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鹿島建設、工事の完成イメージを現場に「投影」する技術を発表

2019年06月24日

鹿島建設株式会社は、GNSSとAR技術を組み合わせ、建設中のダム堤体のコンピュータモデルを現場で撮影した実際の画像に、リアルタイムで精度良く重ね合わせて表現するシステムを、秋田県で施工中の成瀬ダム堤体打設工事で初適用したと発表しました。

高精度な測位技術が支える現場の「見える化」

開発の背景として同社は、「発注者、元請社員、作業員など工事に関わる関係者が、構造物の完成形を明確にイメージし共有することが、より良く安全に工事を進める上で効果的」としながら、「i-Constructionが推進するICT土工の導入により、工事の計画や管理におけるコンピュータの比重は急激に高まる一方で、コンピュータ内のデータから進捗を直感的に判断し共有することが難しくなる」という新たな課題も生まれていると指摘しています。

そこで、ニコン・トリンブル社の子会社でi-Construction関連のソリューションを提供するサイテックジャパン株式会社と共同で、コンピュータ内のモデルを現場で撮影した画像にいわば「投影」するように、その場でリアルタイムに重ね合わせて表示するシステムを開発、秋田県のダム工事現場で適用し、その有効性を確認しました。

現地の画像にコンピュータモデルを表現した画像イメージ(出典:鹿島建設株式会社)

現地の画像にコンピュータモデルを表現した画像イメージ(出典:鹿島建設株式会社)

「明確なイメージを関係者が共有することで、手戻りが少なくなるメリットも大きい。またダムのような大規模工事では事務所が遠くに設置されていることも多いため、皆が現場で確認できるということは、大きな時間の節約につながります」(同社広報)

システムの核にあるのはAR(拡張現実)やVR(仮想現実)と呼ばれる画像処理技術ですが、それを支えているのがGNSSによる高精度な測位技術です。通常、スマートフォン等に搭載されたGNSSモジュールで行う測位では、数メートル以上の誤差が避けられません。スマートフォンの方位や傾きの調整をいかに精度良く行ったとしても、そもそもの位置が大きくずれていれば、コンピュータモデルと現実を違和感なく重ね合わせることは困難です。このシステムでは、みちびき対応のGNSS受信機能を持つアンテナを外付けしたAR対応スマートフォンでRTK測位を行うことで、その問題をクリアしています。

ハンディ型モニターを用いた現場でのコンピュータモデル確認(出典:鹿島建設株式会社)

ハンディ型モニターを用いた現場でのコンピュータモデル確認(出典:鹿島建設株式会社)

ハンディ型モニターの仕様

寸法:GNSSアンテナ直径13cm、高さ26cm
重量:本体750g

※スマートフォン/タブレット端末としては、Google社のARプラットフォーム「ARCore」に対応した機種。アンテナ一体型GNSS受信機と端末はUSBケーブルで接続され、測位演算は端末側で行われる。みちびきの信号もGPS補完として利用。

※正式版に先立つ、Trimble Early Experience Program(トリンブル早期体験プログラム)のプレリリース版を使用。

「ICT土工による基礎掘削の切り出し位置と堤体構造物の位置の確認、右岸斜面に計画したベルトコンベア基礎の位置確認などに本ツールを用い、有効に機能することを確認しました」(同社プレスリリースより)

また、このシステムで「投影」するデータは、コンピュータモデルに限りません。正確な位置情報などと共に記録された写真も同様に扱うことができます。積雪前に撮影した写真を除雪作業の前に投影すれば、事前に構造物や埋設物の場所が把握できるので、工事再開に向けた作業の効率アップが見込めるなど、豪雪地帯ならではのアプリケーションも期待されて、埋設物や支障物の多い都市部の工事など、他の工種にも適用範囲を広げていく方針です。
さらに同社は、複数台の自動運転重機で協調作業を行う次世代建設生産システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)の開発を進めており、稼働中の一台一台の重機の動作モニタリングを行う「見える化ツール」として活用する構想もあるといいます。

参考情報

* ヘッダー画像(出典:成瀬ダム工事事務所ホームページ