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国土地理院で、「測地学サマースクール2019」開催

2019年09月17日

日本測地学会は8月22日と23日の2日間、国土地理院(つくば市)で大学生・大学院生を対象としたサマースクールを実施しました。1993年から続くこのサマースクールは、最先端の研究成果のレクチャーや測量実務の体験を通じ、測地学への興味を深めてもらおうという取り組みです。

測地学は紀元前以来の歴史を持ち、つねにその時代の最先端の技術を使って、地球そのものの形や動きを捉えようとしてきました。現在では、VLBI*やSLR**などと並びGNSSも、測地学を支える主要な技術体系の一つとなっています。

*VLBI(超長基線電波干渉法、Very Long Baseline Interferometry)
地球から数億光年以上離れたクェーサーと呼ばれる天体が発する電波雑音を、地球上の遠く離れた複数の局で受信し、電波の到着時刻の遅れを解析することで、局間の距離や地球の自転速度、地軸のぶれなどを求めることができる。

**SLR(衛星レーザ測距、Satellite Laser Ranging)
レーザ光の往復時間から地上局〜衛星間の距離を高精度に求める手法。多くの観測点でのデータを解析し、地球重心の位置などを精密に求めることができる。また、衛星軌道の決定にも用いられる。

測地学会会長の田部井隆雄・高知大教授はサマースクールの開会挨拶で、GNSSと測地学の関わりを以下のように述べています。
「GNSSはVLBIやSLRなどと並ぶ、測地学の重要なツールとなっています。VLBIやSLRは大掛かりな設備を必要とし、扱える研究機関も限られていることから、一般の研究者にとって必ずしも取り組みやすいものではありませんでした。しかし1980年代後半に小型かつ高精度のGPSが登場して以降、多くの研究者が自由なアイデアを駆使してGNSSを使った研究を進めることが可能になり、測地学に新たな方向性を生み出しました。そういう意味でもGNSSはたいへん重要なツールです」

また、みちびきと測地学の関わりについて聞いたところ、以下のようなコメントをいただきました。
「みちびきは、測位信号だけでなく、リアルタイムでセンチメーター級の測位が行える補強信号も送信するという、ユニークな測位衛星システムです。現在の測地学は既にミリメートルオーダーを追求しているため、みちびきを使った測位が測地学の精度向上に役立つ分野は限られています。しかしそこで培われた知見、すなわち地上設備の正確な位置の決定や、衛星の精密な軌道決定の手法は、みちびきの運用にも生かされており、その果実として一般に向けた高精度のリアルタイム測位が実現しています。
測地学会としてはこの学問分野の魅力を伝えることで若手の参加を促し、研究コミュニティを発展させていくことが、ひいては測位インフラの持続的な発展にもつながっていくものと考え、活動を続けています」(田部井会長)

国土地理院の施設見学

レクチャーに先立ち、国土地理院本院の施設見学が行われました。GEONETのコントロールルームや電子基準点などを見学。今年のサマースクールを企画した国土地理院の宗包浩志氏(測地部宇宙測地課長)らが解説しました。

講義には、国内の大学・大学院で地球物理や惑星科学などを専攻する学部生、修士・博士課程在籍の11名が参加。以下のようなテーマごとに、最新の研究トピックスが紹介されました。

「GGOS・測地基準座標系」大坪俊通氏(一橋大学)
「高さ基準系・重力」松尾功二氏(国土地理院)
「光格子時計・相対論測地」矢萩智裕氏(国土地理院)
「SLR、海底地殻変動観測」石川直史氏(海上保安庁海洋情報部)
「火山の地殻変動」安藤 忍氏(気象庁気象研究所)

3種類の測量を体験

23日には、国土地理院のVLBI観測局である石岡測地観測所の見学および、3種類の測量実習が行われました。

石岡のVLBIアンテナは、世界の中での日本の位置を決める際に基準となる施設であり、同じ敷地には電子基準点「石岡」(132009)(写真右側の円柱)も置かれています。日本の緯度・経度の基準となっている世界測地系は、VLBIやGNSSなどさまざまな宇宙測地技術による観測結果を組み合わせて構築されますが、組み合わせる際に、同一サイト内の異なる技術の観測点相互の位置関係(石岡の場合はVLBIアンテナと電子基準点「石岡」の位置関係)が必要となります。従って、それを正確に求める「コロケーション測量」は、たいへん重要な作業となります。サマースクールの参加者は、国土地理院職員のアドバイスを受けながら、その作業の一部を体験しました。

水準測量

水準測量:「標尺」と「デジタルレベル」を使い、2点間の高さの差(比高)を計測。

水平角観測

水平角観測: 角度と距離を同時に計測できるTS(トータルステーション)を使って、VLBIを取り囲む4基のコロケーションピラー(測量機器設置のための恒久施設)の位置関係を計測。

重力測量: 相対重力計を使って、高さによる重力値の違い「重力鉛直勾配」の計測を体験。

参加者からは「実務に関わる先輩たちの話が興味深かった」「現場に触れる貴重な機会で、楽しかった」などの感想が聞かれました。

来年度の測地学サマースクールは北海道大学で開催の予定です。

(取材/文:喜多充成・科学技術ライター)

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