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小峰無線電機がCLAS対応のマルチGNSSアンテナを発売

2020年09月07日

みちびきのセンチメータ級測位補強サービス(CLAS)の普及には、対応受信機だけでなく、L6信号の受信に対応したGNSSアンテナの普及も不可欠です。小峰無線電機株式会社は今年7月、みちびきのL6信号を含む4周波に対応したマルチGNSSアンテナ「QZG1256fQ」を発売しました。このアンテナの開発を担当した同社技術戦略部のジョン・レニー部長と、販売窓口を担当する営業部企画課の和田亮課長に話を聞きました。

レニー氏と和田氏

レニー氏(左)と和田氏(右)

川崎市にある1967年創業の部品メーカー

神奈川県川崎市に本社工場がある小峰無線電機は1967年創業の部品メーカーで、各種コネクタの設計製作などを行っています。高周波同軸コネクタや光ファイバーコネクタ、高周波コンポーネント、アンテナなどさまざまな製品を手がける同社がGNSSアンテナを発売したのは、約20年前のこと。当初はL1信号のみに対応したアンテナを取り扱っていましたが、5年前にみちびきのL6信号に対応したアンテナを開発し、L1とL6の2周波に対応した初の製品を発売しました。その後の第2世代ではL1、L2、L6の3周波に対応したアンテナを発売し、今回発売した3世代目の「QZG1256fQ」ではさらにL5も加えた4周波対応となりました。

多摩川沿いの住宅街に立地

多摩川沿いの住宅街に立地

「QZG1256fQ」は、みちびきのほかGPS、GLONASS、Galileo、BeiDouの5つの衛星測位システムに対応したマルチGNSSアンテナです。従来のモデルに比べて薄型となり、重量も軽くなったのが特徴です。アンテナの面積そのものはさほど変わっていませんが、内部の基板は大きく変更されました。
「GNSSアンテナは安定性が大事で、ノイズを減らすため基板をある程度の大きさにする必要があります。第2世代ではケースの大きさに比べて小さい基板を使っていましたが、今回の第3世代では基板のサイズを大きくして、ケースのサイズをフルに使っています。見た目はあまり変わっていませんが、ノイズを大幅に減らすことができました」(レニー氏)

L1信号は周波数が高く、電波の波が小さいのでアンテナも小さいサイズにできますが、L2とL6は周波数が低く、電波の波が大きくなり、アンテナのサイズも大きくしなくてはなりません。「QZG1256fQ」は、直径140mm×高さ46.5mmというサイズに決まりました。
「アンテナをさらに大きくすれば、より精度は増しますが、ユーザーは大きいサイズを望まないので、バランスが大事です。当社の製品を海外製のGNSSアンテナと比較すると、同程度の性能でもひと回り小さく、それでいて同じくらいの性能を実現しています」(レニー氏)

「QZG1256fQ」「QZG126c」「QZG12fQ」の画像

左から4周波対応の「QZG1256fQ」、3周波対応の第2世代アンテナ「QZG126c」、2周波対応の「QZG12fQ」

ケースに特殊な樹脂を採用し、マルチパスを低減

アンテナ裏側のケースを樹脂製にしたことで、重量も軽くできました。アンテナの裏側から回り込む電波がマルチパスの要因となるため、GNSSアンテナは通常、裏側のケースを金属製にしたり、樹脂製にする場合も金属のシールドを設けて、マルチパスの侵入を防ぎます。同社でも、以前のモデルは金属製のケースを使っていましたが、「QZG1256fQ」では電波を吸収する特殊な樹脂を採用して、金属シールドを設置しなくても、マルチパスを軽減し、かつ重量を軽くすることに成功しました。

「最近はGNSSアンテナをドローンなどへ搭載するケースも増えて、アンテナの重さを気にするユーザーが多くなってきました。また、日本は台風などの災害が多く、屋根の上などに設置するGNSSアンテナは、倒壊や破損の際の被害を考え、できるだけ軽くしたいという考え方もあります」(レニー氏)

QZG1256fQ

QZG1256fQ(画像提供:小峰無線電機株式会社)

また、小峰無線電機のGNSSアンテナならではの特徴として、日本国内の電波の状況に合わせた調整が行われている点があります。日本国内で使われている高速データ通信サービスのLTEには、GNSSのL1帯に隣接する1.5GHz付近の電波を利用しているものがあります。GNSSの電波はLTEに比べて微弱であり、電波干渉が起きて誤差が大きくなる可能性があるため、小峰無線電機のGNSSアンテナでは、LTEの周波数と重なる帯域は受信しないように調整されています。
「異なるバンドを使っている海外の高速データ通信サービスでは問題が発生しませんが、日本では問題が起きるため、対策を施しています。当社では海外製のアンテナとの比較テストを行っており、より高精度を実現できるようにさまざまな工夫をしています」(レニー氏)

GNSS受信機の下には通常、グランドプレーンと呼ばれる、ノイズを低減する金属製の板を取り付けますが、これを必要としないのも小峰無線電機のGNSSアンテナの特徴です。グランドプレーンは取り付け方によって却って精度が悪くなることもあり、メーカー側で設定状況をコントロールしづらいため、グランドプレーンがない状態でも精度を保てるように設計しているといいます。

日本では数少ないL6対応GNSSアンテナの開発メーカー

レニー氏と和田氏

レニー氏(左)と和田氏(右)

小峰無線電機では、みちびきを含めたGNSS全般に大きな将来性を感じており、海外展開も視野に入れてアンテナ開発に取り組んでいます。
「GNSSはもともと測量などに使う専門的な製品でしたが、今ではほとんどのスマートフォンに内蔵されています。カーナビや農機具などさまざまな機器にも搭載されています。ドローンの市場も広がり、GNSSの需要は今後ますます大きくなるでしょう。みちびきは日本の上空に長く滞留し、高精度な測位も可能であり、RTK(Realtime Kinematic:固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方法)と違って携帯電話回線が使えない山間部でも利用可能で、これはものすごい強みとなります」(和田氏)

レニー氏は、今後の課題はユーザーに対して他社との性能の違いをどう伝えるかだと話します。
「アンテナの良し悪しは実際に使えばすぐに分かるのですが、数字に示すのはなかなか難しい。これからは、どうしたらお客様に満足いただけるデータを提供できるかを検討していきます。GNSSアンテナが受信するRF信号はアナログ信号であり、かなりクセがあるため、回路の線の幅やレイアウト、グラウンドの落とし方、ノイズ対策など、設計にはさまざまなノウハウが必要です。当社には長年培ったノウハウがあるので、それを活かして高品質なアンテナを開発していきたいですね」(レニー氏)

(取材/文:片岡義明・フリーランスライター)

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