コンテンツです

東京海洋大で第22回GPS/GNSSシンポジウムを開催 [後編]

2017年11月29日

前編に引き続き、11月7~9日に行われた第22回GPS/GNSSシンポジウム2017の模様を紹介します。ここでは、初日(11月7日)午後のパネルディスカッションと、2日目(8日)に行われた講演、そして展示の様子を見ていきます。

初日午後のパネルディスカッション

初日午後のパネルディスカッションでは、測位航法学会の峰正弥氏、国土地理院の藤原智氏、ダイナミックマップ基盤株式会社・三徳昭弘氏、株式会社ゼンリンの藤沢秀幸氏、東京大学准教授の海津裕氏、東日本高速道路株式会社の中谷了氏、一般財団法人衛星測位利用推進センターの松岡繁氏の7氏が、各々の専門分野から見解を述べ合いました。

(左から)峰氏、藤原氏、三徳氏、藤沢氏、海津氏、中谷氏、松岡氏

(左から)峰氏、藤原氏、三徳氏、藤沢氏、海津氏、中谷氏、松岡氏

測位航法学会の峰氏は、「測位インフラと地図? どのような相合傘が最適か?」のテーマで講演し、問題提起しました。国土地理院の藤原氏は、「地図とはそもそも緯度・経度に、高さと時間を加えた四次元の情報を扱う存在である」と解説しました。
また、ダイナミックマップ基盤の三徳氏は、自社について「自動運転に不可欠の高精度地図のうち、協調領域を構築・提供する会社」だと紹介しました。ゼンリンの藤沢氏は、東京電力と提携し、送電線網の脇にドローンが通る「空のトンネル」を構想中であると報告しました。
東京大学の海津氏は、半世紀前から構想されてきたロボット農機が実現しつつあり、将来的にはロボット農機を前提としたロボット圃場も考えられる、と現状を解説しました。東日本高速道路の中谷氏は、高度な技能が必要な除雪作業を、センチメータ級測位補強サービスを使って支援するシステムの実証を今シーズンから実施すると紹介しました。
さらに衛星測位利用推進センターの松岡氏は、みちびき4機が加わったマルチGNSS時代の測位信号受信機について、必要な仕様や性能を示しました。そして最後に、会場の来場者とも活発な意見交換を行い、終了しました。

最近の実験結果にみるGNSS受信機の動向

── 東京海洋大学・久保信明氏

東京海洋大学・久保信明氏

続いて2日目(11月8日午後)に行われたセッション「GNSS受信機技術」からみちびきに関する講演を紹介します。まず、東京海洋大学准教授の久保信明氏は、最近の実験結果をもとにGNSS受信機の動向を解説しました。同大学の周囲で計測した実験結果を示した上で、最近のローコストGNSS受信機の精度が向上していると説明し、その大きな理由としてマルチGNSSへの対応を挙げました。さらに、みちびき初号機と2号機が高い仰角にある時にRTK-GNSS測位(Real Time Kinematic、固定点の補正データを移動局に送信してリアルタイムで位置を測定する方法)で計測したところ、みちびきの信号を使用しない場合に比べて20%ほど性能が向上したとして、「フィルターのない素の状況におけるRTKの性能では、みちびきによる絶大な効果が見られる」と語りました。

センチメータ級測位補強サービス対応の受信機

── 三菱電機・曽根久雄氏

三菱電機・曽根久雄氏

三菱電機株式会社の曽根久雄氏は、最初にみちびきの役割や機能の概要を説明した上で、電離層誤差や対流圏遅延などの誤差要因を推定してセンチメータ級の測位補強情報をリアルタイムに生成・配信する「センチメータ級測位補強サービス」の動作原理を解説しました。同社が提供するセンチメータ級測位補強サービス対応受信機AQLOCの新型も紹介し、10月に北海道・上富良野で農業用トラクター自動運転の実証実験を実施した際は、悪天候にも関わらず、センチメータ級測位補強サービスの計測においてRTKと遜色のない精度が実現できたと語りました。開発中の新型AQLOCは、従来よりサイズが小さく、価格も100万円以下を目指しているとしました。

展示会に参考出展された同社の新型AQLOC

展示会に参考出展された同社の新型AQLOC

みちびき対応高精度多周波マルチGNSS受信機

── マゼランシステムズジャパン・小西覚氏

マゼランシステムズジャパン・小西覚氏

マゼランシステムズジャパン株式会社の小西覚氏は、同社が開発したマルチGNSS対応の次世代多周波受信機を紹介しました。みちびきのL1、L2、L5、L6信号に対応しており、L6信号を使った測位結果について、同社オフィス周辺で行った計測や、北海道大学で行ったトラクター自動運転の実証実験では、センチメータ級の測位精度が得られたと報告。今後の実用化は、現在提供中の評価用ボードより小型・省電力化した低価格のボードを来年度に提供開始する予定で、さらにその1年後に全体をワンチップ化し、最終的にはワンチップ化した製品を1万円以下で提供したいと語りました。

展示会に出展された同社のGNSS受信機

併催の機器展示会で活発な交流

併催されたGPS/GNSS機器展示会では、最新のGNSS受信機などが展示されました。会場ではポスター・セッションや、関連機器メーカーのブース出展が行われ、活発な交流が進められました。

(前編はこちら)

関連記事