽減対策コンソーシアム」によるもので、内閣府と準天頂衛星システムサービス株式会社が公募した「みちびきを利用した実証実験」に採択され、昨年秋から今年3月まで行われました。

コンソーシアムは、秋田県のIT企業である株式会社デジタル・ウント・メアが代表企業となり、横手市、NTT空間情報株式会社、株式会社エスツー、NPO法人Yokotter、渡敬情報システム株式会社、秋田横連携IoT推進ラボ協議会の7組織が参加しました。

市内に積もる雪の堆積状況を把握

雪の堆積状況を収集する実証実験では、スマートフォンを使って道路脇の写真を撮影し、撮影した時の位置情報や撮影した方角、撮影時間などの情報を収集しました。そして、同時にみちびきのサブメータ級測位補強サービス(SLAS)対応の受信機も使って、位置情報を収集しました。

撮影状況
スマートフォンアプリ

雪の堆積状況をスマートフォンアプリで撮影(画像提供:雪国よこて排雪作業軽減対策コンソーシアム)

今回、地理空間情報基盤の提供や雪堆積状況の把握分析を担当したNTT空間情報の千葉氏は、一般的なスマートフォンでは、測位誤差により、現在位置が道路を飛び越して家屋のほうに飛んでしまうことがあったと、実験時を振り返ります。

NTT空間情報の千葉氏

NTT空間情報の千葉氏

「地図アプリなどを使っている時は多少誤差が生じても問題ありませんが、時系列に沿って連続して位置情報を記録している時にはそれがイレギュラーデータになってしまいます」

千葉氏によれば、SLAS対応の受信機ではそのようなことは起こらず、「違う日に同じ場所で測位した時に同じ場所に位置が収束するのが良かった」と、みちびきの測位安定性を評価しました。

収集した雪の堆積状況は、データをサーバに蓄積した上で、スマートフォンで収集した画像及び環境情報、みちびきの測位結果の3つの要素を、撮影時間をもとに関連付けました。これを格子状のメッシュデータとして地図上に可視化したところ、21観測点中の19観測点で測位誤差4m以内の位置情報を取得できました。

堆積状況をデータ化(赤線=歩行軌跡、青点=スマートフォンの測位結果、緑点・オレンジの点=SLAS受信機の測位結果、画像提供:雪国よこて排雪作業軽減対策コンソーシアム)

こうしてサーバに蓄積した雪の堆積画像に対して、「排雪の必要なし」「排雪間近」「要排雪」の3段階の判断を人間が目視で行いました。さらに雪の堆積状況を機械的にも算出した上で、最終的に人間の判断と機械的な判断を比較検討し、排雪判断の優先順位付けを機械的に行えることが確認できました。

デジタル・ウント・メアの岩根氏

デジタル・ウント・メアの岩根氏

コンソーシアムの代表を務めるデジタル・ウント・メアの岩根氏は、今後は市民が雪の堆積画像の写真を送ることができるアプリを開発することを目標に、さまざまな実証実験を重ねていきたいと話します。
「雪だけでなく、不法投棄や道路の穴などの情報提供についても、高精度な位置情報が分かったほうが市の職員などが対応しやすいので、市民生活が便利になるような総合的な仕組みを作っていきたいと思います」と今後の展開に期待を寄せました。

横手市では、市民からの雪に関する情報提供は1シーズンにつき3000件にも及びます。今回の実証実験の成果を活用して、排雪の必要性を、より効率的に判断できるようになると期待できます。また、雪の堆積状況を高精度な位置情報と共に蓄積し、可視化することで、市内全域の適切な除排雪プランの立案も可能となります。

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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