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GPS・QZSSロボットカーコンテスト2016が開催されました [結果レポート]

2016年10月29日

10月23日、東京海洋大学・越中島キャンパスにおいて「第10回 GPS・QZSSロボットカーコンテスト2016」(主催・一般社団法人測位航法学会、一般財団法人衛星測位利用推進センター、公益社団法人日本航海学会GPS/GNSS研究会)が開催されました。

当日の出場者と運営スタッフの集合写真

当日の出場者と運営スタッフ

コンテストに出走するロボットカー

コンテストに出走するロボットカーが勢ぞろい

競技は「ダブルパイロン」と「QZSSスクランブル」

このコンテストは、衛星測位を利用して自律走行するロボットカーでポイントとタイムを競います。今年は、昨年とほぼ同様のレギュレーションで行う「ダブルパイロンレース」と、ロボットカー(=条件を揃えるため事務局側で用意)を制御するAndroidアプリのパフォーマンスを競う「QZSSスクランブル アプリコンテスト」の2つの競技が行われました。

そのうち、ダブルパイロンレースには全15チームがエントリーしました。各ロボットカーは、ラジコンカーのシャーシを流用したものが多いですが、今年は「模型の戦車」を使ったものも見られました。これらのシャーシの上にGNSS受信機とマイコンボードが搭載されており、刻々と得られる位置情報をもとに、マイコンボードがスロットルやステアリングを制御する仕組みです。

Amano.Lab「Kevin」

大会常連で毎回上位入賞のAmano.Lab「Kevin」。15チームで唯一、RTK測位(*)を使用

「GPSタイガー」

戦車のシャーシを使用した「GPSタイガー」

Team Katy「Coyote」

すさまじいスピードで最高得点をたたき出したTeam Katy「Coyote」

大田原ロボット研究所「ロボット・インフィニティ ANGEL」

「QZPOD」を搭載した大田原ロボット研究所「ロボット・インフィニティANGEL」

熊本高専Makers「阿蘇不知火ver.2016」

熊本高専Makers「阿蘇不知火ver.2016」は、ドローン用フライトコントローラー「ArduPilot Mega」を搭載し、オープンソースソフトウェアで制御

大田原ロボット研究所「ロボット・インフィニティDESTROY」

QZSSスクランブルに使用した大田原ロボット研究所「ロボット・インフィニティDESTROY」

* RTK測位:RTKは「Realtime Kinematic」。固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで高精度に位置を測定する方法

GPS受信機以外に搭載が許されているのは「ジャイロセンサー」と「地磁気センサー」のみ。ラジコンのように遠隔操作することは不可で、ハードウェア・ソフトウェア共に、全ての自律制御部がロボットカーに搭載されていなければなりません。
希望者には、みちびきのL1-SAIFに対応した受信機「QZPOD」が事務局から貸与され、それを搭載したロボットカーのエントリーもありました。

パイロンの座標(緯度・経度)は、スタート前に事務局から公表されます(=下図)。ロボットカーの通過する位置の設定や、誤差の許容範囲、ロボットカーの移動速度の設定などさまざまな要素を考え、チームごとの戦略が練られました。

ダブルパイロンレースの座標値

当日発表される2つの "Waypoint" の間を8の字に走行

QZSSスクランブルの座標値

7×7のマス目のうちスタート直前に指定された3つを指定順序で走行

アプリの “運転技術” を競う「QZSSスクランブル」

「QZSSスクランブル」の競技風景

昨年まで参加者それぞれの自作ロボットカーで競っていた「QZSSスクランブル」は、今年からルールが変わり、事務局側で用意したロボットカーを制御する「アプリコンテスト」となりました。いわばAndroidアプリの“運転技術”を競う競技です。2チームが出場しましたが、残念ながら1チームはスタート地点から動けずに終わり、もう1チームはスタートしたものの、指定されたチェックポイントにたどり着けませんでした。事務局では、来年以降も周知期間やレギュレーションを見直しながら続けていきたいとしています。

ダブルパイロンはTeam Katy「Coyote」が優勝

開会式と競技風景
ダブルパイロンレースの競技結果

ダブルパイロンレースの競技結果(コンテスト公式サイトより転載)

両競技の上位入賞者にはアイサンテクノロジー株式会社から、腕時計「G-SHOCK」、おとなラジコンから「フライトコントローラー」、岩城農場から「2016年産コシヒカリ」などが贈られました。また、参加者全員に「ナス」も提供されました。

アイサンテクノロジーから入賞者に「G-SHOCK」を贈呈

アイサンテクノロジーから入賞者に「G-SHOCK」を贈呈

「G-SHOCK」を贈呈したアイサンテクノロジー 柳澤哲二氏

柳澤哲二氏

「高性能のロボットカーが競い合う期待以上の激戦で、一観客として競技を堪能することができました。最近では自動運転や自動走行システムが社会の期待を集めていますが、そこにつながる若手エンジニアの育成や修練の場としても注目し、今後とも支援を続けて行きたいと思っています」(アイサンテクノロジー株式会社 代表取締役社長)

審判をつとめた岩城善広氏

岩城善広氏

「今年は事前に試走会を3回行い、積極的に参加いただいたので、レベルが高いと予想していましたが、まさにその通りで、すばらしい結果になりました。来年はさらにレベル向上が予想されます。初参加の方にハードルが高くなり過ぎないように、ノウハウなどの情報を公開しながら参加を呼びかけたいですね」

運営に関わった測位航法学会の入江博樹氏

入江博樹氏

「準優勝に3チームも入るなんて、こんなにレベルが上がるとは思いませんでした。どのチームにも攻めの姿勢が見られ、競い合うことが良い結果につながりました。私のチームも『ArduPilot Mega』という、初心者にもGPSロボットカーを作りやすいモジュールを提案できました。いま注目を集めているドローンの測位精度の向上につながるという意味で、存在意義を示せたかと思います。今年1位の『Coyote』は曲がる時にドリフトするほど速かったので、さらにRTK測位などを使って精度を向上させれば、もっとパイロンぎりぎりを攻める、迫力あるレースが見られると期待しています」(熊本高等専門学校 建築社会デザイン工学科 教授)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター、取材/編集協力:喜多充成)

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