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夏休みに行こう! 地図と測量の科学館 [前編]

2016年08月15日

夏休みはホンモノにじっくり触れる格好の機会です。今回は、茨城・つくば市にある国土地理院「地図と測量の科学館」の見どころを、衛星測位の話題と関連づけながら2回に分けて紹介します。前編では、科学館の中と外にある2つの「日本列島の巨大地図」を取り上げます。
※なお、「地図と測量の科学館」の場所や開館時間等は、下記の利用案内でご確認ください。

日本列島空中散歩マップ

「日本列島空中散歩マップ」

まず展示館の入り口を入ると、1階左手のフロアに敷き詰められた巨大な日本列島の地図が目に飛び込んできます。これが10万分の1の「日本列島空中散歩マップ」です。大股の1歩分に当たる1mが実際の100kmに相当する巨大な地図ですが、単に大きさだけはなく立体視(アナグリフ)に対応し、専用の赤青メガネで見ると日本列島が立体的に見えるのです。

「日本列島空中散歩マップ」を赤青メガネで見る

この地図のユニークなところは、国土地理院による陸上の標高データだけでなく海底地形(海上保安庁提供)にも対応している点です。立体視した際の高さ方向の縮尺は10倍となっているため、フォッサマグナや中央構造線のシャープな造形や、急激に落ち込む日本海溝、南海トラフの意外な近さなどに、背筋が少しゾクッとするほどです。

また、「日本列島空中散歩マップ」という名前のとおり、目線の高さの1mから赤青メガネで見ると、ちょうど地球の上空100kmを空中散歩していることになる地図でもあります。(立体視する時の注意点:北から南を見るときは赤青メガネの右目を青に、南から見るときは逆にする必要があります。)

日本列島球体模型

「日本列島球体模型」

建物の外へ出てみましょう。「地球ひろば」と名付けられた芝生を敷き詰めた空間の真ん中に、世界でここだけにしかない「日本列島球体模型」があります。これは、地球上につくば市を中心とする半径2,200kmほどの円を描き、その円を含む平面でスパッと切り落として地面に置いた「歩いて登れる日本地図」なのです。20万分の1の地勢図をタイルに焼き付け、高さ2m・直径22mの人工の丘に敷き詰めてつくられています。

地球儀

直径1mの地球儀(1,200万分の1サイズ)

現在、日本人宇宙飛行士の大西卓哉さんが滞在している国際宇宙ステーションは、軌道高度が約400km。この日本列島球体模型と同縮尺なら2mとなりますので、故・ジャイアント馬場さんか、あるいは肩車したお子さんの目の高さから見るのが、ちょうど国際宇宙ステーションの大西さんと同じ目線の高さになる訳です。ふつうに歩くだけでも宇宙からの視点で日本列島を見下ろすことができる巨大地図なのです。

沖縄から見た日本本土がどのくらい遠いのかを実感できますし、与那国島~稚内~南鳥島~沖ノ鳥島と歩いてひと巡りすれば、日本という国の意外な広がりの大きさを体感することもできます。ちなみに準天頂衛星「みちびき」の軌道高度約4万kmは、日本列島球体模型では約200m。この模型と同じ縮尺なら、東京タワーの展望台ほどの高さから見下ろすイメージになります。

「日本列島球体模型」

日本本土の大きさを実感できる「日本列島球体模型」

この2つの巨大地図の歩き方、楽しみ方

映画は大画面・大音量の映画館で見る方が楽しめます。ジャンルにも拠りますが、アクション映画や怪獣映画では特にそうです。ではそれは、未知の世界や謎の巨大生物だからでしょうか? そうではなく、いつも身近にある、よく見知ったものでも、サイズが変わることで新たな発見や感動が得られる場合も、もちろんあります。その代表例が「日本列島を描いた巨大地図」です。

「日本列島球体模型」(後方)と「地球球体」の模型(手前)

子どもの頃から見慣れていて、スマホや家の地図帳、あるいは学校のポスターなどでいつでも見ていた日本地図は、身近で当たり前で、「今さら多少大きいのを見ても、どうなるものでもない」と思われるかもしれません。しかしそれは間違いで、わざわざ出かけ、見る価値のある巨大な日本地図は存在します。この「地図と測量の科学館」にある2つの地図は、いずれもがここでしか見ることのできない巨大地図。一緒に見ている人たちと語り合いたくなるような、魅力に満ちた体感型の地図です。(後編に続く)

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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