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海洋大のGNSSサマースクール、全日程を無事終了 [レポート2]

2016年08月09日

今年で4回目の開催となったGNSS技術関連の集中講義「Summer School on GNSS 2016」が8月1~6日、各国からの参加者を迎えて東京海洋大学越中島キャンパス(東京・江東区)で行われました。

RTK法の理論と実践に関わる講義

高須氏の講義の様子

4日目となる8月4日は、RTK法(測位衛星からの信号を基地局と移動局で受信し、センチメートル単位の測位精度を実現する手法)についての理論と実践に関わる講義を、東京海洋大学客員研究員の高須知二氏が担当しました。

高須知二氏

教室では理論の解説に続き、高須氏自身が作成したオープンソース・ソフトウェアと「RTKLIB」の操作方法の詳しい説明が行われました。「RTKLIB」は測位信号の解析ソフトとして10万件以上ダウンロードされ、さまざまな製品への応用も進んでいる、この分野で世界的に有名なソフトウェアです。

高精度測位を実践する授業風景

参加者には協賛のユーブロックス(u‑blox)社よりアンテナと受信機のキットが各自に2セットずつ提供されました。それらを「RTKLIB」をインストールしたパソコンと接続した上、教室内に再送信されている、屋外のアンテナで受信したGNSS信号を使って、実際に高精度測位を行うところまでを実践しました。

アンテナを移動して測位するRTKの実演

アンテナを移動して測位するRTKの実演

屋外アンテナで受信した信号を教室に再送信

屋外アンテナで受信した信号を教室に再送信

また、船舶が自動で船名や位置を知らせる自動船舶識別装置(AIS:Automatic Identification System)に関するプレゼンテーションが日本無線株式会社の担当者から行われました。

AISについてプレゼンする日本無線の担当者

練習船「やよい」乗船と施設見学

練習船「やよい」に乗船

昼食をはさんで午後からは2グループに分かれ、1グループは東京海洋大学の練習船「やよい」乗船。各自がPCとアンテナ・受信キットを持参、洋上での高精度測位を体験しつつ、海からの東京の眺めを楽しみました。

船上でAIS機器について解説する

また船上でAIS機器についての解説も行われました。

乗船後の記念撮影

乗船を待つもう1グループは、東京海洋大学の航行の安全に関わる施設を見学しました。船舶ナビゲートシステムは、AIS情報や気象情報、Webカメラの映像などを海洋GIS(Geographic Information System:地理情報システム)データベースで蓄積管理し、事故解析などを通じ、広範囲の海事技術開発と海の安全に役立てるための設備です。

船舶ナビゲートシステム

また、操船シミュレーターは、5台のプロジェクタを使って半円形のスクリーンに画像を投射し、船のブリッジからの景色を再現。実映像だけでなく、船舶ナビゲートシステムと連動させ再現したCG映像を投射し、悪条件での操船を模擬したり、事故解析に役立てることができます。

操船シミュレーター

GNSSを日本で学べるのは「みちびき」のおかげ

一般社団法人測位航法学会会長で東京海洋大学名誉教授の安田明生氏は、このサマースクールの試みについてこう語っています。

安田明生氏

「GNSSを日本で学ぶことに関心を持つ人が増えています。少なくとも1機『みちびき』が上がっているから、こうした取り組みができている部分も大きいと思います。開催までの準備は大変ですが、若い研究者も関わってくれるようになり、応援してくれる企業や組織にも改めて感謝いたします。長く続けることで、日本からGNSS関連の技術を発信できる人材育成にも役立てばと思っています」

サマースクールは8月5日には早稲田大学高等研究所 助教の鈴木太郎氏による「ソフトウェア無線技術」、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 准教授 神武直彦氏による「システムデザインワークショップ」の講義が行われ、最終日の6日には「屋内測位」「GNSSシミュレーター」のデモンストレーションが行われ、全日程を無事終了しました。

授業の合い間のスナップ

参照サイト

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