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福井県、今年もGPS発信機装着のコウノトリ2羽を放鳥

2016年10月11日

福井県自然環境課は9月25日に「たからくん」(オス)と「さきちゃん」(メス)の2羽のコウノトリを放鳥しました。昨年(2015年)10月3日の「げんきくん」(オス)と「ゆめちゃん」(メス)の2羽に続くもので、これで同県越前市白山地区にある飼育繁殖施設からの放鳥は合計4羽となりました。放鳥に際しそれぞれの個体には「GPS発信機」が装着されており、自然環境課のウェブサイトからは、各地から寄せられた目撃情報や写真などと共に、4羽の位置情報履歴が継続的に提供されています。

「GPS発信機」で位置情報を取得

「GPS発信機」による位置情報の取得は、次のように行われています。

1)太陽電池で内蔵バッテリーを充電する
2)1~2時間に1度の頻度で、GPS信号を受信し測位演算を行う
3)位置情報を記録し、スリープ状態に入る(充電は継続)
4)1~2日に1度の頻度で、記録した位置情報データを衛星に向け送信(*)
5)(自然環境課の担当者が)衛星の運用センターにログインし、蓄積された位置情報を取得

* 4)は、野生生物の研究や環境保護のため、米国海洋大気庁(NOAA)やフランス国立宇宙研究センター(CNES)を始めとする各国の宇宙機関の協力で運営されている「アルゴスシステム」を利用

アルゴスシステムの概要図

アルゴスシステムでは、野生生物や各種環境計測センサからの情報を地球周回衛星で収集するほか、ドップラー法による測位も行う(画像提供・NOAA)

野生動物に発信機やデータ記録装置を装着する場合は、行動になるべく影響を与えないよう、機器重量や装着方法に配慮が必要です。一方で太陽電池のサイズやバッテリー容量によって、測位精度やデータ送信の頻度、位置情報の信頼性など、得られるデータの質が大きく変わります。

このため福井県自然環境課は、体重の何%程度までなら問題ないか、どのような装着方法にすれば確実なデータ取得と負担軽減を両立できるかなどについて、日本におけるコウノトリ保護繁殖事業で先導的役割を果たしている兵庫県立コウノトリの郷公園のアドバイスを受け、実施してきました。昨年放鳥されたオスのげんきくんのダイナミックな行動が分かったのも、このシステムのおかげと言えます。

舞い戻ったのは前年と全く同じ場所

げんきくんは昨年10月3日の放鳥から1週間ほどで、本州の日本海側を北上して富山から太平洋側に抜け、宮城県遠田郡美里町に到達してひと月余りを過ごしました。ちなみに美里町は東日本大震災での給水支援を契機に兵庫県豊岡市と災害援助協定を結んでおり、同市とゆかりのあるコウノトリの来訪は大きく歓迎されたといいます。

11月中旬には南下して茨城、埼玉、千葉、東京を2週間ほど巡り再び美里町に戻りました。12月初旬には福島から新潟へ移動し、日本海側を西進。「郷里」の福井を通過し山陰を経て九州に到達、長崎県の五島列島で越年しました。佐世保市や五島市周辺で過ごした後、今年2月7日に、ほぼ1日で韓国に渡りました。

その後、半年ほど韓国で過ごしましたが、8月29日には釜山市から対馬・壱岐へと渡り「帰国」。瀬戸内・四国を経由して京都から福井に。さらに北陸から福島へと飛んで、前年の秋を過ごした宮城県美里町の全く同じ場所に舞い戻り、現在に至っています。

げんきくんの「帰郷」ルート

げんきくんの「帰郷」ルート

福井県自然環境課のコウノトリ支援本部によれば、ロシア産の個体を輸入して日本で繁殖させ、その子孫を放鳥する事業に対しては「外来種ではないか」という指摘もあったそうです。以前より大陸のコウノトリと日本のコウノトリの間に遺伝子的な差はないとされていましたが、今回、げんきくんの位置情報履歴により示された高い移動能力は、コウノトリを外国産か日本産かで区分けすることに意味はないということを雄弁に物語るものです。

また、1日に500gもの水棲生物を摂食するコウノトリは豊かな田園の象徴ともなるため、お米のブランド化に役立てる動きも始まっており、同県ではコウノトリの放鳥定着事業を継続していくとしています。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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※ヘッダ及び本文の「げんきくん帰郷ルート」図版は、福井県自然環境課の資料をもとに作成