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JAXAとNECが静止衛星のGPS航法に成功

2021年03月15日

宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本電気株式会社(NEC)及びNECスペーステクノロジー株式会社(NECスペース)は2月19日、静止衛星の位置や速度を求める「GPS航法」に成功したと発表しました。GPS衛星より高い軌道を周回する静止衛星では、日本で初めての実証例となります。
なお、GPSは地表での利用を前提としたシステムですが、衛星信号を受信することができれば、地球から遠く離れた宇宙空間でもGPS航法は可能です。

地球の反対側から届くGPS信号を捕捉

対象となった衛星は、昨年11月に打ち上げられた光データ中継衛星です。この衛星にはJAXAが開発中の光衛星間通信システム(LUCAS:Laser Utilizing Communication System)が搭載されています。LUCASは、低軌道(~1000km)の地球観測衛星と地球局と間を、レーザー光を用いて中継するシステムであり、通信速度と通信時間の両面においてより大容量のデータ伝送をもたらします。すでにLUCAS~地球局間での波長1.5μm(マイクロメートル)のレーザー光を用いた通信に成功しています。

中継局の役割を果たす光データ中継衛星は、通信相手である観測衛星や地球局の軌道や座標を把握するだけでなく、自身の軌道も正確に知っておく必要があります。しかし「地表からは空の一点にとどまっているように見える」性質をもつ静止衛星は、観測量の変化が小さいことから、正確な軌道決定には困難が伴っていました。

静止軌道におけるGPS信号の受信イメージ

地球の反対側から届くGPS信号を捕捉し測位演算を行う ©JAXA

代表的な衛星測位システムである米国のGPSの軌道高度は約2万kmです。軌道高度が数百km程度の低軌道衛星では、地表に向けて放送される測位信号を利用して、高精度な軌道決定、時刻基準の高精度化や自律的な軌道制御による運用効率化などが広く行われています。しかし一般に高度3000km以上の領域では、受信条件が整わず同じ方法はとれません。GPS衛星より高い軌道(高度約3万6千km)を周回する静止衛星も、もちろん同様です。

GPSアンテナ、LNA、信号処理装置

左からGPSアンテナ、LNA(Low Noise Amplifier=信号増幅器)、信号処理装置 ©JAXA

そこでJAXAは、NEC及びNECスペースと共同で静止衛星用のGPS受信機(=地球の縁をかすめ反対側から届く、非常に微弱なGPS信号を捕捉して測位演算を行う受信機)を開発し、今回の宇宙実証を成功させました。これにより、LUCASのミッションであるレーザー光によるデータ中継より確かなものとなった訳です。

光データ中継衛星搭載静止衛星用GPS受信機での航法状態と受信GPS衛星数

光データ中継衛星搭載静止衛星用GPS受信機での航法状態と受信GPS衛星数のグラフ。受信衛星数を増やすため、GPS衛星のメインローブ(直下の地表に向け放射される電波)だけでなく、サイドローブ(指向外に漏れる弱い電波)も利用。ただし大気の影響を受ける低高度を通過する信号は、処理を行わない ©JAXA

今春から受信機の販売を開始へ

開発製造を担当したNECスペースは、今春より受信機の国内外への販売を開始します。また、JAXAとNECは受信機の改良を進め、2023年度に打ち上げを予定している技術試験衛星9号機で、GPS航法を基盤とした自律的な軌道制御を実施するとしています。将来的には、みちびきから見て地球の反対側に位置する静止衛星などが、みちびきの測位信号を利用して高度な自律運用を行うことも期待されます。

参照サイト

※ヘッダ画像:光衛星間通信システム「LUCAS」のイメージ ©JAXA